インド洋高温で、この夏は豪雨多発か
新型コロナウイルスの収束が見通せないなか、まもなく大雨シーズン入りだ。インド洋熱帯域の海面水温は基準値より高く、この夏は雨が多くなる可能性がある。人の密集が制限される状況で、避難はどうすればいいのか?
来月にも沖縄は梅雨入り
関東甲信地方から東北地方にかけての広範囲に甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風(台風19号)から半年が経ちました。豪雨の傷跡が残るなか、来月には沖縄が梅雨入りし、今年もまもなく大雨シーズンが始まります。
この夏も雨が多いのでしょうか? 近年は毎年のように豪雨被害が発生し、多くの方が避難を余儀なくされています。
エルニーニョは発生しないが
気象庁は10日、定例のエルニーニョ監視速報を発表しました。この夏にかけて、エルニーニョ/ラニーニャ現象は発生せず、平常の状態が続く可能性が高いです。今や異常気象を引き起こす代名詞ともなったエルニーニョ/ラニーニャ現象ですが、米豪の気象当局もそろって、エルニーニョ/ラニーニャ現象は発生しないとの見方です。
気がかりなこと
それはインド洋熱帯域の海面水温が高いことです。こちらはインド洋熱帯域の海面水温の実況と予測を示した図です。
インド洋熱帯域の海面水温は2019年初めから高い状態が続いていて、この夏にかけても基準値より高いまたは、基準値に近い値で推移すると予測されています。
インド洋と日本の夏
インド洋熱帯域の海面水温が高いと日本にどのような影響があるのでしょう?
インド洋といえば、オーストラリアの森林火災、日本では記録的な暖冬を引き起こしたことで、注目が集まりました。最近の研究ではエルニーニョ/ラニーニャ現象と同じく、インド洋熱帯域の変調が世界規模で異常気象を引き起こすことがわかってきました。
雨が多くなる仕組みを簡単に作画してみました。インド洋熱帯域で海面水温が高いと必然的に対流活動が活発(雲が多く発生する)になります。その影響で太平洋高気圧(夏の高気圧)がベンガル湾からフィリピン付近で強まります。そうなると、高気圧の縁にあたる日本列島には南から大量の湿った空気が流れ込み、大雨や豪雨が発生しやすくなるのです。
新型コロナで避難はどうなる?
気象庁の調査によると、インド洋熱帯域の海面水温が基準値より高いとき、日本では夏の降水量が多くなる傾向があります。こちらの表は地域別にみたもので、夏の降水量が統計的に有意な傾向を示す(赤枠)のは北日本日本海側や東日本太平洋側などです。
もちろん、夏の天候はインド洋だけで決まるわけではなく、可能性のひとつとして考えています。そして、もうひとつ気がかりなのが新型コロナウイルスの動向です。
緊急事態宣言が解除された後も、人が集まることは制限されるでしょう。でも、ひとたび雨が強まれば、避難を余儀なくされます。大雨シーズンまであまり時間がありません。これまで経験したことのない状況で夏を迎えることを危惧しています。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.331)、2020年4月10日
気象庁:インド洋熱帯域が高温時の日本の天候の特徴
オーストラリア気象局:ENSO Wrap-Up、Current state of the Pacific and Indian oceans、31 March 2020
NOAA(米海洋大気局):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、9 April 2020