日本喪失を防げるか? ギャンブルの還元率から巨大カルデラ噴火を考える
最近「カジノ」がよく話題になる。一方でこの国には、競馬、競輪、スポーツくじ、宝くじなどの公営ギャンブル、それにパチンコなどもある。ギャンブルの魅力は何と言っても高額配当金への期待だ。ただし「胴元」は必ず儲けるのだから、私たち一般市民にとっては、できるだけ損失の少ないものを選んで夢を追いかけるのも1つの楽しみ方だろう。それには「期待値」を比べるのが手っ取り早い。期待値とは、配当金にそれが当たる確率を乗じたものだ。掛け金を1000円とした場合の期待値は、宝くじやスポーツくじが約500円、競輪・競馬・競艇はおよそ800円、パチンコが900円弱、カジノは950円程度だ。今回は、こんな視点で自然災害について考えて見よう。
災害や事故の「危険値」
「災害大国」日本は、先進7カ国中トップの人口密度であるので事故も多い。限りある予算をいろんな災害や事故の対策に配分する際にも、ギャンブルの選択と同様に期待値が重要な指標となる。つまり、ある災害や事故で1年当たりにどれ位の死亡者が出るかを予想して、それが多いものに対策を講じるのだ。もっともこの場合は「危険値」と呼んだ方が良い。
これまでのデータによると、台風や豪雨災害の危険値は80人、交通事故は約4000人となる。毎年これだけの死亡者が出るのだから、その軽減のために相当額の予算が投入されることも納得できる。
低頻度巨大災害の恐ろしさ
一方で私たちはあの3・11で、巨大地震は稀な(低頻度の)現象ではあるが、甚大な被害をもたらす巨大災害であることを思い知らされた。南海トラフ地震や首都直下地震は、今後30年の発生確率が70%を超える。そして、それぞれ33万人、2万3000人もの死亡者が予想されている。危険値に直すと一年当たり、1万3000人と900人となる。豪雨災害を遥かに凌ぐ危険値を示す「試練」が迫っていることを、しっかりと再認識いただきたい。
巨大カルデラ噴火:その驚愕の危険値
次は火山災害を考えよう(詳しくは「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」に)。
何と言っても関心が高いのは富士山だろう。江戸時代の宝永噴火のような大噴火に対する危険値は約14人である。しかし富士山でもっと怖いのは、地震で山の一部が崩れる「山体崩壊」だ。実際この現象は、おおよそ5000年に1度の間隔で起こってきた。大量の土砂が土石流として流出するので、その危険値は何と70人となる。
しかし私たちがもっと知っておくべき噴火がある。「巨大カルデラ噴火」だ(「最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火」)。直近では、7300年前に起きた噴火が南九州縄文人を絶滅へと追いやった。この超ド級の噴火は確かに稀な現象である。過去12万年でたった10回しか起きていない。確率にすると今後100年で1%だ。しかしその被害は凄まじい。最悪の場合は、九州・四国・本州全域に暮らす1億2000万人の命が奪われる。
巨大カルデラ噴火の危険値は年間3600人にも及ぶ。
火山列島に暮らす覚悟
こんな巨大噴火が起きたらもう諦めるしかない。そういう考えもあるだろう。でも本当にそれでいいのか? 危険値ランキングトップの南海トラフ巨大地震については、まだまだ不十分ではあるものの、減災対策が講じられつつある。しかし、自然災害の中で2番目、交通事故に匹敵する危険値を持つ巨大カルデラ噴火については、全くの手付かずである。
もしこれから何もしなければ、私たちや子々孫々は必ずこの超巨大災害に見舞われ、最悪の場合日本という国が消滅する。この「試練」に対して、少しでも被害を軽減すべく知恵をしぼることも、私たちの責任ではなかろうか。と言うのも、火山は試練ばかりを「火山大国の民」に与えてきたのではない。温泉や食べ物など数々の火山からの恩恵を、私たちはちゃっかり甘受している(詳しくは、「和食はなぜ美味しい:日本列島の贈り物」)。