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家賃“月”940万円超えの自宅とは? ロバート・デ・ニーロ宅に泥棒、現行犯で御用

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
今年9月18日、NYでイベントに出席したロバート・デ・ニーロ。(写真:ロイター/アフロ)

俳優のロバート・デ・ニーロ(79歳)が住むニューヨークの自宅に19日未明、泥棒が押し入り、現行犯逮捕されたと各主要紙が報じた。

同日午前2時30分過ぎ、市内でも有数の高級住宅地、マンハッタン区アッパーイーストサイド地区にあるデ・ニーロ氏のアパートメントに女が押し入り、クリスマスのためにツリー下に準備されていたいくつものプレゼントや、デ・ニーロ氏が所有するアイパッドを大袋に詰め込み持ち去ろうとしているところを、警察に現行犯逮捕された。

デ・ニーロ氏の自宅は当地でタウンハウスと呼ばれる、室内がいくつもある低層のアパートメントビルで、犯人が押し入った際、同氏は上階にある7ベッドルームの1室で就寝中で、騒ぎで目が覚めたという。

地元のニューヨークポストによれば、このアパートメントは賃貸住宅物件で、家賃は月6万9000ドル(1ドル136円計算で約945万円)という情報だ。英デイリーメールには、このタウンハウスの外観や室内の写真も掲載されている。写真を確認する限り、当地ではよく見る瀟洒なタウンハウス、つまり外観が一部煉瓦造りで、室内はクラシックで上質そうなモールディングが施された白が基調の壁と独特の味わいがある木目のフローリングを擁し、大きな窓から差し込む自然光で室内は明るく、キングサイズのベッドを真ん中に配置してもスペースがあり余るほど広々とした、快適そうな住居空間のようだ。

犯人はショーニス・アビレス(30歳)で、前述のデイリーメールの写真の中には、警察官に連行されながら意味深な笑みを浮かべる容疑者の姿を確認できる。「少なくとも私は誰も刺していない」と叫び、その表情に悪びれた様子は見られない。

15年以上前になるが、筆者自身もニューヨークの自宅に空き巣が入り、室内が荒らされコンピュータとデジカメを盗まれた経験がある。犯人は大胆にもビル正面入り口の鍵をこじ開けて侵入したことが、その後の調べで分かった。ただ、犯罪の多い当地では「泥棒が入ったくらい」の事件は軽犯罪として処理され、まず犯人が捕まることはない。殺人事件や傷害事件など重罪の解決が優先されるためだ。盗まれたものを探すため、当時は「質屋が並ぶ骨董通りをくまなくチェックせよ」と言われたものだ(今ならネット上にアップされるかもしれない)。

コロナ禍になり治安は悪化の一途を辿る中、デ・ニーロ氏宅の忍び込み犯が現行犯逮捕に至ったのは、不幸中の幸いと言えるだろう。ではなぜ現行犯逮捕できたのか。

それは、女はこれまで住居侵入や窃盗、強盗などで前歴があり、警察に目をつけられ追跡されていたからだった。複数のメディアによると、女はこれまで少なくとも25回(今年だけで16回)の逮捕歴があった。そのほとんどはデ・ニーロ氏の自宅がある高級住宅地区を管轄する第19警察管区での強盗や窃盗などの罪で、同管轄区で逮捕歴がトップ5に入る常習犯だという。だが女はこれまでも、州の刑事司法改革の下、保釈金なしで釈放の対象となってきた。これではいくら逮捕しても犯罪者を路上に野放しにすることになる。近年市民からは強い反発が生まれているが、一向に改善しない。

この日も女は近所の商業ビルに不法侵入を試みたがうまくいかず、デ・ニーロ氏の住宅にたどり着いたようだ。同氏の住宅の地下室ドアに、無理やりこじ開けられた跡があったという。女は現在、起訴されて拘留されているが、今回も娑婆に出て再び悪事を働くのも時間の問題なのかもしれない。よって当地ではいかに「自衛」をするかが肝となる。筆者が昔、空き巣に入られた住宅は事件後、入り口の庭の茂みを伐採し、ドアには頑丈な鉄格子のセキュリティドアをつけてもらった(イメージ写真)。デ・ニーロ氏も今後、何らかの対策を講じることだろう。

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(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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