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今夜放送!『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のゴジラは、どれほど強いのか?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。今日の研究レポートは……。

映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が、今日5月29日21時からフジテレビ系「土曜プレミアム」にて放送される。地上波初放送だ。

2019年に公開されたこの映画は、ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラが登場するという意味で、1964年の映画『三大怪獣 地球最大の決戦』のリメイクともいえるけど、人間たちがいつも怪獣たちの戦いの真っ只中にいる……という点がだいぶ違います。

それだけに臨場感があり、そのうえ「怪獣は何のために存在するか?」という問いかけがあって、ネタバレになるから詳細は書けないけど、結果として怪獣を全肯定! これが実にスバラシイ。こんなに怪獣の存在をプラスにとらえた映画がかつてあったでしょーか。

などと筆者はコーフン状態。1人でも多くの人に今夜の放送をぜひ見てもらいたいので、ストーリーには深入りせず、おなじみの怪獣たちについて、空想科学的に紹介しよう。

◆ラドンは海外名「ロダン」だった

最初に登場する怪獣はモスラ。この美しい怪獣は、過去の映画では、東京タワーや国会議事堂などの東京名所でサナギになり、やがて羽化していた。ところが、今回彼女が選んだ場所は、なんと滝のなか!

筆者がモスラなら、そこにだけは繭を作りたくないです。いつ流されるかわからないし、温度が低くて変態も進まないし。でも、モスラはすごい水流のなかで成虫になり、芹沢博士も「美しい」と感動していたから、そんな細かいことを気にしてはいかんのだろうなあ。

また、ラドンは劇中で誰もが「ロダン」と呼んでいて、筆者は「なぜ考える人みたいな名前!?」とビックリしたんだけど、それは57年の映画『空の大怪獣ラドン』がアメリカで公開されたときから『RODAN』というタイトルだったため、らしい。つまり海外では、昔もいまもラドンはロダンなのだ。そうだったのか~。

ラドンは、火山で永く冬眠していたのだが、人間が作り出した「オルカ」という装置によって目覚める。

これ、科学的には、火山で冬眠というのがすごい。冬眠は、動物が体温・心拍数・呼吸数を大きく下げて、エネルギーの消費を抑え、食べ物の少ない冬を眠って乗り切ることだ。たとえばシマリスの場合、37度だった体温が、冬眠中は8度ぐらいまで下がる。

ところが、火山のマグマは1000度前後。たぶんラドンの普段の体温よりはるかに高温で(だよね?)、冬眠にはいちばん向いていない場所だと思う。そんなところで安眠できるとは、図太いヤツだ。キングギドラの強さに平伏して、露骨に態度を変えたりするし、今回のラドンは味わい深い怪獣である。

◆キングギドラ対ゴジラ

そして注目のキングギドラ。全身が金色に輝く宇宙大怪獣だ。

キングギドラといえば、三つの首が印象的で、それぞれの口からてんでバラバラに放つ光線が魅力的だったのだが、この映画でもそれは健在。ただし今回、三つの首はそれぞれ性格が違うようで、真ん中の首がリーダーシップを発揮して、左右の首に指示を出したり、たしなめたりしていた。キングギドラも進化しているのである。

今回のキングギドラはすごく凶暴だし、ビックリするほどデカイ。ボストンで暴れているシーンで測ると、真上に伸ばした真ん中の首の高さは、周囲のビルとの比較から、180mほどと思われる。翼も目いっぱい広げているが、その高さは300m、幅は450mほどか。その場合、初代キングギドラの身長と体重(100m、3万t)を元に計算すると、推定体重はなんと17万5千t! この巨体で、凶暴で、三つの首も統制が取れているとしたら、メチャクチャ強いだろう。

これに対して、ゴジラは身長119.8m、体重9万9364tと発表されている。ゴジラとしてはかつてない巨体だが、キングギドラに比べると、身長は3分の2、体重は約半分にすぎない。

現実的に考えると、これほど体格の違う相手に勝つのは難しいが、もちろんゴジラは一歩も引かない。キングギドラも闘志満々で、両者は延々と戦い続ける。その結末は映画で確認してほしいが、お互いに口から放つ光線で相手を転倒させていたから、ここから両者の強さを考えるとどうなるか?

ゴジラの光線は、体の中にため込んだ放射能を青い熱線として吐き出すものらしい。「熱線」とは科学的には、光(電磁波)の一種だから、光で巨大なキングギドラを転倒させたとなると、エネルギーが超絶的に莫大だったことになる。放った時間が1秒なら、350兆kcal!

キングギドラも口から吐く光線でゴジラを倒した。倒れ方に差はなかったので、同じように計算すると、エネルギーは160兆kcal。体格の違いから、光線だけ比較すると、ゴジラのほうが倍くらい強いことになる! おっしゃ~っ。

などというのは、あくまでも空想科学的な机上の計算です。実際の戦いは、ぜひとも今夜の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』をご覧ください。

そして、ここからつながる新作『ゴジラvsコング』が、日本でも一日も早く劇場公開されることを願いたい。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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