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不登校、親はどうする?―まず休ませる、相談する、精神科医・支援団体開発無料チェックリストも活用を

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
不登校、親こそ不安ですよね(写真:イメージマート)

板橋区教育委員会が、不登校の子どもの登校再開を目的とする株式会社と連携、というPRやSNS上での発信に不登校当事者や支援団体が不安を募らせています(PRは現在削除板橋区は連携の事実を否定)。子どもが好きなスマホやゲームを取り上げて、登校再開に追い込んだとしても、親子共に無理のある登校再開が、かえって良くない展開になってしまうことがあるからです。

「自殺を選んでしまった不登校経験者のうち、約75%の子どもが再登校していた」(精神科医・松本俊彦氏インタビュー、講談社cocreco、2023年9月13日)という指摘もあります。

でも、我が子の不登校は親にとって、とても不安なものです。

学校に行ってほしい、という思いがどうしてもあると思います。

私も我が子の不登校で途方に暮れた経験があります。

不安と混乱の中で、不登校の支援者から「とにかくまず子どもを休ませる」、「家は安全安心に過ごせる場でいること」を教えていただいていたこと、学校の先生や信頼できる小児科医に相談した結果、偶然にも登校できるようになりました。

子ども一人一人に対応が異なるのが、不登校という現象なのです。

この記事では、不登校になって親がどうすればいいのか、支援者・当事者、研究者や医師たちから私が学び実践してきたポイントをまとめます。

あわせてYahoo!ニュースエキスパートで不登校ジャーナリストの石井しこうさんの記事もぜひお読みください。

1.まず休ませる、家は安全安心に過ごせる場でいること

子どもが学校に行きたくないと言ったときには、まず休ませることが大切です。

子ども自身が、行きたくない理由がよくわからない場合もありますので、休ませつつ雑談をしたりして、家を安全安心に過ごせる場でいられるようにすることが大切です。

実際に、風邪などが原因で体力が落ちている場合もありますし、文科省民間団体の調査では先生との関係、友達のいじめ・いやがらせが最多の要因であることも把握されています。

授業がわからない、そもそも学校の授業スタイルが合わないなどの原因ももちろんありますし、複数の原因が絡み合っていることもあるのです。

我が子の場合には、最初の欠席は風邪が原因で、その後ずっと喉が痛くて、給食の時間をプレッシャーに感じていたことも不登校の原因だったようです。

これらの原因を親が問い詰めても、事態はあまりよくなりません。

まず休ませる、家は安全安心に過ごせる場でいること、が親御さんに大切にしてほしいことになります。

2.信頼できる教員・団体・専門家に相談を

次に、信頼できる教員(いまの担任の先生でなくても、過去の担任や養護教諭など)に相談したり、長年の活動実績のある不登校支援団体や、かかりつけの小児科医などに相談してみましょう。

お子さんの個性や症状によっては、小児精神科医や起立性調節障害にくわしい小児科医などの受診により、お子さんの状況への理解が深まります。

自治体の教育センターにも、不登校の子どもや親の支援に実績があり、サポートくださるスタッフがおられる場合もあります。

学校・自治体で不登校支援にたずさわる専門職からも次のような助言をいただきました。

「板橋区も、ですが、学校・教育センターにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの『国家資格』を保有する専門職が配置され、親御さんが相談できる体制を整えています。

学校の先生の対応だけでは、問題が改善していない気がするという場合には、遠慮なく校長先生や教育センターにスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとの面談を希望してみてください。」

これらの専門職や心ある支援団体は子ども自身の権利を尊重し、子ども自身とも面談したり、「子どもと一緒に」「親も支えつつ」子どもさん自身が望む生活へ向かっていく手助けをするのです。

私が信頼する専門職、支援者からも次のようなお声が寄せられています。

「親だけにアドバイスをして、子どもを無理矢理学校に行かせるようなアプローチは『絶対にしない』のが、親子に寄り添う専門職・支援団体が大切にしてきたことなのです。

子どもの安全安心な居場所であるはずの家庭を、子どもから奪ってしまうことが、子どもにとって最大のリスクとなるからです。」

相談先が思いつかない場合には、文部科学省も保護者が相談できる地方自治体の相談窓口を公表しています。

私自身は、#学校ムリでもここあるよ の関係者のみなさんから、常日頃アドバイスをいただいてきました。

不登校でも全国に居場所・フリースクールがあります。

親も対面相談、メール相談ができる居場所も探せます。

今年は8月19日からキャンペーン開始ですが、すでに全国の相談できる居場所も検索できるようになっています。

3.精神科医・不登校支援団体開発の「学校休んだほうがいいよチェックリスト」(無料)も活用を

本当に学校を休ませた方がいいのか、親御さんの悩みは深いと思います。

そんなときこそ、精神科医・不登校支援団体開発の「学校休んだほうがいいよチェックリスト」(無料)を活用ください。

私も何度も助けられました。

LINEで20問の質問に回答するだけなのですが、我が子の不登校はこの質問にはあてはまらないな、これは確かに気になる症状、など、親が子どもの状況を把握するためにとても優れたツールとなっています。

また相談先が表示される機能があったり、親御さんの不登校体験談インタビューも読めたり、心強いチェックリストとなっています。

4.不登校の親が読んでおくと、追い詰められなくて済む本

日本で40年以上にわたって不登校の子どもたちの支援をしてきた西野博之さん(私もとても信頼している支援者です)が、2024年6月に『マンガでわかる! 学校に行かない子どもが見ている世界』(KADOKAWA)を出版されました。

「なぜ、ふつうができないの?」「昼夜逆転するのはなぜ?」「明日は行くっていったのに」、学校との付き合い方、勉強が遅れることへの焦り。

不登校の親の悩みにきめこまかく寄り添ってくれます。

不登校の子どもと親の経験に基づき、そして西野さん自身の40年にわたる関わりから生まれた一冊は、不登校に悩む親のみなさんをきっと勇気づけてくれると思います。

おわりに

不登校は親にとってこそ大変なことです。

みなさん、よく頑張っておられますね、おつかれさまです。

もう日本は、学校に登校させること、がすべてではない国になっています。

あなたは一人ではありません。

子どもさんも一人ではありません。

信頼できる人たちに、自分たちの状況を共有しながら、なるべくあせらず、子ども自身の力を休むことで回復し、少しずつ前に進んでいきましょう。 

そして親御さん自身も、できるだけご自身の好きなことや、息抜きを大切にされてくださいね。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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