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「人災」としてのリビア大洪水 日本人が知っておくべき事を在リビア日本大使館元書記官 小林周さんが解説

堀潤ジャーナリスト
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」NEW GLOBALより

アフリカ・リビアでの大洪水から1週間以上が経過した。WHO・世界保健機関によると、死者は少なくとも3958人、行方不明者は9000人以上とされる。

甚大な被害が徐々に明らかになる中、国連WFPや世界各国の政府やNGOが人道支援を開始、広く資金面でのサポートなどを世界に呼びかけている。

今回の災害はなぜこれほどまでに被害を広げたのか、今回は在リビア日本大使館の元書記官で、中東・北アフリカの現代政治や国際関係論などが専門の日本エネルギー経済研究所主任研究員、小林周(あまね)さんに聞いた。国際情勢を特集するTOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalの資料も引用しながらお伝えする。

◆洪水被害の拡大は「人災」だと指摘する理由

8bitNewsより
8bitNewsより

堀)

小林さんはまさにいつまでリビアの日本大使館にいらっしゃったのでしょうか?

小林)

2021年から今年2023年の4月まで勤務しておりました。今回の洪水の一報を聞いたときには非常にショックでした。被害の規模が桁が違うということにも驚きました。リビア国内にも知人や友人が沢山おりますから、真っ先に彼らの顔が胸をよぎりました。今回被災した東部にも知り合いがいるのでまず、彼らが大丈夫なのか、無事なのかというところは非常に心配だったというのが1番最初の感想です。

堀)

19日に赤十字国際委員会が公開した現地の最新の空からの映像を見ると、被災地デルナは海岸沿いの道が大きく崩れ、内陸も建物が大きく損壊、依然として水に浸かっている場所もあり排水作業が続けられている様子が見えます。復旧復興には多くの時間と人力が必要、資材も必要だというのが伝わってきます。数万人規模の被害が伝えられてきましたが、国連の世界保健機関WHOが数字を修正して死者3958人、行方不明者は9000人以上と発表しました。しかし、まだ被害の全容はわかっていません。復旧、復興にはかなりの時間を要することになりそうですね。

8bitNewsで紹介した、赤十字国際委員会によるデルナ空撮
8bitNewsで紹介した、赤十字国際委員会によるデルナ空撮

小林)

被災地となったリビア東部で特に被害が大きかったデルナについては、地域全体の4分の1とも3分の2とも言われるエリアが被害を受けました。深刻なのはその被害を受けた場所が、国連の調査によると今後かなり長期にわたって人が住むことが非常に困難であるという評価を受けている事です。「洪水による土砂災害などでインフラがほぼ完全に崩壊してしまっている」ということですので相当長期にわたる困難が待ち受けているという点が非常に懸念される点です。

当初、赤新月社は死者は1万1000人超と伝えていた
当初、赤新月社は死者は1万1000人超と伝えていた

堀)

小林さんは、今回の洪水被害を「人災」だとして「これまでの内戦が被害拡大を招いた」と、指摘されていますが、その理由を教えてください。

小林)

「人災」はかなり強い言葉ではありますが、これだけの被害が出た背景、要因は単なる異常気象、単なる暴風雨ではなく、リビアという国がこれまで経験してきた政治対立や内戦、紛争があるという点をきちんと理解する必要があると思います。

堀)

リビアといえば、中東・北アフリカでの民主化運動「アラブの春」の流れの中で、内戦が勃発。強権で長年国を統治していたカダフィ政権が崩壊し、その後も政情が不安定でしたよね。「中東の狂犬」とも言われた強いパワーが無くなった後の、リビアやアフリカ全体の秩序の問題とも関わってきます。今回の被害拡大とどう関わってくるのか教えて下さい。

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより

小林)

カダフィ政権は非常に「反欧米的」な主張であったり政治的な行動をしていました。具体的に言えば、核兵器を含めた大量破壊兵器の開発計画や世界各地の反体制組織やテロ組織の支援を行っていました。実際には国家テロと言いますか、リビアの情報機関による様々な破壊工作やテロ活動もありました。2011年の 「アラブの春」ではカダフィ政権打倒に国際社会が関与、政権崩壊に導いたとされています。当時はみんな喜んだわけです。しかし、その後のリビアは混乱、今回の洪水被害の拡大もしっかり繋がってるということを皆さんにお話ししたいと思います。

まず、資料の1枚目はリビアの地図になります。

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

リビアというのは非常に国土が広く、日本の5倍から6倍ほどあります。一方で、人口は非常に少なく大体600万人ほど、日本の1/20くらいの数です。そして、その多くの国民が地中海沿岸に住んでいます。

首都は西側にあるトリポリと言われる町。東側にはベンガジという町があり、さらにその東にデルナがあります。特にリビアの東側は少し地中海側、北に張り出しているということもあって地中海性気候なんですね。リビアは国土の大半が乾燥地帯もしくは砂漠ですけれども、リビアの東側、特に北東部というのは緑も豊かであることが特徴です。今回特に被害が大きかったデルナはまさにこの北東部に位置しています。

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

山の上の方から取った写真で奥の方には、地中海までこうした遺跡が続いているという素晴らしいところです。観光の開発などは内戦の影響もありされておらず、ままさにこれからというところでした。これはベンガジからエジプト国境の方まで1、2時間ぐらい行った場所です。ギリシャ文明の一部であるような場所ですし、そのほかにもローマ帝国の一部であったような場所もあります。非常に歴史ある美しい場所です。

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

◆ISとワグネルがアフリカ進出の足掛かりにしたリビア

ただ一方で、内戦や紛争の爪跡も非常に深く残っています。これはベンガジ中心地の一部です。内戦による戦闘が非常に激しく、今となってはもう誰も住んでいないゴーストタウンのような場所です。特にリビア東部というのは色々な戦闘を経験しています。いわゆる軍事勢力同士の戦闘もありましたし、特にそのベンガジやデルナなどはいわゆる「イスラム過激派」によって支配をされたんですね、その結果、軍事勢力とイスラム過激派の戦闘が街中で起きました。

今回の洪水でも特に被害の大きかったデルナには、2014年に「IS(イスラム国)」が進出をしてきます。

堀)

ISといえばシリア北部からイラク中部にまたがる支配地域という印象でしたが、リビアでも活動が広がっていったんですね。

小林)

あの当時、ISのリーダーたちは政情が安定しないリビアを北アフリカに進出する足がかりと捉えたんですね。シリアやイラクで活動しているISの幹部自らがリビアに 乗り込んできて拠点を作りました。その場所がデルナだったんです。デルナはISによって支配され、最終的に戦闘が終わって開放されたのが2019年。まだ、3、4年足らずの状況でした。だからこそ、街のインフラもボロボロでした。今回のような災害対策、防災のためのインフラというのもまほとんど整備されていなかったというのが現状です。

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

この右上の少しボーダーになっているところが今回の洪水による被害を受けた場所デルナです。

濃い青で塗られているエリアが今の暫定政府がコントロールしている地域と言われます。暫定政府とは国民統一政府(GNU)と言われている政府で、国連に承認されいる政府ですが見ていただければお分かりの通り、リビア国内でコントロールできているエリアは極めて少ないですね。じゃあその他の薄いブルーの部分はどこが支配しているかというと、まずはリビア国民軍という軍事組織になります。INAと言われますけれども彼らと連携しているのが東部の政府ということです。さらに、リビアの南部の方は少数民族などがより強い影響力を持っている地域という風に言われます。

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」News Globalより
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」News Globalより

ですから、この図を見るとわかるように、今回の問題の1つは、洪水の被害を受けた地域、被災地域を首都トリポリの政府がほぼ全くコントロールできてないという点にもなります。

今の国民統一政府という暫定政府は2021年の3月に設立されました。その最大の目的というのは2021年末までに大統領議会選挙をやる、そのための政治プロセスを進めてくださいということが国連安保理決議によって明記されたミッションでした。

在リビア日本大使館職員時代の小林さん 8bitNewsより
在リビア日本大使館職員時代の小林さん 8bitNewsより

小林)

私自身がリビアに着任したのが2021年の4月でしたので、あの当時は私も選挙が行われるものだと、ある種の期待を胸に働き始めたんですが結局、途中で政治対立が深まり、そして暫定政府であったはずの今のGNU政府が既得権益を維持したいということで選挙が行われず、2022年に今の政府と対立関係にあった議会が新しい政府 を任命したんですね。その結果1つの国に2人の首相がいて、2つの政府があるという状況になってしまいました。リビアの西側そして東側は少なくとも政治のレベルでは分断状況にあるのです。

堀)

国連の機関などが現地に支援を入れる時は、現地の承認された政府と調整を行いますよね。今回は被災の中心がそうではないエリアだということは、支援を入れるのもなかなか大変な調整が必要になってくるということですね。

小林)

おっしゃる通りですね。そもそもトリポリ側の政府が被害状況をどこまで把握しているのかというのもかなり不透明であると。ただ、今回被害が非常に大きいのでトリポリの政府が各国や国連の支援を妨害しているわけではないです。寧ろ、お願いしますという形で、支援には協力的だと言われています。

WFP HPより 首都トリポリ近郊にある国連WFPの食料配給拠点(2021年撮影)。Photo: WFP/Zakaria Thlaij
WFP HPより 首都トリポリ近郊にある国連WFPの食料配給拠点(2021年撮影)。Photo: WFP/Zakaria Thlaij

実は日本の支援もちょうど先日、国連WFP経由でJICAがコーディネートする形でリビア東部に直接支援物資 送ったということです。元身内でありますけれども在リビア日本大使館が非常に積極的にえ精力的に動いてトリポリの政府ともコミュニケーションを取りつつ、リビア東部ともコーディネーションして迅速に支援は届けられたと思います。

堀)

一方で、リビアは各国の様々な思惑が入り込みやすい環境ですよね。

小林)

リビアは実は大産油国でして、世界で見れば第9位から10位、アフリカでは第1位の石油埋蔵量を抱えた国です。これまでの内戦であったり混乱の中で石油の「生産量」というのはそこまで上がってはいないんですがそれでも「埋蔵量」は非常に大きいということです。

◆資源を巡る各国のパワーゲームがリビアで

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

小林)

この地図見ていただければお分かりの通りですが、石油の大部分は実はリビア東部に眠っています。その石油の資源の大部分は政府の管理下になく、東部政府、そしてINAという軍事組織の支配下にあることになりますので、当然ながらこういった問題も政治対立に関わってきます。国内の石油資源を巡った対立というのはこれまで何回も繰り返されてきたことに加え、諸外国がリビアに軍事介入を行うわけです。リビアの内戦や紛争というのはこれまで常に大国のパワーゲームの舞台になってきた、もしくは代理戦争の部隊になってきました。

トリポリの方の政府を支援しているのはトルコそしてカタールです。トルコは地中海の南側に軍事的な拠点を置きたいと、例えば天然ガス開発を巡ってギリシャの反対側にあるリビアに拠点を置くことが、パワープロジェクション能力として、非常に戦略的に重要だということです。リビア西部にはもうトルコは既に基地を置いていて国際的にも話題になりました。例えばトルコのドローンなどもリビア西部に置かれている空軍の拠点があるわけです。さらに軍事的な港、海軍の拠点も狙っているのではないかと言われます。

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより

それに対抗してINAを支援しているのがまずはエジプトです。エジプトはリビア東部と国境を接していますから、混乱の中でリビアからテロ組織や犯罪者が入ってくることをどうしても防ぎたいと。つまり国家の安全保障上の問題としてリビア東部を安定させたい、そのために軍事的な力を持っているINAを支援しています。エジプト とトルコも非常に深く対立していましたので、そういったパワーゲームがあるのです。

さらにはUAEやサウジアラビア、そしてロシアもINAを支援してきました。ロシアの民間軍事会社グループ「ワグネル」が最初にアフリカ大陸に進出した国というのが実はリビアです。

堀)

マリやチャドなどサヘル地域の国々の名前がよく上がりますけど最初はリビアだったのですね。

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより 小林さん作成資料から
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより 小林さん作成資料から

小林)

ワグネルは2017年頃には既に進出をしていてですね、その内戦の中でINAを支援することによって拠点を構築してい木、そのリビア国内の拠点をアフリカ諸国に展開する足掛かりにしていくというのが彼らの狙いだということですね。

堀)

ちょっと話が逸れるかもしれないですが、創設者のプリゴジン氏がまるで暗殺されたかのように死亡して、今後、アフリカ各地域に展開していたワグネルの戦闘員たちがその地域、地域ごとの武装勢力に合流、武器んどもさらに拡散していくのか。そうなると、アフリカの混乱がさらに拡大するという懸念もあり、非常に心配しています。小林さんはどうご覧になっていますか?

小林)

非常に難しいポイントで、これからどうなるか分からないですけれども、1つ言えるのはプーチン政権にとって、ワグネルそしてプリゴジン氏がアフリカ大陸の中に築いた拠点、政治的、軍事的な影響力というのは非常に重要なアセットだと思ってると思います。裏を返すとプリゴジン氏は排除したけれども、だからと言ってアフリカにおけるワグネルの活動やワグネルが築き上げたネットワークをそのまま葬るつもりはなく、どうにかして看板を書き換えながら維持すると思います。

今回リビアがこうやって被災し、かつ政治的に混乱しているというのは注意深く見ていると思いますし、影響力拡大させる重要な機会だと思ってると考えています。

ロシアはかなり早い段階で、リビア東部に支援を行いました。軍事用の巨大な輸送器を何機か飛ばして支援物資を送っていますからそういった意味で、被災地におけるある種の人心を掌握して、今後の影響力拡大の1つのツールとするというところが透けて見えます。

8bitNewsより
8bitNewsより

◆復旧、復興のために国際社会がすべきこと

堀)

今後、この地域の復興を見ていく時にはそうした国家間のパワーバランスを見ていく必要があると考えるとすごく政治的で、そこに暮らしている市民たちのことを思うとやりきれない気持ちにもそうなるんですよね。大きな力によって翻弄されるばかりというか。実際には市民の受け止めはどのようなものなのでしょうか?

小林)

私も仕事上、もしくは仕事を超えてリビアの人々と普通に話をする機会というのはこれまでもありました。一般的な市民は、実際、政治対立にはうんざりしてるわけです。トリポリに住んでいる普通の人が、東部の人間と口を聞かないとかそんなことは全くなくて、そもそも家族がいるとか、友達がいるとか、大学の同級生がいるというのは普通にある。リビアの東側の人もそうです。だけどやっぱり政治対立が それを邪魔してるわけですね。結局、その利益や利権を巡る争いというものがずっと続いてきた。特に政治エリートは自らの利権を手放そうとしないという中で、さらに色々な外国が乗っかって、パワーゲームを繰り広げているというのがリビアです。人道面では一国も早く、その救助や救援支援が進むべきなんですが、時間が経てば経つほど政治対立の道具として今回の災害がまた利用されてしまうということを懸念しています。

堀)

せめて、私たち市民同士は連帯して、繋がり、支え合えるよう現場のことをもっと知るべきだと強く感じます。

小林)

今度は、少し俯瞰して考えてみたいわけですけれども、「フラジャイルステイツインデクス」という国際的なデータがあります。日本語で言えば「脆弱国家」もしくは「崩壊国家」と呼ばれるような国で、要するに内戦や紛争、その他経済的な危機などによって国家の機能が弱っている、もしくは「ほぼ崩壊状態」にあるという国のデータです。

8bitNewsより小林周さん作成の資料
8bitNewsより小林周さん作成の資料

アフリカ大陸は赤い色が広がっています。スコアで言うと高い、要するに脆弱だと言われる国が非常に多いわけです。中東で言えば、アフガニスタンやイラク、シリア、あとはイエメンも入っています。リビアも赤く塗られているわけです。アフリカでは50数カ国のうち、20カ国がスコア90以上、つまり「非常に脆弱」であり、崩壊の危機にあると示されています。今回のリビアの洪水を受け、国が政治的に混乱していけば、その問題というのは必ず国境を超えて広がってしまうという懸念があります。

堀)

アフリカではそもそも100以上の武装勢力が活動していると言われていますが、こうした混乱が次の武装勢力の活動をさらに刺激し、「武器を売りにくる人」が集まり、さらに利権を得にくる大きな国が混乱に加担する連鎖を招きますよね。アフリカが壊れることで、世界中のバランスが大きく変わっていくことになります。

小林)

そうですねで特にリビアは先ほど申し上げたように産油国ですので、その石油の輸出によるオイルマネーがあるわけです。残念ながらそのオイルマネーがその現地のインフラ開発だったり復興に使われてこなかったという現状であるわけです。

不幸中の幸いというか、今回の洪水、防風雨によって石油インフラ自体は直接的なダメージをあまり受けませんでした。ただ、あの時、暴風雨が来るということでリビア国内の特に東部の石油施設は操業を止めたんですね。その結果、世界的にも石油価格が上昇しました。2022年の10月、11月以来の高値になったということですので、エネルギー面で見てもリビアの混乱や今回の被害というのは実はかなり大きなインパクトを世界に与えています。当然それが跳ね返ってきて我々の生活、つまりガソリン代含めて、日本国内の暮らしや経済にかなり直接的な影響を与えてるという点も理解しておく必要があると思います。

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより 9月16日時点で 
TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」New Globalより 9月16日時点で 

堀)

最後に、国際社会からの支援、日本国の支援のあり方について聞かせて下さい。

小林)

今後、国際社会が支援をしていく時に中長期的な視点を持つ必要があります。緊急援助だけではどうしても賄いきれないフェーズが出てくることが予想されます。インフラの整備や街の復興には専門的な技術が必要です。日本は被災からの復興の経験が蓄積された国です。災害復興に必要な技術も多くありますから、そういったものを活かしていくことが必要です。

一方で、東西の政治的な対立であったり、リビアの国内の勢力だけでは解決が難しい問題があります。日本を含め、国際社会が働きかける、場合によっては圧力をかけていくということによって政治的な安定化を目指していく必要もあると思います。

8bitNewsより
8bitNewsより

日本国は今年はG7の議長国であり、今年と来年は国連安保理の非常任理事国です から、そういった意味でもリビアに関与をしていく。災害の復興支援もしくは政治の安定化の支援というものをしていく必要がある。で、そのためにまずはリビアで何が起きたのか、どういった政治的、社会的な状況が今回の被害を招いたのかということを多くの人たちに理解していただくことが大事になってくるのかなと思います。

堀)

そうですね。本来、日本は緊急支援だけではなく「レジリエンス(強靭性)」と言われるようなインフラ整備や農業技術支援など、その地域の人たちが自らの力で持続可能な発展を行うための支援が得意というか、強みなわけですよね。それはどんな地域の、どんな勢力にとっても必要なものじゃないですか?

小林)

はい。そこはすごく大事にしたいです。「人災」というキーワードは非常に強いというか、激しい表現ですけれども逆に今回の災害に人的な要因があるからこそ、人間の努力によって乗り越えられる、もしくは今後レジリエンスを高めていける部分があると思っています。異常気象や気候変動というのは今後も様々な災害をもたらすと思いますけれども、まさにレジレジリエントなシステムであったり、社会を作っていくことがまだ可能だと思います。そこに日本が貢献できる、活躍できるというのは非常に大きなことだと思っています。

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2021年、株式会社「わたしをことばにする研究所」設立。現在、TOKYO MX「堀潤LIVE Junction」キャスター、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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