韓国メディアは「日本は戦争ができる国へ」一色 衆院選結果受け
自公の圧勝に終わった22日の衆議院選挙。韓国メディアは左右問わず、「日本が憲法改正に向かい、戦争ができる国に向かう」と一斉に書きたてている。その言説を追った。
あらゆるメディアが言及
「改憲派が最低325議席で圧勝…安倍『軍隊の夢』かなうか」(保守系日刊紙・中央日報)
「北風に乗り『戦争のできる国』へと突き進む安倍」(保守系日刊紙・東亜日報)
「安倍、野党分裂・北風に乗り『起死回生』…『戦争のできる改憲』に速度」(進歩系日刊紙・ハンギョレ)
「安倍の改憲が翼を得るか…日本の総選挙で集権与党が改憲発議ラインの310席超える」(進歩系日刊紙・京郷新聞)
「安倍、日本の総選挙で改憲発議線を確保…『戦争のできる国』への改憲本格化」(公営放送・KBS)
「日本の連立与党が312席で圧勝…安倍の『北風強調』が的中」(ニュース専門チャンネル・YTN)
昨日22日の衆議院総選挙の結果を伝える、韓国の主要メディアの論調だ。保守系、進歩系のいずれも、今回の衆院選の結果で信任を得た安倍首相が改憲に向かうと伝えている。
「右傾化」と「北風」
一連の選挙戦を報じる際に、韓国メディアが多用してきたキーワードが「右傾化」と「北風」だ。
「右傾化」については、衆院選の序盤で旋風を巻き起こした小池百合子東京都知事の存在が大きかった。
9条を含む「改憲」を語り、関東大震災の朝鮮人犠牲者への追悼文を断った人物であることを取り上げ、同知事を「極右」と称するメディアもあったほどだ。「安倍首相をおびやかす新勢力も右派であった」という点からの評価といえる。
一方「北風」という用語は日本の市民には馴染みが薄いと思われる。これは韓国の総選挙、大統領選挙などの際に北朝鮮の脅威を煽り立てることで保守層の結集を計るという、韓国で使い古された選挙手法だ。
今回、安倍首相は北朝鮮の脅威を「国難」の一つと位置づけ、北朝鮮への対応は自民党だけが可能という論理で選挙戦を戦った。北朝鮮を利用する手法は「北風」そのものであり、韓国では批判的な見方が多かった。
「日本軍」への憂慮
今後の見通しについて、韓国では「戦争ができる国」に対する憂慮が支配的だ。いくつか引用してみる。
総選挙の圧勝を受け、総理の職を続けていくことになった安倍総理は、選挙の勝利を土台に、自衛隊の存在根拠を憲法に明記する改憲をスピードアップさせるものと見られる。一角では、安倍総理が今後、自衛隊の交戦権を認める方向へと2段階の改憲を推進するとの観測もある。(YTN)
積極的な改憲論者である小池百合子東京都知事が率いる希望の党が、改憲論議において安倍総理の友軍となる場合、戦力の保有と交戦権を認めない憲法第9条2項を削除し「戦争のできる国」に向かおうという主張が力を持つ可能性がある。(国民日報)
韓国の憂慮の背景にあるのは、植民地の苦い経験だ。日本の軍隊は韓国にとってトラウマとなっている。この立場を如実に表したのが、保守系日刊紙・東亜日報と中央日報だ。両紙は共に23日の社説で衆院選の結果を取り上げた。
今後の対応も様々「日本を対中均衡に活用せよ」の暴論も
両社説では、今後の文在寅(ムン・ジェイン)政権への注文も相次いだ。やはり引用してみる。
前者はまだしも、中央日報の意見には首をかしげざるを得ない。日中の軍事大国化がエスカレートする場合、韓国が置かれることになる立場はそんなに甘いものではない。
一方、進歩系日刊紙の京郷新聞もやはり社説「安倍政権の改憲線確保が日本・韓国に落とす影」で日本と朝鮮半島の今後を見通した。
同紙は「安倍首相が改憲を実現に移すかは不透明だ。国民投票で否決される場合、政界からの引退も有り得る」という慎重な見方を示す一方、「今後も北朝鮮の核危機が続く場合、安倍の強硬対応は続かざるを得ない」点を指摘。「北朝鮮問題を共に解決していかなければならない文在寅政府としては、より強硬になった安倍を相手にする課題ができた」とまとめた。