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食欲ない時の夏の「温泉ごはん」はこれだ!【喉越し良く、消化にいい栄養食】

山崎まゆみ観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)
佐賀県嬉野温泉「椎葉山荘」の露天風呂(「椎葉山荘」より提供)

今年の夏は酷暑だ。暑さによって体力を消耗し、食欲もわかない方もいるだろう。

こうも暑いとのど越しいいごはんを求めるし、消化の良いごはんならなお良し。

佐賀県嬉野温泉名物「嬉野温泉湯どうふ」

嬉野は美肌の湯で知られ、全国から女性がやってくる。温泉街の中心を歩いて3分ほどで豊玉姫神社があり、なまずが肌の病にご利益があるということで美肌の神様のなまずが祀られている。

旅館に入り、温泉に身を委ねる。両手で湯を持ち上げてこするとつるるんっとする。温泉に浸したタオルを顔にのせて、毛穴を広げ、温泉ミネラルの浸透を待つ。

泉質は重曹泉。台所回りの洗剤で使うあの重曹と同じで、汚れをきれいに落とす効果はもちろん肌にも作用し、角質や皮脂の汚れも流して綺麗にしてくれるのだ。さらに保湿力のあるナトリウムも含むから、嬉野は万能の湯。湯上りは一味違う。弾力が増す感じだ。肌色がワントーン明るくなった気がする。

佐賀県嬉野温泉「千湯楼」の露天風呂(筆者撮影)
佐賀県嬉野温泉「千湯楼」の露天風呂(筆者撮影)

さてさて、お楽しみの夕食では、名物「嬉野温泉湯どうふ」がたまらなく好きだ。

温泉を注いだ鍋に、とうふを浮かばせて火にかけると、とろとろな湯どうふになる。重曹が入った温泉がとうふを溶かす。いずれにしても良い仕事をする重曹だ。

とうふが溶けだした汁は豆乳でそもそも栄養価は高いが、温泉湯どうふは温泉のミネラル成分も入っているため、その効果も倍増。湯どうふのとろとろ感を楽しみ、汁もググッと飲み干す。1滴も無駄にしない完全な栄養食である。

佐賀県嬉野温泉「和多屋別荘」でいただいた「嬉野温泉湯どうふ」(筆者撮影)
佐賀県嬉野温泉「和多屋別荘」でいただいた「嬉野温泉湯どうふ」(筆者撮影)

鍋に温泉がなみなみ入っていて、四角いとうふが浮いている。火をかけて2分、3分、5分を過ぎたくらいにとうふの角が取れる。

あつあつのとうふに刻んだネギと鰹節をたくさんのせてタレをつけ口の中へ。

とろろんっと、とけてゆく。

箸で持ち上げられないやわらかさ。とうふを食した後に、タレとご飯を入れてつくる豆乳雑炊も、またまろやかで滋養料理だ。

あつあつの湯どうふを「ふぅふぅ」言いながら口にするのが一般的だろうが、案外、冷めてからでも美味。

「嬉野では洗濯も温泉を使っていたし、料理にも使用していた。ふと、湯とうふにも温泉を使った時に、あまりのとろけ具体に驚いた。食べてみるとクリーミーでやわらかい。そこで名物となった」と、かなり前に嬉野の人から聞いたことがある。 

旅館によっては朝食で湯どうふを出すところもある。タレの種類はいろいろで、ゴマダレもあれば醤油ダレもあり、そのあたりは旅館の特色が出る。 

佐賀県嬉野温泉「大村屋」の朝食にて(筆者撮影)
佐賀県嬉野温泉「大村屋」の朝食にて(筆者撮影)

佐賀県嬉野温泉「大村屋」の朝食にて(筆者撮影)
佐賀県嬉野温泉「大村屋」の朝食にて(筆者撮影)

※この記事は2023年4月に発売された『温泉ごはん 旅はおいしい!』(河出文庫)から抜粋し転載しています。

観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)

新潟県長岡市生まれ。世界33か国の温泉を訪ね、日本の温泉文化の魅力を国内外に伝えている。NHKラジオ深夜便(毎月第4水曜)に出演中。国や地方自治体の観光政策会議に多数参画。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)としてインバウンドを推進。「高齢者や身体の不自由な人にこそ温泉」を提唱しバリアフリー温泉を積極的に取材・紹介。『行ってみようよ!親孝行温泉』(昭文社)『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』(潮出版社)温泉にまつわる「食」エッセイ『温泉ごはん 旅はおいしい!』の続刊『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)が2024年9月に発売

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