子どもは票を取る道具ですか?新聞政治部の自民党補選直前 #こども庁 報道に違和感あり
1.子ども予算いきなり10倍???、民間議員の資料が流出する経済財政諮問会議
自民党3連敗した補選直前に #こども庁 をめぐる不可解な報道がありました。
産経新聞「<独自>市区町村に「こども会議」 来年度に「こども庁」設置 自民たたき台案が判明」(4月23日22:57)
時事通信「こども庁で少子化対策加速 縦割りの業務・予算一元化―諮問会議で民間議員提言」(4月25日7:22)
4月25日補選直前の週末夜と、補選の日の朝の報道に強い違和感を感じました。
産経新聞の報道では、以下のように報道されています。
単純に驚きました。
予算10倍増とは、威勢がよすぎるからです。
また、予算10倍とは何をどのように増額するつもりなのか、不思議に思い私が可能な限り多くの新聞記者に確認したところ、この自民党幹部会資料は、産経新聞以外の報道各社でこども庁に関心を持つジャーナリストには共有されていませんでした。
自民党幹部が、産経新聞政治部の近い記者にしか資料を共有していなかった可能性が高いと思われます。
また時事通信の記事にはもっと驚きました。
政府会議の委員の資料が事前流出など私が関わる政府会議ではありえないからです。
私自身も複数の省庁会議の政府委員をつとめていますが、会議前に資料を時事通信に自らリークするか、省庁や官邸が故意に資料を時事通信に流出させたのでなければ、このような報道は不可能です。
つまり経済財政諮問会議を所管する官邸が流出させたか、今日、誰かが判明する民間議員が事前流出させたか、です。
これは政府会議の運営として大いに問題がある手法です。
まず会議を所管する政府サイドが情報を流出させたのだとすれば、通常、会議開始まで伏せられる民間議員の情報を守れなかった、官邸の情報管理能力のずさんさを示しているからです。
また民間議員が自らリークしたのだとすれば、これも問題です。
政府会議での不文律であり委員の倫理でもある会議前の資料非公開原則に違反しているからです。
これは場合によっては委員解任の理由にもなるでしょう。
会議前に資料を流出させるこの国の官邸の情報管理能力、あるいは民間議員の倫理観の欠如した行動、いずれであっても強い不信と疑問を感じざるを得ません。
これらの不可解な報道は、国政の補欠選挙の苦境に焦った自民党選対本部と、産経新聞・時事通信の政治部が結託した可能性があります。
子どもを選挙の票の道具にする政治・報道の関係や、手法については、子どもの権利と尊厳・生命を大切にする研究者として懸念と不快感を覚えています。
2.政治部こそ、子ども置き去りの報道の原因では?
組織論ばかり報道し、政策の優先度の議論がされていないこども庁報道
そもそも、こども庁については、内閣府案と文科省案、あるいは縦割り批判など、組織論ばかりが報道されています。
しかし本当に子どもを大切にした報道であるならば、いま子どものために必要な政策論が記事になるはずです。
山田太郎議員とのインタビューで私も確認しましたが、子どものために必要な政策と予算増加を実現するためのこども庁の議論だったはずです。
でも自民党と政治部は、いつの間にか、幼保一元化や縦割り批判など使い古された組織論に問題をすりかえています。
これは子どものための政策を理解していない政治部が中心の報道であることにも原因があると思われます。
子どものための政策を論じる中で、こども庁の役割をどうするかの真剣な報道を新聞各社には期待したいところです。
ーふたり親困窮世帯への児童扶養手当支給を自民党は実現する気があるのか?(自民党以外の政党はおそらくマニュフェストにかかげてくるでしょう)
ー高所得児童手当の特例給付廃止を菅総理が撤回するのかどうか
ー子どもの生命・権利と尊厳を守るための子ども基本法に盛り込まれるべき内容は何か?
ー性犯罪者を子どもから守る日本版DBSをどのように実現するか
私なら、こうした視点からの報道こそがいま必要だと考えます。
産経新聞にも時事通信にも、子どものための政策論をしっかりと報道できる優秀な記者がいることを私は知っています。
政治部による組織論ではなく、社会部・生活部による政策本位の報道こそ、厳しい状況に置かれている日本の子どもたちのための政策を充実させることになります。
おわりに:子どものための政策論争・財源論争こそ政党・報道に期待します
子どもを選挙の票の道具にしないでください!
子どものための本気の政策論争・財源論争こそ、衆議院選挙に必要なものです。
こども庁を作ることが自己目的化しているいまの自民党幹部の議論や報道には強い違和感を覚えます。
また組織論に偏った政治部報道にも疑問を感じます。
児童手当や児童扶養手当拡充、待機児童、教育の無償化の所得制限緩和など、こども庁より優先度の高い政策は多いのです。
そのための財源は、少なくとも4.5兆円にのぼります。(柴田悠,2016,『子育て支援が日本を救う』勁草書房,p.252)
増税や教育国債、こども保険など、子どものために必要な財源を確保するためにどうすればいいか、各党が本気で子どもを大切にするなら、衆議院選挙の争点は政策論・財源論になるはずです。
幼保一元化や縦割り批判も結構ですが、予算も人員も増やさないただの省庁再編こども庁ならば、官僚が疲弊し、政策ミスを連発するリスクしかないことは私もコメントで何度も批判してきました。
政策論・財源論のないこども庁の議論は、自民党ファーストの議論にすぎません。
子どもを選挙の票の道具としか見ていないことになります。
そんな自民党で日本の子どもたちが幸せにできるはずもありません。
そうではない本気の子どものための政策論を期待します。
有権者のみなさんも、子どもを選挙の票の道具にするこども庁の議論になってしまわないか、注意しながら見守ってください。
子どもと子育てする親に冷たい、子育て罰国家・日本が変わるかどうはか、子どものための本気の政策論・財源論を政党と報道が展開できるかにかかっています。