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両者スコアレスの末の劇的な幕切れ 写真で振り返る天皇杯決勝(川崎フロンターレvs柏レイソル)

宇都宮徹壱写真家・ノンフィクションライター
3大会ぶり2回目の天皇杯優勝を果たし、歓喜でトロフィーを掲げる川崎フロンターレ

> 5月20日から始まった、天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会(以下、天皇杯)。ついに12月9日、国立競技場にて決勝戦を迎えることとなった。ファイナルの舞台にたどり着いたのは、ともにJ1の川崎フロンターレと柏レイソル。国内最古のタイトルのみならず、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場権も懸かる注目の一戦を、今回は写真メインで振り返ることにしたい。

リーグ戦は8位に終わった川崎。常連となったACL出場権を獲得するべく、ゴール裏も精いっぱいの後押し。
リーグ戦は8位に終わった川崎。常連となったACL出場権を獲得するべく、ゴール裏も精いっぱいの後押し。

17位で辛くもJ1残留を決めた柏。天皇杯を制して初のACL出場を果たした、2012年大会の再現を目指す。
17位で辛くもJ1残留を決めた柏。天皇杯を制して初のACL出場を果たした、2012年大会の再現を目指す。

試合前の天皇杯設置セレモニー。読売クラブで優勝3回を経験した、元日本代表の加藤久氏が大役を果たした。
試合前の天皇杯設置セレモニー。読売クラブで優勝3回を経験した、元日本代表の加藤久氏が大役を果たした。

J1最終節から中2日。川崎も柏も直近のリーグ戦からスタメン4人を入れ替えてきた。14時3分、キックオフ。
J1最終節から中2日。川崎も柏も直近のリーグ戦からスタメン4人を入れ替えてきた。14時3分、キックオフ。

試合は序盤から、柏が攻めて川崎が受ける展開がつづく。前半のシュート数は柏の11本に対して川崎は1本。
試合は序盤から、柏が攻めて川崎が受ける展開がつづく。前半のシュート数は柏の11本に対して川崎は1本。

柏の日本代表、細谷真大。森保一監督がスタンドで見守る中、2回の決定機を迎えるも惜しくも決めきれず。
柏の日本代表、細谷真大。森保一監督がスタンドで見守る中、2回の決定機を迎えるも惜しくも決めきれず。

この日はシュートゼロに終わった、川崎のレアンドロ・ダミアン。試合後に今季限りの退団が報じられた。
この日はシュートゼロに終わった、川崎のレアンドロ・ダミアン。試合後に今季限りの退団が報じられた。

56分、柏はFKのチャンス。サヴィオが直接狙うが、チョン・ソンリョンが左手一本でセーブして見せる。
56分、柏はFKのチャンス。サヴィオが直接狙うが、チョン・ソンリョンが左手一本でセーブして見せる。

柏の松本健太も好セーブを連発。バフェティンビ・ゴミスのヘディングシュートを防いだシーンは圧巻だった。
柏の松本健太も好セーブを連発。バフェティンビ・ゴミスのヘディングシュートを防いだシーンは圧巻だった。

この日の公式入場者数は6万2837人。新国立となってから4回目の天皇杯決勝で、最多記録を更新した。
この日の公式入場者数は6万2837人。新国立となってから4回目の天皇杯決勝で、最多記録を更新した。

両者スコアレスのまま、優勝の行方はPK戦に委ねられることに。優位に試合を進めた柏は全員で意思統一。
両者スコアレスのまま、優勝の行方はPK戦に委ねられることに。優位に試合を進めた柏は全員で意思統一。

ここでも松本が躍動。5人目のゴミスを止めてサドンデスとすると、つづく登里享平のキックも読み切った。
ここでも松本が躍動。5人目のゴミスを止めてサドンデスとすると、つづく登里享平のキックも読み切った。

両者2人ずつ失敗して、10人目はGK対決へ。チョン・ソンリョンのキックはゴール右上に鋭く決まった。
両者2人ずつ失敗して、10人目はGK対決へ。チョン・ソンリョンのキックはゴール右上に鋭く決まった。

そのままゴールマウスに戻ったチョン・ソンリョン、松本のキックを見事に防いでチームメイトに駆け寄る。
そのままゴールマウスに戻ったチョン・ソンリョン、松本のキックを見事に防いでチームメイトに駆け寄る。

喜びを爆発させる川崎の選手たち。いかに難しい試合だったか、そして苦しいシーズンだったかが伝わる。
喜びを爆発させる川崎の選手たち。いかに難しい試合だったか、そして苦しいシーズンだったかが伝わる。

かくして川崎が3大会ぶり2回目となる天皇杯優勝を果たし、4シーズン連続で来季のACL出場を確定させた。
かくして川崎が3大会ぶり2回目となる天皇杯優勝を果たし、4シーズン連続で来季のACL出場を確定させた。

試合後、涙をこらえながらゴール裏に挨拶する松本。柏のサポーターからは暖かい拍手と声援が贈られた。
試合後、涙をこらえながらゴール裏に挨拶する松本。柏のサポーターからは暖かい拍手と声援が贈られた。

 120分のゲームでは柏が主導権を握り続けるも、最後は両チームのGKの明暗が勝敗を決する、いささか残酷な結末となってしまった。

 柏の松本は、過去2シーズンのリーグ戦出場は1試合のみ。3番手という序列が続いていたが、今季7節でチャンスを掴むと、以後はずっとゴールマウスを守り続けてきた。一方、川崎のチョン・ソンリョンも、今季は上福元直人にスタメンを奪われてベンチを温める日々がつづいた。両GKの今季の充実と苦闘が、天皇杯決勝という舞台で交錯し、強烈なコントラストを焼き付けることとなった。

 さて、2回目の優勝を果たした川崎だが、前回の2020年大会は2試合勝利しただけの優勝だった。この年のJリーグは、コロナ禍により4カ月の中断期間を強いられ、リーグ戦再開後も厳しい日程を強いられることとなった。そのため天皇杯に関しては、J2・J3優勝クラブが準々決勝から、そしてJ1優勝クラブが準決勝から、それぞれ出場。川崎は準決勝でブラウブリッツ秋田を、決勝でガンバ大阪を破り、この年の2冠を達成している。

 今大会は、6試合を勝ち抜いての優勝。しかも、無冠に終わればACL出場もないという状況だった。コロナ禍の影響で苦しんだ3年前とは、また違った困難を乗り越えての天皇杯優勝であったことは銘記しておきたい。

 川崎フロンターレには、心から「優勝おめでとう!」と申し上げたい。そして、その川崎と好勝負を演じた柏レイソルにも、リスペクトを込めた拍手を!

<この稿、了。写真はすべて筆者撮影>

写真家・ノンフィクションライター

東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。『フットボールの犬』(同)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)で2016サッカー本大賞を受賞。2016年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)を配信中。このほど新著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)を上梓。お仕事の依頼はこちら。http://www.targma.jp/tetsumaga/work/

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