Yahoo!ニュース

後藤真希がデビュー25周年で13年ぶりの新曲 「苦しいときも自分を俯瞰で見てメンタルは崩れません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
エイベックス提供

1999年、モーニング娘。の『LOVEマシーン』で加入即センターでデビューした後藤真希。25周年を迎え、13年ぶりの新曲としてデジタルシングル『CLAP CLAP』がリリースされた。9月にはミニアルバム発売とアニバーサリーライブも控えている。一時代を築いたレジェンドの現在の想いを聞いた。

『LOVEマシーン』は今観るとよく撮れたなと

――25年前のモーニング娘。の『LOVEマシーン』のMVを今観ると、どんなことを感じますか?

後藤 振りを間違えたままでMVになってますけど(笑)、本当に懐かしいです。2日間かけて、衣装を13着も着ていて。今になって、よく撮れたなと思います。

――CA、デパートガール、OL……といろいろ扮していました。

後藤 それでメンバー1人1人のリップシーンも撮って、相当時間がかかりました。空港まで行ったりもしたし、みんな本当に頑張っていました。

――初めてのレコーディングに関しては?

後藤 つんくさんが一緒にブースに入って、指示を出してくださるんですけど、何を言っているのかわからない(笑)。言われたことを、すぐできないといけないプレッシャーがありました。他のメンバーは慣れているから、「えっ?」となりながら何とかやれているのに、私だけ初めてで、とりあえずやってはみるものの……みたいな感じでした。

――後藤さんはYouTubeチャンネルの「ゴマキ年表」企画を観ていても、記憶力がすごくいいですよね。

後藤 意外と覚えていることは多いです。自分がしたことを、映像も含めて振り返るのがクセになっていて、ドラマや映画も同じ作品を何度も観るんです。そういうタイプなので、たぶん「自分はこうやってきた」というのを覚えてしまうんです。

タイミングはすごく重要でここだと

――『CLAP CLAP』は13年ぶりの新曲となりますが、この13年間でこれまでは、出そうという話はなかったんですか?

後藤 あるにはありました。音楽制作は好きなので、自分でも出したい気持ちはありつつ、タイミングってすごく重要だと思っていて。25周年の今、「ここだ」となりました。

――「歌ってみた」には精力的に取り組まれていましたが、ずっと音楽に触れてはいて?

後藤 音楽を聴いたり観たりはしています。最近はサイトやSNSを含めて、いろいろな曲を気軽に聴けるので、自分の中に入ってくるものは増えました。

――特にハマったジャンルやアーティストもいますか?

後藤 アーティストを追い掛けるというより、たまたま聴いて「この曲いいな」となる感じです。自分の中でちょっと変わった曲を好きになることが多くて。Adoさんの『ギラギラ』もそうでした。「何これ?」から入って「めっちゃいい! 絶対歌ってみたい!」と。日本の曲に限らず、韓国ドラマの主題歌をいいと思って何回も聴いたりもします。聴きたい曲と歌いたい曲で、またジャンルが変わりますけど。

「こういう私を見たいよね?」という楽曲を

――自分でやりたいのは、『CLAP CLAP』のようなダンスミュージックだったわけですか?

後藤 私が絶対にダンスミュージックをやりたかったというより、「こういう私を見たいよね?」という感覚でした。ファンの人たちはたぶん、こんな私を待っていると思って、それならそうしようと。

――アーティストとしての自我を出すより、エンターテイナーの精神で。

後藤 でも、「こう見せたい」というところでは、結構こだわりがありました。ライブで盛り上がって、ファンのみんなとやり取りができそうな曲にしたくて。MVを撮るに当たっても、踊っている雰囲気がいいとか、見え方はすごく考えました。

――デビュー25周年というタイミングもありつつ、自分のやりたい音楽が見つかってリリースした面もないですか?

後藤 そうですね。ミニアルバムには自分の好きな曲だけを詰め込んだ感じです。時代の流れと共に、聴かれる音楽のテイストやイメージはどんどん変わっていて、今の時代に自分が歌いたい、見せたいと思える楽曲を集めました。

――好きなひとつの路線というわけではなくて。

後藤 こんな自分も見たい、あんな自分も……というふうに入れています。でも、踊れる曲は多いかもしれません。

「待ってなさい」とカッコいい見せ方で

――『CLAP CLAP』では、詞にも後藤さんのこだわりが反映されていますか?

後藤 「鈴木と後藤のふたり旅」(鈴木亜美とのトークショーツアー)の新幹線での移動中に、いただいた詞を見て「こういうふうにしてほしい」などとやり取りさせていただきました。

――<あなたごときじゃおちないわ 高い女よ>みたいなフレーズは、後藤さんのイメージからですかね(笑)。

後藤 わかりやすい感じで(笑)。ステージではそこら辺の歌詞で遊べたらいいかなと想像していました。<あの子のがいいの? せいぜい指でもくわえてなって>は、ファンの人たちがあっちこっちに応援に行っているから、「私も新曲を出すから待ってなさいよ」みたいな感覚もありました(笑)。

――普段から「指でもくわえてなって」とか言っているわけではなくて(笑)。

後藤 言いません(笑)。パフォーマンスをするに当たって、こういう見せ方がカッコいい感じになるかなと思いました。

幅が広がったところも見えたらと

――レコーディングはスムーズに行ったんですか?

後藤 どの曲もわりとスムーズでした。『CLAP CLAP』はステージでファンの人たちを前にしている画が浮かびました。

――新曲としては13年ぶりですが、ブランク感はなく?

後藤 新しいオリジナル曲にはなるので、歌い方や表現の仕方、声域も含めて、幅が広がったところも見えたらいいな、というのはありました。ディレクターさんと相談しながら、「こうしよう。ああしよう」と何パターンか録ってみて、もう1回サラッと歌ってみたり。その中で「これかな」というのができていきました。

――英語詞も多いですね。

後藤 英語は苦手なんです。詞を読むのは大変(笑)。でも、歌う分にはリズムとして入ってくるので。

――サウンドに関しても意見を出したり?

後藤 ミックス作業やアレンジが加わるときに「ここはこうしたい」などとお話しして、私の理想を現実にしてもらっています。

棺に入って生まれ変わったイメージで

――ジャケット写真やMVのビジュアル面に関しては、後藤さんのどんなこだわりが入っていますか?

後藤 ジャケットは「棺に入っている写真がいい」と言いました。リボーンとか言い方はいろいろありますけど、いったんリセットして生まれ変わる意味で棺はアリかなと。ミニアルバムの『prAyer』のジャケット写真では、背中に蝶々がいて、全部繋がるストーリーになればいいなと思っています。『CLAP CLAP』のジャケットで棺から始まって、リード曲の『prayer』のMVで蝶々が来て、羽ばたくようなイメージだったり。『CLAP CLAP』のシーンが『prayer』にも出てくるところも、あえて作りました。

――『CLAP CLAP』では水槽の中に入っているシーンもあります。

後藤 バシャバシャやって楽しかったです(笑)。

――ミニアルバムでは作詞もしているんですか?

後藤 してないんですけど、「こういう歌詞にしてほしい」というオーダーは全部の曲に出していて。自分で書いてないのに、書いた気分にはなっています(笑)。

悟りが開き始めた感覚でした

――ミニアルバム『prAyer』も、イメージした通りの作品になりましたか?

後藤 本当にいい感じです。自分の中で悟りが開き始めていると思ったくらい(笑)。私はものごとや自分が進んでいく方向も俯瞰で見るタイプですけど、「この曲は後藤真希に歌わせたらいいね」みたいな感覚になりました。

――prayerというと神様とかに祈るイメージですが、ある意味、自分自身が神様的なところから見ているような?

後藤 祈りの意味もありますけど、自分は今もプレイヤー(player)だよと掛けてもいます。今回は曲だけでなく、25周年のライブまで全部繋がっているイメージ。ライブのビジュアルがベールを付けているので、「女神」とか「お祈りするのかな」みたいなコメントがありますけど、そっちではないんです。私の25年を走馬灯みたいにブワーッと思い出してもらえるライブにできたらと、(ソロデビューシングルの)『愛のバカやろう』がちょっとフラッシュバックする感じで撮りました。

ストーリーとして観てもらえたら

――25周年ライブでは、昔の曲も遡ってやるんですか?

後藤 最近のライブではほとんど歌ってなかった曲も、入ると思います。ファンのみんなには、1曲1曲というよりストーリーとして観てもらえたら、いろいろ考えられることがあるかもしれません。

――9月の開催で、そろそろリハーサルが始まる感じですか?

後藤 ところが、なかなか時間が見えなくて(笑)。新しい曲が7曲あるので、早めに準備したいなとは思っています。

――体力面は問題なさそう?

後藤 不安です(笑)。9月でまたひとつ年を取るので。心配ではあるんですけど、何とかやれるようにしないと。新幹線に乗り遅れそうになったときに、ダッシュで階段を駆け上がったので、やらなければいけないときはエネルギーが出るはずです(笑)。

――普段は運動はしていませんか?

後藤 定期的にやっているのは、ストレッチとちょっとしたヒップアップくらい。お休みの日は本当に休みたいタイプで、ゲームもやりたいし(笑)。家族サービス、自分サービス、体サービスとバランスが難しいです。

人前に出るのは恥ずかしいです(笑)

――改めてですが、13歳で国民的アイドルになると、現実に気持ちが追い付かないような面もなかったですか?

後藤 私は保育園のときにはもう、歌手になりたいと思っていたので。早めに夢を持てていたから、自分で正しい準備期間を得られて、スーッと進めた気がします。子どもの頃から夢があったのは良かったかもしれません。

――これから先の夢もありますか?

後藤 自分がどうなるのかわかりませんけど、今は好きなことが仕事にできているので、いい環境だなと思います。やりたいこと、できることを相談しながら、今後どう形にしていくか、というところです。

――もうアーティストとしての自己顕示欲みたいなものは、あまりないですか?

後藤 人前に出るのは恥ずかしいです。緊張してしまいます(笑)。

――25年間、これだけ人前に出てきたのに(笑)?

後藤 ファンの前に出ていくのと、自分を知ってもらおうとして出るのは、また感覚が違います。これからは新しい私を知らない人のところにも、飛び出していく気持ちがある分、緊張します。テレビで歌うのが一番恥ずかしい(笑)。

――昔テレビにたくさん出ていた頃にはなかった感覚ですか?

後藤 昔もテレビは緊張しました。ライブでは安心してステージに立てる環境作りを、自分でもしていますけど、テレビだと、その日だけ会うスタッフさんとお客さん。落ち着かないまま歌っていました。「本番です」と言われるのが一番イヤ(笑)。一気に心臓がパタパタしてしまうから、知らないうちに始まっていてほしい。

――ともあれ、最近の後藤さんにはYouTubeなどから、若い世代もファンになっているようですね。

後藤 そうみたいですね。25周年企画のひとつのTikTokも、最近いろいろな世代の人が見てくれている感じがします。

冷静だからクールに見えるのかも

――今はメンタル的にも良い状態ですか?

後藤 メンタルはちょっとやそっとでは崩れない感じです。悲しいことが起こっても、自分を客観的に俯瞰で見て「そこまで悲しくないな」という。

――強くなったというより、昔からそうだったんですか?

後藤 そんな感じでした。自分は自分でいるけど、もっと上から見ている自分が大元にいる感覚が昔からあって、案外冷静でいることが多いです。自分のこともだし、人の喜怒哀楽を見て「こんなことで怒るんだ」とか。

――自分が落ち込むことがあっても……。

後藤 「こんなつまらないことで落ち込む?」と思って、過ごしています。もしかしたら、それで私はクールに見えている部分があるのかもしれません。

――夜中に枕を涙で濡らすようなことはないと。

後藤 そうですね。睡眠時間さえあれば大丈夫です(笑)。

――確かに、それくらいでないと、13歳であれだけのことはできなかったかも。

後藤 今考えると、そうかもしれませんね。

見た目は何とかできても体力はキツくて

――年齢を重ねて、価値観や大事にするものが変わってきたところはないですか?

後藤 家族が大事なのは変わりません。仕事では「もうちょっとできたな」と後悔するのがすごくイヤになってきました。ひとつひとつ、達成すべきレベルを超える気持ちでやっています。

――9月で39歳になりますが、40代に入っていくことは意識しますか?

後藤 します、します。女子ですから(笑)。見た目はどうにかこうにか、アンチエイジングを日々頑張っていけば、何とかできそうな部分もあるんです。

――ずっと変わらず、おきれいですもんね。

後藤 スキンケアをしたり、体に取り入れるものをいろいろ気をつけています。でも、体力はどうにもキツい(笑)。階段を上がるだけでも息が切れるし、朝起きたときから疲れています(笑)。「ああ、気持ちいい」みたいな目覚めではないですから。何かあったら治りも遅くて、そういうことが結構響くんです。これからさらに年齢を重ねていったら、パフォーマンスもちょっとセーブしないといけなくなるかもしれません。

――ステージを走ったりはできなくなると?

後藤 そうですね。なぜ昔は、あんな運動会みたいなライブをしていて平気だったんだろう? と思います(笑)。

――そういう衰えに抗っていく気持ちもあるんですか?

後藤 思ってはいますけど、何せすぐ疲れてしまって(笑)。体力を付けようと思って何か始めても、続かないのが悩みです。

ファンの人がいる限り続けていきます

――今後の人生的な展望はありますか?

後藤 この前、加藤茶さんが奥さんと話している動画を観ていて、「宝くじが当たったら」みたいな話になっていたんです。奥さんは「もう散々頑張ってきたから、お仕事をやめて、どこかの国でゆったり老後を過ごせるね」とおっしゃっていたんですけど、加藤茶さんは「俺は一生舞台でバカやって、仕事をしていたいんだよね」と。

――生活のために仕事をするわけでなく。

後藤 そうなんです。私は加藤さんに比べたらまだまだですけど、そういうふうに頑張ろうと思いました。

――後藤さんもアイドルとして一時代を築かれましたが、あとはのんびり暮らして……というモードにはならないと。

後藤 はい。ファンの人たちがいる限り、やっていこうという気持ちはあります。それが一番楽しいですからね。

Profile

後藤真希(ごとう・まき)

1985年9月23日生まれ、東京都出身。1999年にモーニング娘。3期メンバーとして『LOVEマシーン』でデビューし、2002年に卒業。2001年に『愛のバカやろう』でソロデビュー。2009年にエイベックスよりSWEEET BLACK feat.MAKI GOTO名義でデジタルシングル『Fly away』をリリース。2021年に写真集『ramus』を発売し4度重版。2022年に『ザ・マスクド・シンガー』シーズン2(PrimeVideo)で優勝。

デジタルシングル『CLAP CLAP』

配信中
配信中

ミニアルバム『prAyer』

通常盤
通常盤

9月4日発売

初回生産限定盤(CD+Blu-ray+アナログEP盤+フォトブックほか25周年記念特典) 19,800円(税込)

通常盤(CD) 2970円(税込)

後藤真希 25th anniversary live tour 2024~pr∀yer~

9月16日/あましんアルカイックホール・オクト(兵庫) 1部15:00~・2部18:30~

9月21日/山野ホール(東京) 1部14:00~・2部17:30~

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事