色彩のみ商標がまだ1件も登録されていない件
昨年(2015年)の4月1日から音商標、色彩のみから成る商標、位置商標等の「新しいタイプの商標」が日本でも登録可能になったことは記憶に新しいと思います(参考過去記事)。初日は結構な数の出願が行なわれました。既に登録されたものも数多くあります。たとえば、識別性がある商品名が入った音の商標(たとえば、著名商品のサウンドロゴ)については識別性はほぼ疑いがないので、どんどん登録されています(その一方で、ありものの音楽を使った音の商標は時間がかかっています(参考過去記事)。
興味深いのは「色彩のみから成る商標」については現時点でまだひとつも登録されていないという点です。現時点で470件がすべて審査中です。昨年の4月1日に行なわれた出願に対しては、昨年の暮から今年の1月頃にかけて、拒絶理由通知が出て、それに対して応答が行なわれている状況です。たとえば、一番乗りと推定される久光製薬のサロンパスのパッケージの色味の商標登録出願(商願2015-29831)もまだ審査中です。
商標の審査基準上は、色彩のみから成る商標は(他に明確な拒絶理由がない限り)「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」(3条1項6号)の拒絶理由を通知して、出願人が使用による識別性(消費者等の需要者が「あの色と言えばあの会社」と広く認知していること)を立証を求めいることとなっています。この立証には、出願人は広告宣伝の規模や消費者アンケートの結果等を提出する必要があります。(なので、仮に個人が「色彩のみから成る商標」を出願しても登録される可能性はまずないでしょう。)
要はセカンダリーミーニングがないと色彩のみとしては登録しないという運用で、これはアメリカを含む諸外国と同じです。形状や文字から独立して色のみを商標として独占できる(更新料さえ払えば永遠に独占できる)のは権利としてはきわめて強力なので当然と言えます。
タイミング的にはそろそろ(セカンダリーミーニングを立証できて)登録されるもの、拒絶されるものが出てくると思います(網羅的に調べているわけではないのでひょっとするともう拒絶になっているのもはあるかもしれません)。だいたいどのあたりが認められる境界線なのかが気になるところです。おそらくは、相当高い周知性を確保していないと色彩のみでは登録されない運用にするのでしょう。前述のとおり色のみを独占できるのは権利としては強力なのでハードルは高くしておく必要があるからです。