梅雨末期は大雨による大きな被害が起こりやすい時期
7月6日現在,本日も各地でまとまった雨が降り続いています.7月4日には熊本県南部で大雨が降り,大きな被害が生じていますが,これは九州南部に固有で特別な現象が生じたということではなく,全国各地で起こりうるものです.また,梅雨末期にはこうした大雨が起こりやすく,過去にも大きな被害が繰り返し発生しています.
多くの犠牲者を生じた風水害は梅雨末期が多い
表1は,理科年表(国立天文台編)に収録の資料を用いて,1960年代以降に日本で発生した風水害(強風,大雨,洪水,高潮,波浪などによってもたらされる自然災害の総称)で,死者,行方不明者数が多かった事例のうち上位10事例を多い順に並べたものです.なお,こうした災害に関する被害の統計数値は資料によってだいぶ異なる場合があります.様々なまとめ方がありますので,どれが確実に正しい数字か,といった議論は難しいものがあります.ここでは,同一の情報源で数値を比較するために,この資料を用いているものです.
表1のうち,梅雨期にかかわると言ってよさそうな災害は5事例ありました.表では黄色に塗っています.これらの災害時の死者・行方不明者数は上位に多く,上位1位から4位まではいずれも梅雨時の事例でした.風水害(あるいは洪水・土砂災害と言い換えてもよいですが)というと,台風によってもたらされるもの,というイメージがあるかもしれません.無論,台風による風水害も多いのですが,梅雨前線など,台風以外の被害が多いことも過去の記録からは現実として読み取れます.
また,これらの梅雨期の大きな災害の発生時期が,いずれも6月末から7月にかけてであることも読み取れます.梅雨の期間は地域により,また年によっても異なりますが,本州付近ではおおむね5月下旬~7月下旬の間と言っていいでしょう.梅雨期は全体に雨が多いとは言えますが,なかでも,大きな災害に結びつく大雨は,梅雨末期(これも地域や年によりますがだいたい6月下旬~7月下旬)に発生しやすい傾向がある,と言っていいでしょう.
梅雨末期の大雨で被害を受けた地域の最近の様子
冒頭に挙げた写真は,1982年7月23~24日にかけて発生したいわゆる「長崎大水害」で大きな被害を受けた長崎市内の中島川という河川です.「長崎大水害」は表1では「昭和57年7月豪雨」に含まれる災害で,この豪雨による死者・行方不明者の多くは「長崎大水害」によるものといっていいでしょう.中島川には,よく知られた眼鏡橋をはじめ,アーチ型の石橋がいくつもありましたが,「長崎大水害」により大きな被害を受けました.災害後に,これらの石橋を撤去して河川を拡幅することも考えられましたが,結果的にはもとの形に修復し,河川についてはもとからある河川の両側に地下水路を建設して,洪水時に流れる水の量を増やす対策が行われました.写真は,その地下水路の出口を下流側から見たものです.
下の写真は,表1中の「昭和47年7月豪雨」で,大規模な斜面崩壊が生じた高知県香美市繁藤地区の最近の様子です.写真左手に見えている斜面のほとんどの部分が崩壊したようです.この場所だけで,60人の犠牲者が生じました.香美市の「広報香美」2012年7月号に当時の様子がよくまとめられています.
このように,過去には梅雨末期の大雨で大きな被害が繰り返されています.梅雨前線の活動に伴う雨は,台風と異なり数日前から危険性を予想し,備えることがなかなか難しいという特徴があります.ただ,いつ,どこで,を正確に予想することは難しいですが,普段とは状況の異なる大雨が起きそうな場合,そのおよその場所や時間帯については,気象庁から「全般気象情報」という形の情報が出されることが多くなっています.
7月6日現在,これからしばらくがまさに「梅雨末期」です.ハザードマップ等で身の回りの災害の危険性を確認し,その上で刻々と変化する気象情報を活用することが大変重要になっていると思います.