「昨日めっちゃ食べてたのに…」なぜ猫は急に好きなフードを食べなくなるのか
猫の飼い主の悩みのひとつが、「昨日めっちゃ食べていたのに、今日になれば、見向きもしない」ですね。
「うちの子は、わがままで仕方がない」と思って諦めていませんか? そう思って、同じキャットフードをずっと置いておくと命の危機になることもあります。今日は、猫の習性や行動学を通して、飼い主の悩みを解き放ちましょう。
なぜ、猫は、昨日までめっちゃ食べていたものを急に見向きもしなくなるのか?
飼い主は、猫が満足そうにフードを残さずペロリと食べてくれるのを見ているのは至福のときですね。ネットショッピングでおいしいそうなものがあると「うちのミーちゃん(猫の名前)が、喜んでくれるかも」とニンマリしてポチリます。
しかし、現実問題は、そんなに単純ではないのです。飼い主はこんなはずではなかったと、思っているのかもしれません。悩んでネットで調べるとウエットフードは温めるといいとあるので、そうしてもみてもやはり食べてくれません。
途方に暮れているあなたの悩みを解決していきましょう。いろいろな理由がありますが、主なものは以下です。
食物バラエティー・メカニズム
犬の場合はこの「食物バラエティー・メカニズム」がほとんどないですが、猫では、これを持っている子が多くいます(全部の猫ではないです)。
「食物バラエティー・メカニズム」とは、ひとつの食べ物ばかりに頼っていると、もしそれがなくなった場合、生命の危機に陥るので、そうならないように、多様な種類の獲物を食べるようになっているメカニズムです。
猫はもともと肉食の動物です。たとえば、その地域にいる野ネズミだけを食べていても栄養学的には、なんの問題もありません。でも、自然界では、急にその野ネズミがいなくなる、または少なくなることもあります。気候の変動で食べ物が変わることもありうるのです。そんな場合、その野ネズミしか食べられない猫だと、餓死する可能性がありますね。
野生の猫科の動物は、この1種類の食べものに「病みつき」にならないようにできているのです。このメカニズムを持っている子は、飼い主が、「おいしいそうにキャットフードを食べているな」と思っていても、翌日、「これを食べる雰囲気でないので、いらない」というふうに態度が変わるのです。実に気まぐれで猫っぽいと思われるかもしれません。
しかし、メリットもあります。たとえば、何かの都合で飼い主が変わっても、あそこのあの銘柄しか食べないという風に固執しないから、新しい飼い主が好きなフードを選んでも食べるのです。その他にも同じメーカーのフードだけ食べていれば、同じ添加物も蓄積されますが、違ったフードを食べることで、それが分散されるのです。
猫は、ちょこちょこ食べるのが好き
人の場合は、特に大好物のおいしいものにありつけたときなど、動けなくなるまで食べてしまうこともあります。
一方、猫は、普通はそういうことはしません。野生の猫科の動物は、自然界では狩りをして獲物を仕留めます。猫は、一般的には、ネズミや小鳥などの小動物を食べています。大量の食物をむさぶり食うというのではないのです。一度に多量のフードを入れられると、そんなに食べることはできないので、拒否するのです。
つまり、食べないということは、狩りをする準備が出来上がっていない場合の可能性もあります。こういうときは、時間が経てば食べてくれます。そして、多量にキャットフードをお皿に入れるのではなく、少量を入れてあげてくださいね。
発情期が来ている
不妊去勢手術をしていない猫ではあれば、発情が強いときは、食欲がないです。食べるどころではなく雄も雌も交配したいと思うので、食べ物を受けつけなくなります。
だれか他の人にもらっている
ひとり暮らしではなく、家族がいる場合は、他の家族の人からオヤツをもらっていることもあります。それ以外に、猫を外に出している場合は、近所の猫好きな人に、オヤツなどをもらっている可能性もあります。その辺りも考えてくださいね。
食器の変化によるストレス
気に入っている食器を変えたり、食器が汚れていたりといったことも、デリケートな猫にとっては食欲不振になる場合もあります。
食器のサイズや高さによっては、食べなくなる子もいます。猫の場合は、ヒゲが当たるような容器が嫌いな子もいます。猫にとっては、器も大切なアイテムです。
病気の可能性も
上記の場合は、病気ではありません。しかし、健康だと思っていても、病気が隠れていることがあります。以下です。
・口腔内トラブル
猫は、犬に比べて口腔内のトラブルを持つ子が多いです。いわゆる猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)、猫白血病ウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症などは口内炎や潰瘍ができやすい疾患なので、免疫力が落ちたときに、急に食べなくなる可能性もあります。その他に、もちろん、扁平上皮癌やリンパ腫などの腫瘍が、口腔内にできれば、食欲が落ちて食べなくなります。
・ウールサッキング
ウールは「羊毛」、サッキングは「しゃぶる」という意味です。猫の中には、羊毛だけではなくて、毛布、絨毯、レジ袋、ひも、輪ゴム、段ボール箱など、いろいろなものをしゃぶったり、噛んだり、あげくは食べたりする行動を取る猫がいます。こういう場合は、胃の中などに、異物が詰まっていて急に、食欲がなくなります。普段から、なんでも口にする子は、このような危険性があります。ほうっておくと、命の危険に陥ることもあります。
「子猫に毛布をかけてあげたら命の危険に 知られざる「ウールサッキング」の恐怖とは?」という記事にも書いているので参照してください。
・その他
上記以外の病気ももちろん、考えられます。下部尿路疾患で、オシッコがたまって食べるどころじゃないという場合もあります。1日経っても食べないときは、動物病院へ連れていきましょうね。
「食物バラエティー・メカニズム」への対策
猫を飼ったことがない人は、そんなに急に食べなくなると、びっくりするかもしれません。猫を飼っている人は、あるあるなので、対策をしています。
・獣医師の対策
獣医師は、猫の疾患に応じて処方食を出します。そのとき、猫が食べてくれるといいのですが、食べてくれないと、処方食の意味がなくなります。そのため、味にチキン味、フィッシュ味などの種類を増やしています。犬用の処方食にはそのような配慮はないです。
・飼い主の対策
猫のフードは、犬に比べて、種類が多くあります。味もチキン、サーモン、エビなどいろいろとありますので、飼い主は、急に食べなくなる猫に備えて、複数のフードを揃えておくといいですね。もちろん、処方食もメーカーが違うものをぐるぐると回している飼い主もいます。
それ以外に、バイキング形式に、フードを並べるということしている飼い主もいます。
今日は、このフードを食べてもらおうと思っても食べてくれないと、飼い主のショックが大きいです。
まとめ
全部の猫が、食べ物を好き嫌いするわけではないのです。猫の中には、「ネオフォビア」といわれるものがあります。
「ネオフォビア」とは、これまで接したことのない新奇な環境や体験、初対面の人などに対して、不安や恐れを感じる心理です。つまり「食物バラエティー・メカニズム」とは逆の「新しい味、新しいニオイ」が恐ろしく、受けつけない子もいるのです。
猫にもいろいろな子がいて、全ての子が、急に食べなくなるわけでもないので、飼い主の悩むところです。愛猫は、どんなタイプかを観察して、その子にあったフードを選んであげましょうね。
このように、猫の習性や行動学を知っていると、病気なども防ぐことができます。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】