ダークホース西田拓也五段(33)王将リーグ4勝1敗でトップ快走! 佐々木勇気八段(30)にも快勝
11月4日。東京・将棋会館において王将戦リーグ▲西田拓也五段(33歳)-△佐々木勇気八段(30歳)戦がおこなわれました。
10時に始まった対局は15時48分に終局。結果は73手で西田五段の勝ちとなりました。
西田五段はリーグ4勝1敗でトップを快走。一方、佐々木八段は0勝4敗で陥落が決まりました。
「将棋界でもっと評価されるべき男ナンバーワン」
佐々木八段と西田五段は、公式戦では1度対戦。2024年2月、棋聖戦決勝トーナメント1回戦で、振り飛車党の西田五段は後手で端9筋を突き越したあと、そこから飛車を中段に浮く手法で自在の指し回しを見せ、96手で快勝しています。
熱心な将棋ファンの皆さんにとって、両者の対戦で印象深いのは、ABEMAトーナメントでの5回にわたる対戦ではないでしょうか。そこでは西田五段が4勝1敗で圧倒しています。
2022年の予選リーグでは、西田五段が佐々木七段(当時)に2連勝。チームリーダーの糸谷哲郎八段は「さすがね、将棋界でもっと評価されるべき男ナンバーワンと言われた西田」と語っていました。
今期王将リーグでの西田五段の活躍を予想されていた方は、かなりの棋界通といえるでしょう。
西田五段、三間飛車で快勝
西田五段は先手番の本局、三間飛車を採用しました。
西田「一応予定の作戦で」
居飛車党の佐々木八段は26手目、自身が指し始めた、現代最新の仕掛けで動いていきます。▲高崎一生七段-△佐々木勇気八段戦(2024年8月27日、王位戦予選)では佐々木八段が中盤でリードを奪い、80手で勝っています。
▲高崎-△佐々木戦では28手目、佐々木八段は先に8筋の歩を突き捨てていました。一方で本局では、先に角交換する順を選んでいます。
西田「仕掛けられるところは予定だったんですけど。△7七角成の前に△8六歩じゃなくて、単に△7七角成だったんで。△8六歩▲同銀の手が発生して。(8六)▲同歩のあとを研究してたんですけど。ちょっと手順の違いで、銀で(突き捨ての歩を)取れたので。ちょっといけるんじゃないかなと思ってました」
現在、藤井聡太竜王(王将、七冠)に挑戦中の佐々木八段。居飛車党の強敵を相手に対局が続く中、振り飛車党を相手にすることは比較的少ないという状況でもあります。
佐々木「久しぶりの採用になって。一手一手大事な将棋だったとは思ったんですけど。ちょっと序盤は、ミスをしてしまいましたね。致命傷ではないと思うんですけど、やりたい形がなくなってしまったので。あとはなんかちょっと、指してるだけみたいな感じになってしまって」
佐々木八段は玉側の端からも動き、貴重な一歩を得て、互いの飛車側で攻めを続けます。しかし玉側の香を取らせた代償は大きく、形勢は西田五段がリードしていきました。
西田「相手の仕掛けをとがめることができて、よかったんじゃないかなと思います」
西田五段は佐々木八段の飛車を攻め、取ることに成功します。
西田「飛車が取れたので、ここから間違えなければいけるかなと思いました」
佐々木「(自分の持駒に)歩がないので、攻めが細いので、ちょっと(相手に)余されてるかな、という感じでした」
西田五段は攻防ともに的確な指し手を続け、優位を拡大。73手目、互いの玉から遠い場所にある桂を取ったのも、攻め急がない着実な手でした。
5分考え、攻防ともに見込みがないと見た佐々木八段は次の手を指さずに投了。15時48分と、王将戦リーグでは比較的早い時間での終局となりました。
西田五段、挑戦権獲得に大きく近づく
リーグ初参加の西田五段はこれで4勝1敗です。
西田「運がよかったところも多かったんですけど。はい、もう上出来です。(このまま挑戦を、という思い?)いや、まだそれはないですけど。一応4勝、勝ち越せたので。そういうことも考えながら、ということになるかもしれません」
西田五段は他のリーグ参加メンバーより一足早く5局目を終え、11月20日におこなわれる最終戦(一斉対局)で広瀬章人九段と対戦します。
西田五段の今年度成績は17勝7敗(0.708)となりました。好調のまま、一気に王将挑戦権を獲得しても、不思議ではありません。
佐々木八段は陥落決定
一方の佐々木八段は0勝4敗でリーグ陥落が決まりました。
佐々木「4戦とも、ちょっと直近の指し方とはまた違うような、やや練られた作戦で来られてるんで。それに対応できてない。ちょっと短期間では対応できないんで。そこをどうするかっていうのが課題ですかね。(リーグ陥落)やっぱり昨年より内容がわるいので・・・。やっぱり全戦型の対応力がけっこう求められると思うんですけど。ちょっとそれはまだ実力が追いついてない感じで。ちょっと精度の低い将棋になってる気がします」
佐々木八段の今年度成績は18勝9敗(勝率0.667)となりました。
今年度上半期は絶好調で、竜王挑戦などを決めた佐々木八段。下半期に入ってからは、やや黒星が重なりつつあります。
王将戦リーグでは永瀬拓矢九段、羽生善治九段との対戦が残されています。昨年の最終戦では永瀬九段に勝ち、永瀬九段の挑戦を阻みました。残る2戦にも、もちろん注目です。
西田五段、一次予選参加から挑戦の快挙なるか?
西田五段は今期、一次予選からの参加でした。
二次予選もまた、強敵をなぎたおしての突破でした。
長い王将戦の歴史を見ると、一次予選、二次予選と続けて抜ける例は、そう多くはありません。ここ数年でも、数えるほどです。
ホップ(一次予選)→ステップ(二次予選)→ジャンプ(リーグ)の三段跳びで挑戦を決めた例は、筆者が調べた限りでは、以下の3回しかありません。
1966年度 加藤一二三八段
1985年度 中村 修六段
1992年度 村山 聖六段
そのうち、王将位まで獲得したのは、中村修六段(現九段)ただ一人です。
西田五段も一次予選参加から挑戦という、快挙を達成できるでしょうか。