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#MeTooは何も変えなかったと考えるフランス人は53%

プラド夏樹パリ在住ライター
8月に共演女優からレイプで訴えられたジェラール・ドパルデュー氏(写真:Shutterstock/アフロ)

公共の場での自分の行動を変えたと答えている人は8%のみ

ハリウッド・セクハラ事件からちょうど1年経った現在、フランスでは、俳優ジェラール・ドパルデューが共演した女優から、映画監督リュック・ベッソンが数人の女優と協力者から、イスラム学者タリック・ラマダンが信徒2人からレイプを理由に訴えられている。政治家では国民経済大臣のジェラール・ダルマナン氏が同じくレイプで訴えられていたが無効になっている。

ところで、フツーの人々はどうなのだろう?彼らの意識はこの1年で変化したのだろうか?

#MeToo運動が人々の意識をまったく変えなかったというのはもちろん言い過ぎだ。しかし、驚くべきことに、フランスに関しては、どうやらあながちまったくの嘘というわけでもないようだ。

10月1日、オピニオン統計所harris interactive http://harris-interactive.fr/opinion_polls/la-lutte-contre-les-violences-faites-aux-femmes-un-an-apres-metoo/は18歳以上のフランス人の男女1862人を対象にした、#MeToo運動の影響についてのアンケートの結果を発表した。

それによると、約半数の人々が#MeToo運動になんらかの影響を受けたと答えており、45%の人々は以前とは何かが変わったと答えている。

ところで、これをきっかけにセクハラについて周りの人々と話し合ったという人は全体で39%。しかし、セクハラに対して考え方を改めたと答えるのは僅か16%、公共の場での自分の行動を変えたと答えている人は8%のみ。

上記のように答える人々の割合に男女差はほとんどないが、年代に差がある。

いちばん#MeToo運動に影響を受けたのは35歳以下の男性たち。彼らの42%が周囲の人々とセクハラについて話し合い、25%はこれまでの考え方を改め、12%は行動を変えたということだ。

しかし決定的に社会が変化したと考える人は少なく、僅か19%に過ぎない。53%が#MeTooは何も変えなかった、ポジティブでもネガティブでもないと感じており、32%はどちらかというとマシになったと、12%(男性16%、女性7%)は、状況はかえって悪くなったと答えている。

フランス人は懲りない人々なのだろうか?

パリ在住ライター

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。単著に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)、共著に「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)、「夫婦別姓 家族と多様性の各国事情」(ちくま新書)など。仕事依頼はnatsuki.prado@gmail.comへお願いします。

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