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#最悪のこどもの日 の翌朝に思う #こども庁 は子ども基本法で子どもの声を聴き、子どもを守れ!

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
子どもの乗らないブランコのように子どもを置き去りでこども庁をすすめてはいけない(写真:Ray_Park_Stock_Photo/イメージマート)

日本で、子どもを置き去りにした、こども庁の議論を自民党と内閣官房がすすめています。

昨日は、#最悪のこどもの日 と呼ばれたこどもの日でした。

1. 最悪のこどもの日

子ども置き去りでこども庁を進めるような政府では来年再来年も最悪のこどもの日

最悪のこどもの日、とはフローレンス代表・駒崎弘樹さんが、昨日(2021年5月5日)に、子どもたちを置き去りにした日本のいまに悲しみと怒りを込めて発信されたnoteのタイトルで発信された言葉です。

その一部を抜粋しました。

◎最悪のこどもの日だ

ゴールデンウィーク最終日のこどもの日。

最悪だ。

何がつらいって、このコロナ禍でどこにも遊びに行けない子ども達も多いよねって。

せめて近所の公園でいっぱい遊ぶわけだけど、図書館も児童館も閉められて。

図書館や児童館がクラスタになったことがありましたっけね、都知事さん。

(略)

今までもさ、子ども達は頑張ってきたよ。

保育園では保育士さんは完全マスク。微笑んでいるのか、悲しんでいるのか分からない中、子ども達は一生懸命コミュニケーション取ろうとしているよ。

小中学校では、給食の時に黙って食べましょう、って先生から言われて、同じ方向見て黙々と食べているよ。前は牛乳一気飲み競争楽しいねって。笑顔がいっぱいの給食の時間がさ。

高校生は修学旅行がなくなって、全国目指して頑張ってた部活の大会がなくなり。

大学生はオンライン授業で、リアルに友達作る機会もずっと失ってさ。

挙句の果てに、「若者はなぜ外出するのか」みたいなタイトルのニュースで、まるで若者のせいでコロナ広がってるみたいな言い草で眉間にシワ寄せられて。

「いやー、無謀な若者には困りましたねぇ」みたいに、どうしようもないワイドショーのコメンテーターが語りやがって。

違うだろっていうの。

子どもや若者はもう十分頑張ってんだって。

(略)

なんで子ども達の部活の大会やめさせて希望を奪ってるのに、オリンピックはやれるんだよって。

緊急事態宣言で我慢しろっていって、飲食店とか小売店とか潰しにかかってるけどさ、そこで働いている人の多くは非正規雇用なんだよ。親が困窮したら、子どもも貧困に陥るんだよ。

ひとり親へのアンケートじゃ、10%の子どもが体重減ってんだよ。

児童虐待対応件数は19万7836人で、前年比6%増だよ。

子どもの自殺は25%増(100人増)だよ。

こんな状況で、何がこどもの日だよ。

全然こどもを守れてないじゃんかよ。

一番腹立つのは、こんなどうしようもない政治を作ったのは、

我々大人だってことだ。

僕も原因の一部であり、加害者の一員だってこと。

僕はこどもや子育て支援の仕事をしているから、

連休前にもたくさん相談があって。

「小学校3年生の子どもがいます。塩をなめて生きています。もう限界です。助けてください」とかさ、そういう連絡が日々来るわけですよ。

もちろん一人ひとりしっかり対応して、食料送って、何とか行政サービスにつないでって頑張ってるけど、全然追いつかないんですよ。

日々、無力感を握りしめてますよ。

政治はどうしようもないけど、それをつくったのは我々だから、せめて持ち場で精一杯こどものためにできることをしたいと思う。(後略)

※駒崎弘樹「最悪のこどもの日だ」

こんな日本で政府の、子どもや子育て世帯への支援は迅速で十分とはいえません。

2020年3月の一斉休校以来、弱い立場にいるシングルペアレント(とくに母親)から仕事をなくしたり、収入が減り、ふたり親困窮世帯にも支援がなかったのです。

2021年3月に菅総理は、ふたり親困窮世帯含む困窮子育て世帯給付金を決定しましたが、支給はひとり親で最速・5月、ふたり親は7月以降にずれ込むとの見通しです。

この結果、去年も今年も、親が仕事をなくし、あるいは収入が減って食事すらできない飢餓状態にある親子が増えています。

2回目の緊急事態宣言があった2021年2月には冬場にもかかわらず、子どもの体重が減ったと回答したシングルマザー家庭が1割あったそうです。

また生活はできても、受験費用が出せないために進学をあきらめなくてはいけない若者たちもいます。

こちらのリンクのp.14以降にキッズドアの受験生調査の結果が掲載されています。

「共通テストをコロナで諦めました。そんな生徒がいた事を知ってほしい 」

この声を文部科学省・大学入試のあり方に関する検討会議にも届け、私も昨年のコロナ禍開始からできるだけのアクションをしてきましたが、政府は動く気配がありません

こんな厳しい子ども・若者の実態を放置し、衆議院選挙での自民党の票のため、あるいは内閣府の利益のために、こども庁の議論をつづける大人ファーストの日本で問題は改善するのでしょうか

2.子どもが声をあげた子ども基本法

子どもを置き去りでこども庁の議論をする自民党と内閣官房

そんな日本ですが、最悪のこどもの日の2週間前、2021年4月22日に画期的な院内集会がありました。

院内集会の様子は中日新聞でも紹介くださっています。

「子ども基本法を」声上げる子どもたち(2021年5月5日記事)

子ども基本法の成立を求め、子ども・若者たちが国会議員に声を届けたのです。

「子どもの声を聞いて、一緒に行動してほしい。子どもも話し合いのテーブルにつかせてほしい」

私もその場に賛同団体参加者として同席していましたが、子ども・若者たち自身が自分や友人のことだけでなく、こうした場にいられないもっとも大変な子どもたちのこと考え、提言を行ってくれました。

「取り残されている子どもはたくさんいる。全員の権利が守られる社会を」

これも子ども・若者たちの声です。

「わたしにも権利はあるの?」

支援者の方が紹介くださった子どもの声です。

虐待されている子ども、貧困の子ども、外国につながる子ども、障害のある子ども。

いまは子ども基本法がなく、子どもの権利条約を批准していても、大人が子どもの声を聞かない日本です。

「普通の子どもが言えないなら、排除される子どもはもっと言えない」

広げよう!子どもの権利条約キャンペーン・共同代表の甲斐田万智子さんの言葉が心に刺さりました。

こども庁の議論も、子どもの声を聞くことなく幼保の縦割り打破など、大人の論理ですすめていけば、子ども自身の問題解決からはどんどん遠ざかるムダな組織が増えるにすぎません。

子どもを置き去りでこども庁の議論をする自民党と内閣官房で良いのでしょうか?

3.政府・自民党は子どもの声を聴いてください!

子ども基本法を成立させ、子どもの意見表明・意思決定参画によりこども庁を創設すべき

子ども基本法については、子どもと国会議員、大人たちが一緒に集う院内集会が開かれ、子ども・若者の声が国会議員に届いたこと自体に大きな意味がありました。

2021年4月22日の院内集会で、自民党議員として子ども基本法を精力的に進めてこられた塩崎恭久議員は、「子どもの権利条約に魂を入れていく」「結果を出す」とおっしゃいました。

公明党の古屋範子議員、自民党の野田聖子議員、牧原秀樹議員、共産党・畑野君枝議員はじめ、これまでも子どもの貧困対策や、子どもの権利のためにご尽力いただいていた与野党国会議員のみなさんが多くご出席いただき、近い将来の子ども基本法の成立に大きく前進した1日でした。

また広げよう!子どもの権利条約キャンペーンの荒牧重人共同代表が、「こども庁」は子どもの権利、子ども基本法にもとづき「当事者である子どもの意見を聴き、子どもに関わる立法や政策に適切に反映させる仕組みを持つ」組織であるべきとの提言をされました(下記院内集会資料参照)。

まったく同じ思いです。

4.政府・自民党は子どもを守ってください!

子どもが衣食住に不自由しない日本へ

性暴力やあらゆる大人の虐待から子どもの生命・尊厳を守る

カネ(財源)・ヒト(人員増)の議論から逃げないで

子どもを置き去りで進む、自民党ファースト・内閣府ファーストのこども庁の議論については私自身も違和感を表明してきました。

山田太郎議員はじめ自民党有志の提言では、「子どもの命を守る」「子どものための予算をとる」ための組織がこども庁であり、このこども庁ならすぐに実現してほしいと願っています。

最悪のこどもの日である5月5日の翌朝に私が思うのは、子どもを守る日本政府であらねばならない、そのためには子ども基本法を成立させ、子どもを守るための組織としてこども庁を設置せねばならないということです。

過去の記事でも繰り返してきましたが、その際に大切なのは以下のことだと思います。

子どもが衣食住に不自由しない日本へ

→児童手当の低所得世帯・多子世帯増額、児童扶養手当の二人親困窮世帯適用

性暴力やあらゆる大人の虐待から子どもの生命・尊厳を守る

→子どもコミッショナー、子どもオンブズパーソンの国・地方への必置、日本版DBS(性犯罪歴のある大人を子どもに関わる職・ボランティアに就かせない無犯罪歴証明制度)の運用等

カネ(財源)・ヒト(人員増)の議論から逃げないで

→最低年4.5兆円~自民党有志提言8兆円、子ども保険・教育国債・資産課税等の多様な財源で社会が子どもを支える仕組みを創設

これらの提言を実現していくに際して、子どもの声を聞く日本になってほしい

そんな未来が近いうちに来るに違いない。

そう考え、選挙含め行動する大人のみなさんが増えてほしい。

#最悪のこどもの日 が来年は訪れないことを願っています。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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