線状降水帯の発生 約7割が予想なし
台風21号から変わった低気圧の影響で、2日未明、長崎県北部に線状降水帯が発生しました。今年発生した線状降水帯はこれで12事例目(注1)です。
今年は線状降水帯の発生予想が複数の都府県をまとめた地方予報区単位から府県予報区単位に細分化されました。
しかし、前もって線状降水帯の発生が予想されていた事例は4つに留まり、この長崎県も含めた8事例は線状降水帯発生の可能性を伝える呼びかけは行われませんでした。約7割は想定外の発生だったのです。
なぜ、線状降水帯は予想できないのか
線状降水帯とは、その名のとおり発達した雨雲が線状に連なる現象のことで、停滞性が強いことから、大雨被害が発生する危険性が非常に高い気象現象です。
線状降水帯の予想が難しい理由のひとつに発達した雨雲が幾重にもかかる複雑な構造があります。さらに、雨雲が停滞するか、しないかの予想も難しい。
最新鋭の気象レーダー、静止気象衛星データ、船舶を使った海上データなど多種多様な気象観測データを駆使して、予測を行っていますが、今なお適中率は25%程度です。
今年9月、能登半島を襲った豪雨も、予想されていなかった線状降水帯によるものでした。線状降水帯は発生してから消滅するまでわずか3時間、その間に輪島市には9月一か月分に相当する雨(220.0ミリ)が一度に降ったのです。
2029年「いつ、どこで」予想可能に
線状降水帯の予測精度向上は今後も段階的に進められる予定です。その切り札として期待されているのが次期静止気象衛星です。
湿った空気の流れを立体的に観測するセンサーを搭載予定で、線状降水帯を形成する雨雲をより正確に予測できるようになります。
次期静止気象衛星の運用が始まる2029年には線状降水帯の雨雲予想がマップ形式で見ることができるようになるとのこと。そうなれば、線状降水帯がいつ、どこで発生するのか、ひと目でわかるようになります。
(注1)顕著な大雨に関する全般気象情報の「1号」ごとに1事例として数える
【参考資料】
気象庁ホームページ:線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけと実際の状況等について(速報)、令和6年の実績(令和6年9月30日時点)
気象庁:令和7年度気象庁概算要求概要、2024年8月27日