民間月面着陸計画「HAKUTO-R」JAXAの成功に続き日本企業ispaceが挑む!
2024年1月20日、JAXAは世界で5か国目、そして日本初となる月着陸に成功した国となりました。
一方で、2023年4月に月面着陸に挑戦していた日本の民間企業があったことをご存じでしょうか?本記事では、株式会社ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」について解説していきます
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■月着陸を目指す民間企業「ispace」
ispaceは月面ローバーやランダーを始め、月の資源を活用した宇宙インフラを構築する事業で、2010年に設立された企業です。
皆さんもTVコマーシャルで見たことがあるかもしれませんが、過去にはグーグルによる月面無人探査レースに月面ローバーの「HAKUTO」で挑戦しました。しかし、インドのロケット調達に失敗し、2018年にプロジェクトは中止となっています。
しかし、その後も民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」として、月探査ミッションに再度挑戦を行っています。Rの意味は、「リブート」再起動という思いが込められているとのことです。
もし月面着陸に成功すれば、民間企業としては世界初の月面着陸という快挙を成し遂げることになります。是非がんばって欲しいですね。
■M1ランダーの詳細
HAKUTO-Rの初号機となるM1ランダーは、サイズは高さ2.3m、着陸脚を広げると幅は約2.6mとなります。燃料を含まない重さは340kgです。機体の上部には約30kgのペイロードの搭載が可能で、コーポレートパートナーである様々な荷物を月に届けます。
サカナクションによる製作されたHAKUTOの応援歌「SORATO」を収録したディスク、日本特殊陶業の全固体電池、カナダが開発した人工知能を搭載したフライトコンピューターなどです。ちなみに、月面無人探査レースで月へ送り届けるはずであった、HAKUTOのクラウドファンディング支援者名を刻印したパネルも月面に届ける予定です。
■月へ届ける2つの小型探査ロボット
M1ランダーは二つの小型ロボットを月へ届けることもミッション目的の一つです。
まずは、アラブ首長国連邦が開発した重さ10kgの月探査ローバー「Rashied」です。Rashiedは、4輪の車輪と太陽電池、2台の高解像度カメラ、赤外線カメラ、顕微鏡装置、帯電測定装置が搭載されています。稼働時間は1日だけとなる見込みで、月面画像の収集などを行う予定です。
月の土の特性、月面での可動性、月の記載岩石学・地質学、ダストの動きを調査するほか、表面プラズマの状態や月の光電子シースを研究します。
そしてもう一つは「SORA-Q」です。このSORA-Q、SLIMにも同型機が搭載されて月に到着したことでも話題になりましたね。実はSORA-Qにとっての最初の月到達への挑戦は、このM1ランダーだったのです。
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■M1ランダーの打ち上げ~月到達までの軌跡
2022年12月11日、M1ランダーは大きな使命を背負い、スペースX社のファルコン9ロケットにて打ち上げられました。そして、約5カ月をかけて月に遷移します。2023年3月21日にはM1ランダーは月周回軌道へ投入されました。
そして、2023年4月26日、M1ランダーは月面着陸に挑戦しました。目標地点は、「氷の海」に位置する直径88kmのアトラス・クレーターです。
しかし、皆さんも報道などでご存知かもしれませんが、M1ランダーは最後の月着陸時に不具合が発生し、通信が途絶する結果となっています。のちの原因調査によると、着陸機の飛行経路で急激な月面地形の高低差があり、高度センサーが故障したと誤認識したとの事でしたそのため、着陸機は自分の高度を正確に推定することができず、結果として月面より高い高度で減速が終了。着陸機は自由落下をはじめ、高速で月面に墜落してしまったとのことです。
そして、NASAの月探査機が撮影した画像によりHAKUTO-Rの残骸が発見されています。
■ispaceの将来計画、2号機は2024年に打ち上げ予定!
M1ランダーは残念でしたが、2024年には独自に開発した月面ローバーを用いた次の着陸計画が進行しています。その際も、スペースXのファルコン9ロケットで打ち上げを行う予定です。目的は今回と同様に、地球と月間の輸送サービス構築に向けた技術検証です。是非がんばって欲しいですね。
その後も3回目の大型機による月着陸ミッションも検討されています。将来的には、2040年までに1000人が暮らす街を月面に建設するという壮大なビジョン「ムーンバレー2040」を描いています。今から楽しみですね。
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