Yahoo!ニュース

「学校に行きたくない」と子どもが言い出した! 不登校にどう対応?

親野智可等教育評論家
筆者提供

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、どうしたらいいのでしょうか?まず大事なのはとにかく親が落ち着いて冷静になることです。これはどれほど強調しても足りないくらい大事です。

親が焦ってパニックになったり感情的になったりすると、いいことは一つもありません。思考力が落ちて的確な判断ができなくなりますし、ひどい言葉を口走ってしまう可能性も高まります。

親のそういう姿を目の当たりにすることで、子どもの方も感情的になったりよけいに落ち込んだりすることもありえます。ですから、深呼吸などしてつとめて冷静になってほしいと思います。

強制的に行かせることにはリスクがある

こういうとき、焦りもあって「何を言ってるの。行かなきゃダメでしょ」と叱って強制的に行かせようとしがちですが、これには大きなリスクがあります。

例えば、無理に登校させられた結果、子どもが学校で非常に苦しむ可能性があります。また、家に安心していることもできないということで、子どもが居場所や逃げ場所を失ってしまうこともあります。

そして、自分の苦しさを理解しようともしないで強制してくる親に対して不信感を持つようにもなります。

また、「行けば何とかなるよ」「大丈夫だよ。困ったら先生に相談すればいいよ」「嫌なことは嫌って言わなきゃダメだよ」など、一方的に励ましたりアドバイスしたりするのもリスクがあります。

もちろん親には悪気はありませんし、子どものためと思って言うのです。でも、このような一方的な言葉は、精神的にいっぱいいっぱいの状態の子どもにとってはお説教に過ぎません。

そして、子どもは「自分の話は全然聞いてもらえない。この人にはわかってもらえない」と感じて、親に対して不信感を持つようになります。

子どもを責めるのはNG

ですから、まずは子どもの話を「そうなんだ。それは嫌だね」「それは困るね。つらいね」「嫌になっちゃうよね」というように、共感的に聞くことがとても大事です。

親が焦ったりイライラしたりして語調がきつくなったりすると、子どもは話しにくくなりますので、深呼吸して心を落ち着かせ冷静に聞きましょう。

「あなたにも問題がある」「あなたがはっきり言わないからだよ」などと、子どもを責めるのは絶対にやめましょう。

それよりも、「よく話してくれたね。話してくれてよかった。話してくれてありがとう。お母さんとお父さんはどんなことがあってもあなたの味方だからね」という言葉を贈ってあげてください。

話を共感的に聞くことが大事

親が共感的に聞いてくれると子どもは話しやすくなります。たくさん話すことができれば、たまっていたものを吐き出すことができ、それだけでも少し気持ちが軽くなります。また、話している中で、子ども自身が状況や自分の気持ちを整理することもできます。

また、聞いていた親の方にも情報がたくさん入るので、状況や理由が理解できるようになる可能性が高まります。それによって、対応の糸口が見えてくるかもしれません。

同時に、自分の話に共感してくれた親に対して、子どもは「自分の気持ちを分かってくれた。自分の大変さを理解してくれた。受け入れてくれた」と感じ、大きな信頼感を持つようになります。

ただし、子どもが話したくない様子なら、無理に問い詰めたりしない方がいいでしょう。そういう場合は、「何かあったら話してね」「お父さん・お母さんはいつもあなたの味方だよ」と言ってあげましょう。

これによって、親が気にかけていることが伝わります。そうすれば、例えばおやつを食べているときなどに、ふと話し出すこともあります。

子どもから話を聞くだけでなく、他の人の話を聞くことでわかってくることもあります。例えば、担任の先生、元の担任の先生、スクールカウンセラー、保健の先生、友達、友達の親、児童クラブや塾や習い事の先生などです。

「行きたくない」理由

子どもが「学校に行きたくない」というとき、理由としては次のものが考えられます。

・いじめも含めて友達関係

・担任の先生との関係

・担任ではないけど苦手な先生がいる

・集団的な行動が多い学校のシステムそのものが苦手

・勉強が分からない、授業についていけないなど勉強面の悩み

・給食の時間が辛い

・部活動がイヤ

・家庭環境や親子関係の急激な変化(あるいは悪化)による不安感

・生活リズムの乱れ

・発達障害やHSC

・起立性調節障害で起きられない(この場合は受診が必要です)

・漠然とした不安感

過度に原因究明にこだわらない

ただし、いろいろ話を聞いてもなかなかわからないこともあります。子ども自身でもよくわからないことも多いのですから。そこで過度に原因究明にこだわると、子どもがよけい苦しくなることもありますので気をつける必要があります。

不登校を選んだ子は、「みんな学校に行っているのに自分は行ってない。自分はダメな子だ」という自責の念でいっぱいになります。これは実に辛いことです。そういう状態からできるだけ早く解き放ってあげることが本当に大事です。

ですから、とにかく子どもが安心して過ごせる環境作りを最優先した方がいいでしょう。そのためにも、「とにかく登校ありき」で臨むのはやめ世間体なども一切捨てましょう。

そして、その子にとってよりよい環境作り・居場所作りをすると覚悟を決めて、今の状況に正対してじっくり取り組みましょう。開き直ることで道が開けます。

不登校も立派な選択肢

そもそも学校に行くこと自体が人生の目的ではありません。一番の目的は子どもが幸せになること、言い換えると子どものウェルビーイングの実現です。学校はそのための手段・選択肢の一つに過ぎません。

学校に行くのが一つの選択肢であるのと同様に、不登校も一つの立派な選択肢です。リアルもオンラインも含めてフリースクールもありますし、ホームスクーリングもあります。実際、そういう場所の方が伸びる子もたくさんいるのです。

ですから、子どもが安心して過ごすことができる居場所を用意してあげることを最優先しましょう。そこで自分らしく充実した時間を過ごし、自分のペースで学びと成長を続けていけばその子の人生はまったく大丈夫です。

(いつもご愛読ありがとうございます。「学びがある」「わかりやすい」「新しい視点」の三択がこの下に出ていたらポチッとお願いいたします。今後の参考にしたいと思います。「フォロー」していただけるとますます張り切ります)

教育評論家

教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOk』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Instagram、Threads、Twitter、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。オンライン講演も可。お問い合わせは親野智可等の公式サイトから

親野智可等の最近の記事