オートバイのあれこれ『ツイスティロード最速・YZF-R1』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今宵は『ツイスティロード最速・YZF-R1』をテーマにお話ししようと思います。
今もスポーツバイクファンから絶大な支持を得ているヤマハのYZF-R1。
ロードレースにおいても国内外のレースで活躍しており、特に現行モデルのR1は“レース/サーキット向き”というイメージが強いのではないでしょうか。
ただ、YZF-R1は元々、レースやサーキットでの速さを求めて生み出されたオートバイではありませんでした。
1998年(平成10年)に登場した初代R1は、「ツイスティロード(=ワインディングロード)最速」というテーマの下に開発されたのです。
つまりそれは、峠道で走りを楽しめるバイクを作るということ。
当時はホンダ『CBR900RR』やカワサキ『ZX-9R』など、R1に似たコンセプトのオートバイも少しずつ現れ始めていましたが、そうは言っても当時の大型バイクはまだまだヘビー級のツアラー的モデルが多く、まして1,000cc級のバイクで峠道を楽しむ、コーナリングを追求することに重点を置いたモデルはほとんどありませんでした。
そのようななか、ヤマハは“公道のワインディングを楽しめるリッターバイク”のR1を作り上げたのです。
その方向性がよく分かるのがエンジン内部の設計で、吸気バルブやポートは、先代『YZF1000R』のエンジンと比べ口径が小さくなっていました。
公道前提のR1にとっては、口径を広げてピークパワーを出すより、口径を絞って低中速におけるアクセルの追従性を高めることのほうが重要だったのです。
また、初代R1を語るうえで、スイングアームが長く取られていたことも見逃せません。
同時代の大型スポーツ車のスイングアーム長はだいたい520mm程度が平均的でしたが、R1ではそれよりも60mmほど長い582mmとなっていました。
物理の話は長くなるので省きますが、スイングアームを長く取り、後輪の路面追従性、ひいては旋回性能を高めていたのです。
R1は発売後、そのアグレッシブな外観も相まって人気を博し、やがてヤマハ以外のメーカーもR1に対抗すべく1,000ccのスーパースポーツ(SS)モデルを次々とリリース。
R1が出た頃はまだ750ccのレプリカ系が主流でしたが、R1をきっかけに1,000ccのSSが各社から出揃い、やがて1,000ccのSSが定着していったのでした。
R1は、リッターSSのパイオニアと言える存在なのです。