【緊急インタビュー】アサド政権崩壊、シリア人の涙。「新しい国をつくる」エルカシュ・ナジーブさん
シリアの首都ダマスカスが解放されました。
反体制派によってアサド政権が崩壊、これから新たな体制づくりが始まります。
私が運営する市民メディア「8bitNews」では、この10年の間、シリア人ジャーナリストのエルカシュ・ナジーブさんや、ヨルダンのザアタリ難民キャンプで避難生活を続けるシリア人、ヤーセルさんや現地で支援を続けるNGO「国境なき子どもたち」の松永晴子さんと協力してキャンプの今を「ヤーセルさんからの便り」として伝えてきました。ついに、アサド政権が崩壊し、帰還への光が見えてきました。
一方でまだ何が起こるかわからないという不安もあります。
今、シリア人の皆さんは何を思っているのか。緊急インタビューとして、ナジーブさんにお話を伺いました。
◆ダマスカスでは拷問をしていた秘密警察の地下から運ばれた灯油が人々を温めている
ナジーブさんは、当初、反体制派の進撃は首都にまでは及ばないだろうと思っていたといいます。首都ダマスカスや近郊の街はアサド政権が維持し、シリア北部は反体制派の領地として解放されると。なぜなら、国際社会がこれまでシリア危機に対処してこなかったという、失望もあったからです。
しかし、電光石火、首都を制圧。アサド大統領が国外に逃亡する事態に発展し、ダマスカスは解放されました。現地での目撃者によると、アサド政権軍と反体制派が激しい交戦状態にはならなかったといいます。
ナジーブさんによると、大統領は国外へ退去したものの、首相は残り、イランやロシアなど関係国との話し合いの席が持たれたといいます。大きいな混乱なく、反体制派に首都を譲り渡した形になったと話していました。
現地の人たちの話によると、政権が崩壊するまで人々が恐れてきた秘密警察の地下から運ばれた灯油が暖を取るために市民に配られたといいます。「シリアの希望ある若者たちが何人も何人も拘束され、拷問されたあの施設からの灯油が、今、市民を温めるために使われているとは」と、ナジーブさんは目に浮かんだ涙を拭います。
◆「シリアをつくりなおします。支援をつづけてくれた日本の人々を忘れません」
ナジーブさんへのインタビューでは、「なぜ、アサド政権軍は首都を守らなかったのか?」、「反体制派を構成する勢力は今後、どのように国をつくろうとするのか?」など、これからのシリア再建の行方について意見を聞きました。
原理主義を掲げる勢力でもあり、これまでよりも保守的な国になるかもしれないと指摘しつつも、キリスト教徒やマイノリティに対しても開かれた対応をとる期待もあると話します。
CNNは一昨日、反体制派の武装勢力を率いる「シャーム解放委員会」(HTS、旧ヌスラ戦線)のジャウラニ指導者の独占インタビューを行いました。その中で、HTSは、シリアの10年に及ぶ内戦で過激派や聖戦主義者による迫害を受けた民間人や団体を安心させるために活動していると述べると共に、「キリスト教徒やその他の宗教的、民族的少数派に対し、HTSの統治下で安全に暮らせることを公に伝えるために尽力している」と語っていました。
ナジーブさんもこの言葉を引用し、シリア再建への希望を感じていると話しました。「これから国外に避難している、難民の人々の帰還が始まると思います。国づくりにおいてはさまざまな困難もあるでしょう。しかし必ず良くなります。戦争や麻薬で得たお金ではなく、貿易によって生まれるお金で経済を回していくのです。私たちシリア人は、これまで支援を続けてきてくれた方々のことを絶対に忘れません。ヨルダンのザアタリ難民キャンプをはじめ、日本の皆さんが支えてくださったことは忘れません」と、インタビューの後半、静かに日本の視聴者の皆さんに対して語りかけました。
最後に、「私達は持続可能なエネルギー先端技術、遺跡を大切にする国になりたいんです。これからぜひぜひ日本にいるシリアコミュニティの役割、日本の役割、みんなで協力してやらなきゃいけないと思っています」と決意を述べ、笑顔でインタビューを締めくくりました。
ナジーブさんは、これまで、東日本大震災の復興をはじめ、災害が起きるたびに現地に飛んでいき、中東に、世界にその様子を伝え支援を呼びかけてくれました。
ぜひ多くの方々にナジーブさんの言葉が届くことを願っています。
フルサイズのインタビューは8bitNewsで公開しています。ぜひご覧ください。