ピピ中井のレアル・マドリーにおける現在地。高みを目指してゆっくりと、着実に。
大器の予感が漂うのは、確かだ。
現在、レアル・マドリーのフベニル(ユース世代)のCチームでプレーしている中井卓大。11歳でマドリーの下部組織に入団した中井は、その後、着実にステップアップしてきた。
マドリーが早い段階で目を付けた「真珠」だからではない。中井自身が、その時々で、コーチングスタッフからの評価を勝ち取ってきた。
■スペイン代表トリオと核
10月は、スペインで、シーズン開幕から間もない時期である。
マドリーのフベニルCは、20日にホームでビジャヌエバ・デル・パルディージョと対戦した。この一戦に、中井は出場しなかった。その前の週にフベニルAの試合に呼ばれて出場した際に、足首を負傷していたためだ。
このチームの「核」となっているのがブルーノ・イグレシアス、ネストル・ルーカス、イスラエル・サラサルのスペイン代表トリオだ。彼らはスペインU-17代表に呼ばれており、代表でもキャプテンマークとエースナンバーを与えられるほどの選手たちである。
筆者が訪れた試合では、4-4-2の中盤ダイヤモンド型で、2トップの一角にサラサル、トップ下にブルーノ、アンカーにネストルが入っていた。センターラインに中心選手がいることで、チームが非常にうまく機能しているという印象を受けた。
普段、中井はトップ下あるいはボランチでプレーしている。ビジャヌエバ戦で、ブルーノとネストルは際立っていた。その2選手を押しのけて、このチームのセンターラインに入っている。それは驚くべき事実だ。
■道のり
試合は、7-0でマドリーの圧勝に終わった。
2019-20シーズン序盤戦、中井は15歳でフベニルAに呼ばれている。今月24日に、16歳を迎えたばかりだ。
日本では、マドリーが中井とプロ契約を結ぶ可能性が高いという報道が出ている。順調に成長しては、いる。だが決して簡単な道のりではない。
誰もが到達を願うレアル・マドリーというビッグクラブの高みに向けて、中井は挑戦を続けている。その過程で、飛び級、負傷、苛烈な競争と、様々な困難が待ち受ける。
期待を過剰に煽り、才能を潰してはならない。それは、日本サッカーの敗北だ。流暢にスペイン語を話しながら、笑顔で少年と写真を撮る中井を見て、普通の青年として接する大切さを思ったのである。