なぜレアルは“トルコの至宝”を確保できたのか?バルセロナとの競争…若手育成プロジェクトの推進。
将来有望な選手のビッグクラブ移籍が決まった。
レアル・マドリーは先日、アルダ・ギュレルの獲得を発表した。フェネルバフチェに移籍金固定額2000万ユーロ(約30億円)を支払い、ギュレルと新たに6年契約を締結している。
「新加入の選手が到着した時、何万人というマドリーのサポーターが、特別な喜びを感じている。こんにち、我々は現在と未来を強化する。このチームは、クラブ史上、非常に重要な勝利のサイクルを形成している。それは間違いなくレジェンドと選手たちのおかげだ」
「レジェンドの選手たちと一緒に成長してきた若い選手たちがいる。彼らはポテンシャルを示しており、すでに獲得可能なタイトルを全て勝ち取った選手までいる。そういった若手選手のリストに、加わる選手が到着した。当然、ヨーロッパの複数のビッグクラブが彼を狙っていた。素晴らしい才能の持ち主だからだ。アルダ・ギュレル、ようこそ」
これはフロレンティーノ・ペレス会長の言葉だ。
■ギュレル争奪戦が勃発
ギュレルは欧州屈指のタレントだ。そのギュレルに、複数クラブが関心を寄せていた。
とりわけ、強い関心を抱いていたのがバルセロナだ。先にジョアン・ラポルタ会長が「フェネルバフチェと話し合っている」と認めていたように、バルセロナはギュレル獲得に動いていた。この夏にフロント入りしたデコ氏がトルコに赴き交渉を行なっていた。
だが厳しい財政がバルセロナの障害になった。
ギュレルの契約解除金は1750万ユーロ(約26億円)に設定されていた。マドリーは、そこに上乗せをする形で、2000万ユーロ(約30億円)を用意した。さらに、ボーナスの1000万ユーロ(約15億円)を加え、将来的な移籍に際してフェネルバフチェ側に売却値の20%が入るという契約で、合意にこぎ着けた。
また、バルセロナがギュレルのレンタル移籍を考えていた一方で、マドリーはトップチームでのプレーを約束した。少なくとも、プレシーズンでカルロ・アンチェロッティ監督のチームに帯同して、アピールするチャンスが保証されている。
「多くのクラブが、僕に関心を示してくれた。そのうち、いくつかのクラブとは、コンタクトを取っていた」とはギュレルのコメントだ。
「だけど、レアル・マドリーが選択肢に入ってきた時に、ここでプレーできると聞いた時に、全てのオファーの評価が変わった。レアル・マドリーは世界最高のクラブだ。僕を説得するために彼らが言葉を並べる必要はなかった」
■屈指のタレントとエジルの言葉
ギュレルは早くからトルコで注目されている選手だった。
フェネルバフチェは2019年に移籍金25万ユーロ(約3700万円)で、ゲンチレルビイSKからギュレルを獲得している。フェネルバフチェでは、2021年8月に16歳でトップデビューを果たし、2022年3月に17歳で初得点を挙げてクラブ史上最年少得点記録を更新した。
「ギュレルはワールドクラスのスター選手になると思う」
そう語ったのは、メスト・エジルだ。エジル自身、2010年南アフリカ・ワールドカップでブレイクして、マドリー移籍を実現させた。マドリーで172試合に出場して27得点81アシストを記録。ジョゼ・モウリーニョ当時監督をして「エジルは唯一無二の選手だ。彼に似ている選手はいない。彼の劣化版コピーのような選手でさえ存在しない」といわしめたほどである。
■若手に賭けるマドリー
マドリーは近年、将来有望なヤングプレーヤーを確保している。
ヴィニシウス・ジュニオール(移籍金4500万ユーロ/約67億円)、ロドリゴ・ゴエス(移籍金4500万ユーロ)、エドゥアルド・カマヴィンガ(移籍金3100万ユーロ/約46億円)、オウレリアン・チュアメニ(移籍金8000万ユーロ/約120億円)、ジュード・ベリンガム(移籍金1億300万ユーロ/約152億円)と毎年のように若いタレントを引っ張ってきている。
マドリーは若手推進プロジェクトを進めている。その背景には、フニ・カラファト氏の存在がある。ブラジル生まれスペイン育ちの敏腕スカウトが、世界中のマーケットに目を光らせているのだ。ギュレルに関しても、カラファトの眼鏡に適った選手であるため、間違いはないだろう。
目下、気になるのはキリアン・エムバペの去就である。
しかし、そのような状況で、マドリーは迅速に動き、ギュレルの獲得を決めてしまった。この辺りの強(したた)かさが、マドリーの強さをーーチャンピオンズリーグで14回優勝している強さをーー示しているのかも知れない。