ベルギー移籍の上田綺世は欧州でどこまで上り詰めるのか。その言葉から海外挑戦のビジョンを読み解く。
上田綺世が鹿島アントラーズからベルギー1部のサークル(セルクル)・ブルージュに移籍することで、クラブ間合意に達したことが、鹿島からリリースされました。ここから渡欧し、メディカルチェックで問題なければ正式に移籍が成立するということで、記者陣の取材に応じました。
上田がベルギーリーグをステップに、欧州の地で活躍するための条件については「鹿島から世界へ羽ばたくストライカー。上田綺世が欧州で活躍する条件」に筆者なりの見解をまとめました。その上で、本人の言葉を通して肉付けできたことがあります。
やはりサポーターも含めて気になるのはJリーグのシーズン中、鹿島は18試合を終えて2位に付けており、上田もトップの10得点を記録。得点王も狙える状況す。しかも、年末にはカタールW杯を控えており、半年を切っての海外移籍というのは当然リスクもあります。
上田は前者の点については「今年はタイトルを獲るチャンスだなと理解していた」と前置きしながら「入団前から強化部の人とは話をしてましたけど、やっぱり自分が結果を出してタイトルに近づくとともにそういう道も出てくるというか、道が開けてくるの自分の中では理解していた」と語ります。
「自分の年齢は世界的にも若くないし、挑戦するタイミングを逃しちゃいけないなというのが一番大きなところです。24歳で、自分の中でも焦りがそろそろ出てくる。海外で最終的にやりたいという気持ちがあったので。自分の中では迷いましたけど、今しかないなという決断です」
それではカタールW杯についてはどう考えているのかというと「特には関係ないです。僕はそこを込みではあんまり考えていない」と答えました。もちろん、それはW杯に興味がいないとか、軽視しているということではありません。そこには上田なりの考え方があると理解できます。
「キャリアとして僕は海外に行きたいという思いがあるので。現状の日本代表を観ても、国内で活躍していても、海外の高い強度の中でやってる選手の方が、出場機会が与えられるのは自然だと思う。仮に国内であと10点取って、シーズン20点取って得点王になったとしても、W杯に出られるという訳でもない」
やはり代表選手として、日頃から欧州の環境で戦っている選手たちが示す強度というのは上田も肌で感じているのでしょう。それは単にJリーグのレベルが高くないということではなく、個人が晒される環境で1つ1つの厳しさを求められる選手たちが、国際試合で発揮するクオリティには異質なものがあるということでしょう。
ただ、上田はベルギーリーグやサークル・ブルージュについても、あまり固定観念を持たず、実際に足を踏み入れて感じるリアルな経験を大事にしていることが分かります。鹿島で築き上げた仲間との関係が一切ない環境で”ゼロベース”の挑戦となることは上田も強く認識していますが、それは国内であろうと海外であろうと、新しい環境に行けば変わらないと主張します。
「自分がどのぐらい通用するか、ベルギーリーグのレベルも分からないですし、最終的に5大リーグというのを含めても、常に挑戦になると思うので。やっぱり今の自分がどのぐらいでいるのかと、もっとこうならなきゃいけないなと見えてからの成長率は自分次第だと思うので、そこは楽しみにしてます」
今持っている自分のありのままを一度ぶつけて、そこで通用すること、足りないことを受け入れて、次の成長につなげていく。上田は「仮に全く通用しなくても、また向こうで違うもがきかたをできれば、また自分の成長につながると思うので。まずはやってみて、そこからどう自分を変化させていくか考えながらできたら、また成長できるんじゃなかと思います」と語ります。
パワフルなシュートとは裏腹に、鹿島では徹底して理詰めにこだわり、ゴールから逆算した動き出しのバリエーションを増やすことで、味方の選手から”阿吽の呼吸”でラストパスを引き出していました。そうした助けが期待できないことは上田も想像は付いているでしょう。しかし、それも含めて固定観念を持たず、自分をぶつける中で壁を乗り越え、切り開いていく。
そうした先に例えば上田もハイレベルなステージとして認識する欧州5大リーグにつながっているのか、そこはチャレンジしてみないと分からないことでしょう。ただ、上田が目指すFWの理想像は具体的にどう言ったプレーというものとはまた別にあるようです。
「どんな環境、時間でも必ず点を取るFWというのが、かなり抽象的ではありますけど僕は理想だと思っているので。そこにより近づく努力はしているつもりですし、そこを理想にして僕はやっています」