2020年度税制改正は「裏年」だったか
令和2年度税制改正大綱は、12月12日に与党決定、20日に閣議決定されて決着した。
令和2年度税制改正大綱を取りまとめる過程では、当初、2019年は大きな税制改正案件がない年(裏年)と言われており、改正論議はあまり注目されないと思われていた。税制改正論議では、2年に1度、大きな税制改正案件がある年(表年)と裏年が交互に訪れる。表年には、期限が切れる税制優遇措置の延長拡充や廃止をめぐって、関係業界も巻き込んだ税制改正論議に熱が入る。そこで認められた優遇措置は、大半が2年間の時限措置となるため、再び2年後に措置の改廃をめぐって議論となる。
2019年は裏年とされていた。しかし、9月の内閣改造、自民党役員人事で、甘利明氏が自民党税制調査会(税調)の会長に就任して、にわかに税制改正論議に注目が集まった。甘利税調会長が何か仕掛けてくるかもしれないと。
最終的には、5G(第5世代移動通信システム)の投資促進や大企業のオープンイノベーションの促進を対象とした減税措置や、未婚のひとり親に対する減税措置などが盛り込まれることで決着した。
年の暮れが迫ってから、今般の税制改正論議を振り返った記事が連日報じられている。
令和2年度税制改正大綱に向けた税制改正論議は、盛り上がりを見せた。
では、裏年の前評判は払拭できただろうか。
前掲した5Gの投資促進への税制優遇には、130億円の減税措置(平年度ベース、以下同様)、オープンイノベーション促進への税制優遇には、150億円の減税措置。
これらは、意義あるものではあるが、過去の税制改正でみる金額に比べると小幅といえる。
第2次安倍内閣以降の各年度の税制改正で措置された増減税策を、税目別に集計すると、次の表のようになる。
これらは、各年度の税制改正大綱に盛り込まれた増減税策に伴う税収影響額をみたものであり、税制改正が実際に行われた年度での増減収額ではない。ちなみに、消費税率引上げは、税制改正大綱で決まったものではないため、その影響額は表中には含まれていない。
令和2年度税制改正大綱に盛り込まれた減税措置は合計で486億円、増税措置は579億円、差し引きして増減収は80億円の増税となる内容だった。増税措置の中には、大企業の交際費を非課税にする(損金算入する)措置を止めたことが含まれる。
この増減収の規模は、第2次安倍内閣以降で最少だった。ほぼ税収中立といってよい。差し引きすると規模が小さくみえるので、減税措置と増税措置のそれぞれの合計額でみても、やはり他の年度よりも規模は小さい。
2年前の裏年である2018年度(平成30年度)税制改正大綱では、減税措置は合計で3174億円、増税措置は5888億円、差し引きして増減収は2714億円の増税となる内容だった。
表からうかがえる金額でみると、2019年の税制改正は、やはり裏年だったといえそうだ。