オートバイのあれこれ『オフロードバイクの出発点。』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『オフロードバイクの出発点。』をテーマにお話ししようと思います。
日本ではメジャーなカテゴリーではないものの、好きな人はトコトン好きなオフロードバイク。
このオフロードバイクという概念を日本のオートバイ市場へ最初にもたらしたのが、1968年(昭和43年)登場のヤマハ『DT-1』というバイクでした。
今ではにわかに信じ難いですが、実はこのDT-1が登場するより前、日本には純粋なオフロードバイクというものは存在しませんでした。
というのも、1950年代〜60年代の日本はまだまだ道路の舗装率が低く、アスファルト路面ではないガタガタ道(≒オフロード)を走るのが日常だったからです。
言い換えれば、どんな形のバイクでも(クルマでも)、未舗装の道路を走るのが“普通”だったため、《オンロード/オフロード》と区別がする発想が無かったということですね。
そのようななか、ヤマハは果敢にも、未舗装路を楽しむことに特化したオートバイを作ることを決断します。
60年代のモトクロスレースにて活躍していたヤマハのレーシングマシン『YX26』を参考に、頑丈かつパワフルな2スト単気筒エンジン、悪路走破性を追求した極太タイヤ、そして当時の市販車としては異様に長い伸縮幅をもったサスペンションを開発し、日本車として初めての“トレール(山道)バイク”を完成させました。
これがDT-1になります。
DT-1はその車両コンセプトでもって、日本のバイクファンたちに“自然の中をバイクで走る”という楽しみ方(=マウンテントレール)を広く普及させ、70年代にはこのDT-1をキッカケにオフロードブームが巻き起こるまでになりました。
やがてヤマハ以外のメーカーもこぞって市販のオフロード車を開発するようになり、次々とDT-1に倣ったオートバイが出現。
こうしてオフロードカテゴリーが確立され、現代に至っています。
ホンダCBやカワサキZと比べ、世間的にはあまり注目されることのないDT-1。
しかし、オフロード(トレール)という“カテゴリーそのもの”を生み出したことを考えると、その偉大さはCBやZに勝るとも劣らないといっていいでしょう。