惑星防衛ミッション「Hera」が遂に打ち上げ、小惑星に体当たりした探査機の衝突跡を観測に向かう
2024年10月7日、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「Hera」が打ち上げられました。本記事では、惑星防衛ミッションであるHeraの詳細をはじめ、小惑星体当たり実験DARTまで解説していきます。
■160メートルの小惑星に体当たりミッション「DART」
小惑星探査計画「Hera」は、NASAが実施した小惑星体当り実験「DART」と連携した史上初の惑星防衛ミッションです。この二つの実験により、将来地球に衝突する小惑星が現れた時に、地球を守る手段をあらかじめ実証しておくことを目的としています。
まず、2021年に先行してDARTが打ち上げられました。DARTのターゲットとなるのは直径は160mのディモルフォスという天体です。ディモルフォスは、直径780メートルほどのより大きな小惑星ディディモスのまわりを回っている衛星なのです。
そして2022年、DARTは約900万倍の重さである小惑星ディモルフォスに、秒速6.6kmという猛スピードで体当たりをしました。ここまで聞くと映画アルマゲドンのように、ディモルフォスが粉々に破壊されることを想像されるかもしれません。実際は、衝突によりディモルフォスの周回軌道を少しだけ内側へ変更できたかを確認します。
そして、地球上の望遠鏡による観測により、ディモルフォスの公転周期を32分短縮することに成功したとのことです。これは、想定の25倍以上の結果でした。ちなみに、小惑星の軌道を変えてしまったら、地球へ衝突する恐れが生じるのでは?という疑問があると思います。ご安心下さい。衝突後のディディモスの軌道は地球の軌道とは交差しないと予測されており、実際の脅威になることはないと考えられています。また、DARTの体当たりではディモルフォスを破壊することまではできず、変化後のディモルフォスの軌道はディディモスに近付くことになるといい、ミッションによる万が一の事態も考慮して慎重に計画されていることが伺えます。
■Heraは衝突時に形成されたクレーターを観測する
そして今回打ち上げられたHeraは、DARTが衝突したディモルフォスの正確な調査を行うことを目的としています。ディモルフォスに3年かけて移動し、2027年に到着する計画です。その後、DARTの衝突による軌道や自転の影響を詳細に観測し、衝突時に形成されたクレーターの大きさを観測します。
そして、実はJAXAも本計画に協力しています。小惑星探査機「はやぶさ2」をはじめとして、日本の様々なミッションで熱赤外線カメラが使用されています。Heraにも同様のカメラを搭載し、小惑星の物質や熱特性などを調べることで、ディモルフォスの形成過程の解明に迫ります。
到着まで3年間待たなければなりませんが、DARTが形成したクレーターがどんな形なのか、撮影画像が楽しみですね。
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