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3回KOでタイトルを防衛した第45代日本スーパーフライ級チャンピオン

林壮一ノンフィクションライター
写真:山口裕朗  高山涼深と小口忠寛トレーナー

 4月25日、第3ラウンド1分31秒で古谷昭男を沈め、日本スーパーフライ級タイトル2度目の防衛を果たした高山涼深。自身の戦績を8戦全勝7KOとした。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 「昨年11月にサンドバッグを打っていて左第3中手骨を骨折してしまい、12月14日に予定されていた試合がキャンセルになりました。なかなか気持ちを切り替えることが出来ず、右一本での練習、そしてロードワークにも身が入りませんでした。

 メンタルをやられて、お酒に走った日もあります……。変な焦りがあって、現実逃避していた自分を反省しています」

 中学生時代から指導を受ける小口忠寛トレーナーからは、「体のキレを取り戻せ!」「雑な動きをするな!!」と、何度も檄が飛んだ。

写真:山口裕朗
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 それでも、試合当日にはコンディションを作り上げ、後楽園ホールの控え室では、今までにないほどシャープな動きを見せる。

 「でもリングに上がったら、頭が真っ白になってしまって、足が地に着いていないような状態でした。ウォーミングアップの時に調子が良かったので、そのイメージを持ち過ぎてしまったのかもしれません。自分の未熟さを感じざるを得ませんでした。

 古谷選手は今回が日本タイトル3度目の挑戦。ラストチャンスに懸ける闘志が伝わってきましたね。初っ端からきているなぁと。ただ、序盤に右を喰らって、『これなら倒れないな』とも感じました。左ボディが嫌でしたね。ファーストラウンドは、向こうにポイントを取られたことは分かっています」

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 小口は最初のインターバルで、重心をもっと低く、そして顔面ではなく腹を狙っていけ!とアドバイスしている。

 「1ラウンドにちょっと古谷選手が弱ったところが見えたので、よりプレスを懸けようと考えました。2回に入って、少しずつ、膝を曲げてずっしり構えられたように感じます」

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 そして迎えた第3ラウンド、高山は勝負に出る。いきなりの左ストレート、ワンツー・フック、上下へのストレート、ボディアッパー、左フックと多彩な攻撃を見せた。

 1分4秒、右フックを挑戦者の顎に打ち抜き、最初のダウンを奪う。

 「自分は左ストレートが得意ですが、上手くクリーンヒットできてよかったです。セコンドからも『落ち着いて下から攻めろ』という指示でした」

 小口トレーナーのアドバイス通り、高山は起き上がった古谷を左ボディアッパーで仕留めた。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 「勝ててホッとしました。更に上を目指す為にも、しっかりとした基盤作りをしなければと思っています。減量ももっと早く取り掛からねばいけなかったですし、私生活の面を考えて、しっかり取り組んでいきます。

 自己採点するとすれば、今回は良くて40点というところです。とはいえ、1位の古谷選手と彼の得意な中間距離で打ち合って勝てたのは、とても自信になりました。もっともっと、いい景色が見られるように精進します」

 第45代日本スーパーフライ級チャンピオンは、より高みを目指して走り続ける。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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