シリア北西部のイドリブ県で反体制派がドローンを使ってシリア軍の拠点を爆撃
シリア北西部のイドリブ県では、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、同地で活動を続ける反体制派が9月25日、政府の支配下にあるカフルバッティーフ村、ダーディーフ村(いずれもサラーキブ市とマアッラト・ヌウマーン市の間に位置)を無人航空機(ドローン)で爆撃した。
イドリブ県は今年2月から3月初めにかけてのシリア・ロシア軍とトルコ軍、「決戦」作戦司令室の戦闘で、県南部がシリア政府の支配下に入った。それ以外の地域、すなわち活動家らが言うところの「解放区」は「決戦」作戦司令室の支配下にとどまり、トルコ軍が停戦監視を名目に各所に駐留している。
「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍)などからなる武装連合体。シャーム解放機構は、「シリア革命」最後の牙城とされるイドイブ県の「解放区」で軍事・治安権限を掌握し、同地の事実上の支配者として君臨している。
ドローンで爆撃を敢行した「反体制派」が具体的にどの組織なのかは明らかではない。だが、シリア人権監視団によると、この組織は、シリア軍の進攻に備えて、ドローンの開発とその利用に向けた訓練に取り組んできたという。
可能性として考えられるのは、上記のシャーム解放機構、国民解放戦線、そして新興のアル=カーイダ系組織であるフッラース・ディーン機構、中国新疆ウィグル自治区出身者を主体とするトルキスタン・イスラーム党である。
このうち、シャーム解放機構は、これまでに何度もロシア空軍の司令部が設置されているラタキア県のフマイミーム航空基地に対してドローンで攻撃を試みており、「ドローンの開発とその投入に向けた訓練に取り組む」と指摘するまでもない。
フッラース・ディーン機構とトルキスタン・イスラーム党は、シリア軍の進攻に備える動機を(他の反体制派と同様に)十分持ってはいる。だが、3月5日のロシアとトルコの停戦合意に基づいて、アレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路を再開しようとする動きに抗う彼らは、停戦合意に同調するシャーム解放機構から激しい弾圧に晒されており、シリア軍への反撃に注力しようとしているとは思えない。
となると、ドローンの開発と投入に積極的に取り組んでいるのは国民解放戦線に所属する組織のいずれかだと考えられる。
国民解放戦線は、2018年5月にトルコの後押しのもとに「解放区」で結成された武装連合体。シリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団、アル=カーイダの系譜を汲むシャーム自由人イスラーム運動、バラク・オバマ前政権の支援を受けていた「穏健な反体制派」の一つで、シャーム解放機構結成に参加するも、その後離反したヌールッディーン・ザンキー運動などからなる。
なお、9月25日の爆撃による人的被害は確認されていないが、同様の爆撃は、数日前にもハマー県北西部のガーブ平原にあるジュッブ・アフマル村のシリア軍拠点複数カ所に対して行われている。
「決戦」作戦司令室はまた、9月25日にはシリア政府の支配下にあるイドリブ県カフルナブル市、ハザーリーン村一帯を砲撃した。
これに対して、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるイドリブ県ザーウィヤ山地方一帯、ハマー県ガーブ平原各所を連日砲撃している。