助けて!若い子が宝くじを買ってくれない! いや買わなくていい それは貧者の税金なのだ
助けて!若い子が宝くじを買ってくれない!
Yahoo!ニュースをみていたら、宝くじの販売額が低迷しているのだという。今はYahoo!ニュースからは消えているが元の記事は河北新報のページに掲載されている。
河北新報 <宝くじ>5年で50億円減 若年層を中心に売り上げ低迷
この記事は東北の話を取り上げているが東北エリアだけでもこの5年間くらいで売り上げが50億円くらい下がっていて、「文化振興や道路補修に活用できる「貴重な財源」(仙台市)であり、各自治体は宝くじ購入を呼び掛ける。」のだという。
記事によれば、「担当者は「若い世代の購入が少ない。防災対策や災害支援に役立っていることを説明して購入を促したい」と話す。」とか、宝くじがネットで買えるようになったので「青森県財政課は「若い人たちが関心を持ち、買うきっかけになってほしい」と期待する。」などと書かれている。
ネットのまとめサイト的にいえば「助けて!若い子が宝くじを買ってくれない!」ということだろうか。
しかし、宝くじなんて若い者は買わなくてもいい。そもそも宝くじは非効率的だし、宝くじを買って地域貢献なんて考える必要もない。今回はそんな話をしてみよう。
宝くじは確実に損をする仕組み
宝くじは総体として購入者は損をする仕組みである。それは当たり前の話だが、
「(集めた販売額の合計)-(経費と自治体等の取り分)=(当選者への分配額)」
なのだから、宝くじをすべて買い集めたとしたら私たちは絶対に損をする。個人レベルでは当たる人と外れる人がいるのが事実であるが、全体にはマイナス、つまり期待リターンはマイナスの運用方法である。
公営ギャンブルの私たちの取り分はくじによるが総務省の資料によれば
- 一般的な宝くじ 45.7%
- 競馬の馬券 74.8%(ただし本来は税金を払う必要がありマジメに払うと58.5%相当)
- totoやLOTOなど 49.6%
とされる。全部のくじを買い占めても半額しか戻らないとすれば期待リターンはマイナス50%ということだ。当たらない可能性のほうが圧倒的に高く、高額当選があったとしても一部の人がたまたま分け前にあずかっただけにすぎない。半分くらいしか戻ってこないと考えたほうがいい。
若い人が「夢」を買わないのは実に賢い行動といえる
「夢」を買う、と宝くじは例えられるが、これはまさに非合理的行動ということだ。1回あたりの費用は数百円から数千円程度で一攫千金のチャンスを買っているわけだが、その夢のほとんどは砕け散る。確かに誰かは高額配当を受けるわけだから可能性はゼロではないとしてもやはりほとんど全員は外れる。
元の記事の指摘で興味深いのは団塊世代が年金生活に入って宝くじを買ってくれなくなり、若い世代が宝くじを買ってくれなくなった、という指摘だ。
これは今の若者はとても合理的で賢い行動を選択している、ということでもある。昔はジャンボ宝くじを何万円も買い込む人がいたが、確かに最近は見かけなくなったように思う。先日みずほ銀行の宝くじの売り場をしばらく観察してみたが、若い人の姿はほとんどなかった。行員と会話する高齢者が多かったということは常連が多いということなのだろう。
宝くじは別名で「貧者の税金」ともいわれる。
FPの北川邦弘さんのコラムによれば年収が低い人ほど宝くじを多く購入する傾向があるという。
低所得の人は住民税や所得税を納めていないか低い負担に留まる。社会保険料も同様だ。ところが宝くじを通じて購入額の4割くらいを国や地方自治体に納めていることになってしまう。貧者の税金と言われるゆえんである。
あなたがもし経済的豊かでないと感じているなら、宝くじに手を出すのはせいぜい月数千円以下にしておいて、正社員の転職を目指したり(実は今は正社員になるビッグチャンスが来ている)、ブラック企業からちょっとはホワイトな企業に転職して年収を上げたほうがいい。
確率でいってもそのほうが成功率は高いだろう(5~6年前の正社員登用のチャンスと比べれば今は300%くらいチャンスがあると考えてみて欲しい。何せ正社員の有効求人倍率が0.3倍を下回っていたというのに、今や1倍を超えているのだから)。
地域を支えるから宝くじを買うなんて考えなくてもいい
ところで、地域を支えるのだから宝くじを買え、というロジックはどうだろうか。私はこの記事の取材に応じた地方自治体の担当者には同情する。新聞記者にそう聞かれたらそう答えるしかないコメントをせざるをえなく、記事に使われていると感じるからだ。
(あなたが同じ立場で取材を受ければそう答えるしかないだろう。宝くじは非効率的だから若者に買うことは一切オススメしない、とは担当者として思っても言えまい)
地域を支えたいのであれば、稼いで住民税を納めればいい。毎月1万円の宝くじを買って、約4割が地域の助けになったところで年間4.8万円にしかならない。自分の手取りも増やして同じ額の税金を払ったほうがよほどマシだ。
自分の住んでいるエリア以外の地域を支えたいのなら特典を拒否してふるさと納税してもいいだろう。復興支援の宝くじを選ばなくてもいい。
百歩譲って、宝くじの購入額のうち税金に回った分を考慮し、所得税や住民税額が軽減されるのなら話は別だ。ネット販売が増えているのだから販売額の証明も簡単にできるし、確定申告で宝くじ購入額の一定額を所得控除の対象として申告すれば処理は可能だろう。しかし自分で確定申告できない人はそのメリットを活用しないだろうし、高所得者は相対的に宝くじを好まない。あまり効果的ではないだろう。国や地方自治体だって宝くじ以外の税収減になるのは怖かろうから、この仮定はほとんど無意味といっていい。
やはり、地域を支えるために宝くじを買うというのは無理筋だと思う(繰り返すが、こんなコメントをせざるを得なかった公務員には同情するほかない)。
宝くじを買う3000円で投資をしてみたほうがよほどいい
宝くじをディスって終わり、というのも面白くないので、宝くじに回していた予算の新しい振り向け方を最後に指摘しておこう。
ジャンボ宝くじを買う3000円があったら、それで世界中の株式をまんべんなく購入する投資信託を買ったほうがよほどいい。株価が上がっても下がっても毎月3000円ずつ買い付けていく。積立投資信託ないしつみたてNISAの仕組みを使えば簡単だ。口座開設のほとんどはネットでできる。
商品はたくさんありすぎて悩ましいだろうが、「バランス型」「インデックスファンド」と書かれていて、運用管理費用(信託報酬)が年0.3%以下のものを選ぶ。細かい商品の優劣はあるが、宝くじを買うより期待リターンは大幅に向上する。
ちなみに世界経済の平均がマイナス50%を超えて下がり、二度と戻らないということはまずない(北斗の拳の世界が現出した場合を除く)。むしろ反発して戻ることを考えればそういう時期に3000円ずつ買っていた資金は5年か10年で6000円になる可能性のほうが高い。
投資をして3000円を6000円に増やす可能性を信じてみるか、ごくごくわずかな3億円のチャンスに3000円を捨て続けて地方自治体を1200円喜ばせるのか、どちらがいいだろうか。
ちょっと考えてみてはどうだろうか。