日本人が大好きなアノ甲殻類ずくめの贅沢コースとは? おいしい上に海洋資源を守れる理由
日本人はよく魚を食べる
日本人はよく魚を食べるといわれています。
日本列島の周りは海に囲まれており、新鮮で多様な海洋資源が豊富です。焼き魚など熱を入れる魚料理はもちろんのこと、本格的に生食されており、寿司や刺身は日本の食文化の根幹を形成しています。
このような日本で、海洋資源が枯渇するようなことがあっては一大事。
海洋資源は無限ではありません。魚介類が増える量よりも多くの量を獲ってしまえば、減っていくことは火を見るより明らかです。
そうなってしまえば、海洋資源の持続は不可能になります。つまり、いずれ魚介類が獲れなくなり、食べられなくなってしまうのです。
サステナブルシーフード
海洋資源のことを考え、持続可能な漁業を行っていれば、その限りではありません。魚介類の存続を考えて獲られた海洋資源のことを、サステナブルシーフードといいます。
サステナブルシーフードは天然と養殖に分けられ、天然ものがMSC(Marine Stewardship Council=海洋管理協議会)の認証制度を、養殖ものがASC(Aquaculture Stewardship Council=水産養殖管理協議会)の認証制度を用いています。
MSCやASCで認証された水産物を食べていれば、海洋資源は枯渇しません。
ただ、残念ながら、まだ日本ではこのような認証制度で認められた海洋資源を使用している飲食店が少ないです。
パーク ハイアット 東京はいち早くサステナビリティに貢献
食材のサステナビリティを考えた時、特に重要となるのが、ホテルや大手外食企業。なぜならば、食材の消費量が圧倒的に多いからです。街場の個店と比べれば、何百から何千倍と消費していることでしょう。
このような状況で、他に先駆けてサステナブルシーフードを使用し、海洋資源の持続に尽力しているホテルがあります。
そのホテルとは、パーク ハイアット 東京。
26年経っても全く色褪せないホテル
パーク ハイアット 東京はホテル新御三家のうちのひとつと称され、憧れの外資系ホテルの代名詞です。映画「ロスト・イン・トランスレーション」の舞台にもなり、世界から唯一無二のホテルとして根強いファンが押し寄せています。
1994年にオープンし、既に26年が経っていますが、隠れ家的なロケーションと圧倒的に優雅な空間で、今になってもその魅力は全く色褪せません。
料飲施設も充実しており、プロポーズでもよく利用されるレストラン「ニューヨーク グリル」、ダイナミックな器使いと心安らぐ空間を有する気鋭の日本料理「梢」、異国に訪れたかのようなヨーロピアンブラッセリーを彷彿させる「ジランドール」など、個性的なレストランばかり。
サステナブルロブスターを用いたコース
こういった料飲施設と宴会を含めて、ホテル内で使用されている魚介類のうち、平均で約35%をサステナブルシーフードが占めています。
値段も高く、仕入れを安定させるのも難しいことから、サステナブルシーフードを全く使用しないホテルも少なくありません。それだけに、いくつもの大きな料飲施設を有するパーク ハイアット 東京がたくさんのサステナブルシーフードを使用しているのは非常に意義のあることです。
普段から多くのサステナブルシーフードを使用していますが、ちょうど今サステナブルシーフードの魅力をさらに広めるコースを提供しています。
そのコースとは、最上階52階に位置する「ニューヨーク グリル」の「シェフズ ロブスター メニュー」。
2020年10月1日から11月28日にかけて、サステナブルシーフードのロブスターをふんだんに使用したコースが楽しめます。
日本人は甲殻類が大好き
ロブスターということで、日本人と甲殻類について触れておきましょう。
日本人は甲殻類が大好きです。
車海老であれば、体長や重さが小さい順から、小巻もしくは才巻、巻、車、大車と呼び分けており、そのこだわりようがみてとれます。「海老で鯛を釣る」は「小さな労力で大きな利益を得る」ことですが、こういったことわざや慣用句ができたのは、海老が昔から日本人に馴染みがあったという証左。
蟹も非常に好まれており、2018年の初競りでは、ズワイガニに史上最高の1匹200万円という値がつきました。毛ガニやタラバガニも食味のよい食材として認識されており、食通の間では上海蟹のシーズンが訪れると騒がしくなるほど。
しかし、甲殻類の王様といえば、やはり伊勢海老でしょう。
平安時代の文献にも「大海老」として掲載されており、やわらかな肉質と磯の香りをまとった甘味が人々の心を惹きつけてやみません。生食することができ、茹でたり蒸したり焼いたりしてもよく、どのような調理方法でもおいしく食べられる万能な食材です。
そして、この伊勢海老と似ているのが、ハサミのついたロブスター。伊勢海老よりも身に弾力があり、同じような調理方法を用いることができます。
日本で愛されている伊勢海老に近いロブスターは、多くの人においしく食べてもらえることは間違いありません。
コース内容
話を戻しましょう。
「ニューヨーク グリル」で提供されている「シェフズ ロブスター メニュー」の内容は次の通りです。
シェフズ ロブスター メニュー(25,000円、税・サ別)
※「ロブスターテールのポーチ」を除くコース(21,000円、税・サ別)もあり
- サステナブルカナディアンロブスタートースト オリーブオイルキャビアとグリビッシュソース
- ロブスターバロティーヌと北海道産帆立貝のシトラスマリネ キャビアリキャビアと大根のピクルス アボカドコリアンダードレッシング
- サステナブルカナディアンロブスターとサーモンのラヴィオリ スイスチャードのソテーとオゼイユ アメリカンソース
- ロブスターテールのポーチ アスパラガスと小蕪 カラーキャロット ロマネスコ ロブスタームース
- アペロールスプリッツのグラニテとブラッドオレンジソルベ ライム
- 仙台牛サーロインのグリル 椎茸のピューレと和栗 赤ワインソース
- 温州みかんのムース マスカルポーネとバニラのクリーム ヴァローナ ホワイトチョコレートとオレンジパッションフルーツソース
1皿目から4皿目まで全てMSCの認証を受けた天然のカナダ産サステナブルロブスターが使われています。どの部位も無駄にすることなく調理しているところも、フードロスを削減するといったサステナブルな観点から素晴らしいところです。
料理長のポール ガヤフスキー氏は、素材の味わいを最大限に生かし、洗練されたスタイルに仕上げるのが得意。したがって、食味のよいフレッシュなロブスターは、まさにガヤフスキー氏の実力をいかんなく発揮できる素材です。
4皿目まではロブスターで、メインディッシュは黒毛和牛の中で最も肉質等級の基準が高い仙台牛。コースにはワインペアリングも用意されているので、合わせるとさらに楽しめることは間違いありません。
ここからは各メニューを詳しく紹介していきましょう。
サステナブルカナディアンロブスタートースト オリーブオイルキャビアとグリビッシュソース
アミューズは厚みのあるトーストで、ここでもロブスターが使われています。焼かれたロブスターが香ばしく、酸味の利いたグリビッシュソースがよいアクセント。オリーブオイルキャビアが緑の彩りを加えます。
ロブスターバロティーヌと北海道産帆立貝のシトラスマリネ キャビアリキャビアと大根のピクルス アボカドコリアンダードレッシング
ロブスターをバロティーヌにして、もっちりとした身のテクスチャが感じられるように。その上には世界的なキャビアブランドのひとつ「キャビアリ」のキャビアが添えられています。
シトラスビネグレットソースが目の前でかけられ、アジアのニュアンスが加えられているのは面白いアイデア。右にはロブスターの内子を炙って粉末にしたパウダーが振られており、素材を無駄にしていません。
サステナブルカナディアンロブスターとサーモンのラヴィオリ スイスチャードのソテーとオゼイユ アメリカンソース
大きなラヴィオリの中にはロブスターがたっぷりで、その横に添えられているのは、甘味のある大きなツメ。ラヴィオリの下には滋味のあるスイスチャードが忍ばされています。ロブスターと相性抜群の香ばしいアメリケーヌソースを合わせ、アクセントにはオゼイユやマイクロトマトを。
ロブスターテールのポーチ アスパラガスと小蕪 カラーキャロット ロマネスコ ロブスタームース
ロブスターの尾は優しくボイルされ、品のある食味としっかりとした食感に仕上げられています。真ん中にあるビスクはフォーム状になっているので、口当たりが非常に軽やか。右にはロマネスコやカブ、ズッキーニなど様々な野菜を添えて、海の幸と山の幸でバランスがとれています。
仙台牛サーロインのグリル 椎茸のピューレと和栗 赤ワインソース
仙台牛は、肉質等級5が保証された唯一の黒毛和牛。その仙台牛のサーロインが用いられているので、和牛香と脂を存分に堪能することができるでしょう。
赤ワインソースにトリュフと合わせたソース ペリグーは肉料理の定番ですが、シイタケのピューレや和栗といった秋の和食材を合わせ、旬の趣を感じさせています。
温州みかんのムース マスカルポーネとバニラのクリーム ヴァローナ ホワイトチョコレートとオレンジパッションフルーツソース
ホワイトチョコレートの三日月型ディスクが目を引くデザート。目の前でオレンジパッションフルーツソースがかけられます。温州みかんのムースは果実味があるので、酸味のあるマスカルポーネとバニラのクリームにぴったり。
開催の背景
サステナブルロブスターのメニューは見た目も食味も非常に印象的ですが、どのような背景で開催されたのでしょうか。
実をいえば、シェフのガヤフスキー氏がサステナブルシーフードのコースをつくるのは初めてでした。しかし、以前からロブスターを使用したスペシャルメニューの案が頭に浮かんでいたといいます。
食材のリサーチや試行錯誤を繰り返していき、メニューが確定したのはプロモーション開始の直前。全てが完成するまでに2ヵ月を要したといいます。
ガヤフスキー氏は「コース全体としてのバランスはもちろん、素材としてロブスターの魅力が生かせるようにした。ひとつの食材を追求することの喜び、面白さを感じながら取り組んだ。味わい、仕込み方法、提供温度など全てに配慮しながら、クリエイティビティを発揮できたと思う」と自信を覗かせます。
特にこだわった料理は4皿目の「ロブスターテールのポーチ アスパラガスと小蕪 カラーキャロット ロマネスコ ロブスタームース」。その理由については「見た目も非常に華やかで、ロブスターそのものの味わいをしっかりと堪能できる」と説明します。
今後の取り組みについて尋ねると「他のサステナブルシーフードも積極的に使っていきたい」と力を込めるので、新しい食材によるサステナブルシーフードのメニューを期待してもよさそうです。
日本の若者もサステナブルシーフードに関心
MSC(海洋管理協議会)が世界規模で実施した調査では、3人に1人が水産資源を守るためにサステナブルシーフードを選びたいと回答。日本では18~24歳が他の世代よりも意識が高いということも紹介されています。
日本でもサステナブルシーフードへの関心が高まっている中で、パーク ハイアット 東京のように影響力のあるラグジュアリーホテルが、海を守る行動をとっているのは非常に価値があることです。
膨大な魚介類を消費するホテルや大手外食企業が積極的にサステナブルシーフードを用いるようになり、多くの消費者がこれを食べるようになれば、必ずや海洋資源も回復していき、魚介類を礎とする日本の食文化も引き続き紡がれていくのではないでしょうか。