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【速報】日本初の月面着陸に成功!JAXA月着陸機「SLIM」驚異のピンポイント着陸技術とは?

小型月着陸実証機「SLIM」©JAXA

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本日、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」が日本初の月面着陸に成功しました!おめでとうございます!本日は、SLIMが成し遂げた偉業や、狙った場所に降りる「ピンポイント着陸技術」も解説していきます。

■SLIMの月着陸への挑戦!

2024年1月20日0時ごろ、SLIMは月着陸に挑戦しました。目標地点は月の赤道付近にある「SHIOLIクレーター」周辺です。このSHIOLIという名前は、SLIMの月着陸挑戦に伴い新たに名付けられました。その由来は、SLIMで実証を目指す高精度着陸技術が、月探査の新時代を切り開くことを期待し、歴史のターニングポイントに挟まれる「栞」となるよう願いが込められているとの事です。

高速で月の周りを周回しているSLIMは、月周回軌道から離脱し月面への降下を開始します。そして、秒速1.7kmで飛行しているSLIMは、1000kmに近い距離を約20分かけてブレーキをかけ、慎重に月面へ接近していきます。SLIMは100メートルという高精度で狙った場所に着陸するため、月のクレーターを撮影することで自分の位置を把握する「画像照合航法」という技術を駆使しました。そして、遂に月に着陸することに成功したのです!

SLIMの着陸降下シーケンスイメージ図 ©JAXA
SLIMの着陸降下シーケンスイメージ図 ©JAXA

■日本が世界で5番目の月着陸に成功!

今回、日本が月着陸に成功したことから、アメリカ、ソ連、中国、インドに続き、5か国目に月着陸を成功させた国となりました。JAXAの超小型月着陸機「OMOTENASHI」、ispaceの「HAKUTO-R」で2度の月着陸に失敗していた日本ですが、3回目の挑戦となるSLIMで日本で初めての月着陸成功となったのです。おめでとうございます!

そして月面へ到達したSLIMはこれから、マルチバンド分光カメラという特殊な装置で月面の岩石を分析します。その目的は月の起源の解明です。

実は、月はいまだに起源が解明されていません。過去に惑星が地球に衝突し、その破片が集まって月ができたとする「ジャイアント・インパクト説」が有力ですが、月と地球の成分がほぼ同じであるため物質科学的な矛盾を抱えているのです。

今回の探査により月の起源の解明や、人類の活動拠点としての資源利用の可能性を探ることに役立つのです。

そしてSLIMは月面降下中に、二つの小型月面ロボットを放出することにも成功しました。これらのロボットについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

JAXA月着陸機「SLIM」が月面に届けた2つの超小型ロボットとは!?その知られざるミッションを紹介

将来の月面基地 ©JAXA
将来の月面基地 ©JAXA

■SLIMのロケット打ち上げ~月着陸まで

2023年9月7日、H-IIAロケット47号機によりX線観測衛星のXRISMを地球低軌道へ、月面着陸機のSLIMを月周回遷移軌道へそれぞれ別々の軌道へ投入されました。

実は、衛星2機を同時に打ち上げるのは40号機以来およそ4年ぶりであり、異なる2つの軌道へ投入するのは3号機以来およそ20年ぶりとなるのです。打ち上げは無事に成功!

H-IIAロケット47号機 ©JAXA
H-IIAロケット47号機 ©JAXA

そしてSLIMは、約3カ月半をかけて月へ遷移しました。SLIMは地球や月の重力を使い、時間をかけることで燃料を節約するルートを選択しました。無人探査機ならではの軌道ですね。12月25日には月周回軌道への投入にも成功します。そして、1月20日の月着陸成功へと至ったのです。

SLIMの軌道遷移イメージ図 ©JAXA
SLIMの軌道遷移イメージ図 ©JAXA

■SLIMの驚くべき「ピンポイント着陸技術」

SLIMは大きさは大体3m弱くらいで、燃料を除いた重さは約200kgの探査機です。

非常に特徴的な形をしていて、その体積と重さのほとんどはエンジンの燃料を搭載しているタンクになっています。SLIMという名前に反して、中々わがままボディのように見えますね。

そして、表面に貼り付けられている黒色の部分は太陽電池、ところせましと貼り付けられています。金色の部分は宇宙空間からの熱を遮断するためのMLIというコーティングになっています。

小型月着陸実証機「SLIM」©JAXA
小型月着陸実証機「SLIM」©JAXA

このSLIMの特徴は、高精度に狙った場所に100m以内の精度で着陸できるところがアピールポイントなんです。ちなみにアポロ着陸船の精度は10km以上のため、このSLIMがいかに高精度で頭の良い衛星かということがわかりますね。そして、SLIMは高精度で着陸するために画像航法という特殊なコントロールをします。

例えば、SLIMが月面を見るとクレータが視野に入ると思いますが、クレータの大きさやお互いの位置関係を判別することで自分が今どこを飛んでいるのか即座に把握するというすごい技術なんです。しかし、例えば時刻がずれて太陽の位置が変わるとクレータの影の見え方が変わったり、SLIMが傾いてしまうとクレータを判別ができなくなったりと、非常に難易度の高いチャレンジなんですね。

SLIMの画像照合航法イメージ図 ©JAXA
SLIMの画像照合航法イメージ図 ©JAXA

そして、SLIMのもう一つの特徴としては着陸の仕方です。アポロなどの従来の着陸機はエンジンでブレーキをして、着陸脚でストンと立った状態で月面に静止すると思います。

でもSLIMは着陸の成功率を上げるために、着陸後にあえて機体を倒して安定に静止する二段式の着陸方式を取っているんです。今回SLIMが着陸に成功したことで、この二段階着陸が世界で採用される着陸方式になるかもしれませんね。

今回のSLIMで実証した様々な技術が、日本の月開発を躍進させることを祈っています!

小型月着陸実証機「SLIM」
JAXAデジタルアーカイブス

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