ブレグジット:英世論調査でジョンソン首相待望論高まる(上)
英国のテリーザ・メイ首相が昨年11月にEU(欧州連合)と最終合意した英EU離脱協定案の議会承認が今年に入って3度も拒否されたことから、メイ首相は与党・保守党内での求心力を失い、ついに5月24日、政治責任を取り、6月7日付で党首を辞任すると発表した。これに伴い、事実上の次期首相を選ぶ保守党の党首選挙が6月13日から10人の候補者が乱立する中でスタートし、通算5回目の予備投票(6月20日)の結果、ようやく大本命とされるEU強硬離脱派のボリス・ジョンソン前外相と、自ら「負け犬」と公言しながらも一発逆転を狙うEU残留支持派のジェレミー・ハント外相の一騎打ちとなることが決まった。
保守党議員313人が参加した5回目の予備投票では、ジョンソン氏が160票と、断トツでトップとなり、次いでハント外相が77票で次点となった。もう一人の有力候補のマイケル・ゴーブ環境相は75票と、惜敗し党首選から外された。今後は上位2人のうち、全国の保守党16万人の党員投票で過半数の支持を獲得した者が勝者となる。新党首は7月22日に発表され、翌23日にはメイ首相に代わる新首相が誕生するが、最近の世論調査ではジョンソン首相の下でのEUからのノーディール(合意なし)離脱待望論が高まっている。
英国の政治情報サイト「ポリティコ(Politico)ヨーロッパ」は6月20日付の記事で、党首選の見通しについて、「さまざまな世論調査でジョンソン氏が次期党首、また、首相として最も望ましいとなっている」と指摘し、ジョンソン氏の勝利に太鼓判を押す。英紙デイリー・テレグラフも同18日付で英市場調査会社ユーガブの世論調査(6月11-14日実施)を引用し、「保守党の党員はジョンソン氏が最も望ましいリーダーとしている。次期党首は喜んでノーディール(合意なし)でもEUから離脱することは間違いない」と報じた。この世論調査では離脱支持の党員の83%が、また、残留支持の党員でさえ68%がノーディールを支持した。これは16万人の党員が上位2人の決選投票でジョンソン氏に軍配を上げる根拠となる。
ポリティコはジョンソン氏とハント氏のブレグジット(英EU離脱)の立場の相違について、「ジョンソン氏はEUと協議しディール(合意)を目指すが、ノーディールでも10月末に離脱するとしている。一方、ハント氏はEUと何らかのディールに近づけば、10月末の離脱日を延長するというのが立場だ。両者ともメイ首相の離脱協定案についてEUと再協議すると公約しているが、焦点となる北アイルランド国境のハードボーダーを回避するための、いわゆる、バックストップ条項の破棄については、EU首脳は完全否定している」と指摘する。これは英国がEUと再協議しても再びバックストップ条項がネックとなりディールが難しいことを意味する。そうなれば、ジョンソン氏はノーディール・ブレグジット(合意なしのEU離脱)を選択し、他方、ハント氏は離脱日をなし崩し的に延期し、最後はEUが渇望しているノーブレグジット(離脱取り消し)になりかねない。(続く)