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ENEOSの大復活、ジェイプロジェクトの大躍進、ハナマウイって何だ? 都市対抗の32代表が決まる

横尾弘一野球ジャーナリスト
九州第二代表決定戦に勝ち、2年ぶり5回目の都市対抗出場を決めた西部ガス。

 10月16日、しんがりで西部ガスが九州第二代表に名乗りを上げ、第91回都市対抗野球大会に出場する32チームが以下のように出揃った。

第91回都市対抗野球大会出場32チーム一覧
第91回都市対抗野球大会出場32チーム一覧

 7月5日に埼玉と滋賀で都道府県単位の一次予選が始まり、12地区に分かれた二次予選は9月1日に開幕。その日、近畿二次予選一回戦で名門・日本生命が創部8年目のカナフレックスに延長12回の末に敗れると、例年以上に各地で新鋭の台頭や古豪の復活が見られた。カナフレックスは、日本製鉄広畑にも競り勝って準決勝に進出。あと2勝で初出場と予選を大いに盛り上げたが、そこから4連敗で惜しくも敗退し、都市対抗予選の厳しさを思い知らされる。

 だが、東海二次予選では2009年から活動するジェイプロジェクトが快進撃を見せる。東海圏を中心に居酒屋チェーンを展開する企業チームは、2012年には都市対抗に初出場。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で、他の外食産業と同様に大きな痛手を受ける。勤務や練習もままならず、大石大二郎監督が退任するなど、チームは危機的状況に立たされたが、予選前に活動を再開すると、練習不足を補って余りある闘志を前面に出して戦い抜き、見事に第五代表の座を手にした。

 西関東では、前人未到の大会通算100勝に王手をかけながら、東京ドームから遠ざかっていたENEOSが、6年ぶりに復帰した大久保秀昭監督の下で5年ぶり50回目の出場。一回戦で偉大な記録を達成できるか注目したい。また、来年に4チームから2チームへの統合・再編が予定されている三菱重工グループは、近畿で三菱重工神戸・高砂、西関東で三菱パワー、東海で三菱重工名古屋が相次いで敗れたものの、中国で三菱重工広島が第一代表を勝ち取り、有終の美を飾るチャンスを得た。さらに、第二代表の三菱自動車倉敷オーシャンズは、クラブ化されて倉敷オーシャンズとなった2004年以来の大舞台。16年ぶりは出場チーム中最長ブランクだが、同チームのOBである森 唯斗(現・福岡ソフトバンク)の実弟・森 祐大捕手が攻守の要となり、本大会でも旋風を巻き起こしたい。

予選初出場のクラブチームが一気の代表権獲得

 そして、究極のサプライズは、南関東第三代表となったハナマウイだ。昨年優勝のJFE東日本が推薦出場で予選にいないとはいえ、Hondaや日本通運と日本一を経験しているチームが鎬を削る地区で代表権を得るのは容易ではない。今回も、日本通運とHondaが第一代表決定戦へ駒を進める。ところが、敗者復活戦一回戦では大波乱が起きた。YBC柏が、2017年に第一代表決定戦に進出しているオールフロンティアを倒すと、ハナマウイが、元・千葉ロッテの渡辺俊介監督が率いる日本製鉄かずさマジックから金星を挙げる。

 この時点で、YBC柏かハナマウイ、あるいは両チームが東京ドームへの切符を手にすることが確定。敗者復活二回戦では1-0でYBC柏が勝ったが、第三代表決定戦ではハナマウイが6-0の6倍返しで初出場を決めた。

「ハナマウイって何だ?」

 SNS上にも、そんな書き込みをいくつか見かけたが、今回の予選に初出場した千葉県富里市を本拠地とするクラブチームだ。デイサービスリゾートハナマウイを運営する江東ケアフルが母体となり、選手の多くも同社に勤務する。2018年に創部されると、その年の第13回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会で優勝した女子硬式野球部に続き、昨年4月26日に社会人野球にも参入。オリックスなどで活躍した本西厚博を監督に迎え、初出場した都市対抗予選でミラクルな快進撃を披露した。

 三菱重工長崎に在籍し、都市対抗の大舞台も経験している本西監督は、バッテリーを中心としたディフェンスからリズムを作る野球を徹底し、企業チームとも対等に渡り合った。東京ドームでどんな試合を見せてくれるか楽しみである。

 そして、今大会の大きなポイントは、10月26日のドラフト会議で指名された選手のパフォーマンスだ。例年なら、ドラフトのあとには日本選手権が開催される。出場チームの中には、翌年の都市対抗を目指して若手を起用するため、プロ入りが内定した選手を温存するケースも少なくない。だが、都市対抗となれば話は別だ。社会人野球の最高峰であり、コロナ禍で今季唯一の全国大会ゆえ、ドラフト指名された選手たちも最後のご奉公が期待される。

 名門の復活、新鋭の躍進、サプライズ出場の伏兵などなど。日本野球の2020シーズンを締め括る大会の組み合わせ抽選会は、10月24日に東京都内で実施される。

(写真=Paul Henry)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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