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レオナルド、オルンガ、宇佐美、ダミアン、マリノス勢など。いよいよ再開するJ1の得点王争いを予想する

河治良幸スポーツジャーナリスト
レオナルド:YOSHIYUKI KAWAJI

いよいよ本日7月4日に再開するJ1。シーズンの注目選手については「いよいよ再開するJ1で見逃せない注目の7人」にまとめましたが、ここでは得点王争いを予想します。

過密日程や交代枠が5人になることで、絶対的なエースと見られる選手でもフルに出ることが難しくなってきますが、その中で得点数をどこまで伸ばすのか楽しみなストライカーが揃っています。「本命」「対抗」「穴」「特注」「有力」に分けて得点王の候補をリストアップしました。

本命:レオナルド(浦和レッズ)

2018年にJ3ガイナーレ鳥取、2019年はJ2アルビレックス新潟で2年連続の得点王に輝き、J1の浦和レッズに加入してきたレオナルドですが、J1のFWを見渡しても得点感覚が1つ抜けているのと、非常に器用なので、周囲とのコンビネーションを構築しやすいことが理由にあげられます。

身体能力を押し出すタイプに見えますが、実は巧妙な動き出しを最大の武器とする選手で、とにかく相手ディフェンスの逆を取るのがうまいです。しかも、シュート力が高いので、ちょっとした隙があればパンチのあるフィニッシュに持ち込めます。興梠慎三という相手のマークを引き付けてくれる存在がいるのも大きいですが、ネックは浦和レッズのチーム戦術がまだ不十分であることです。

1試合に3回チャンスがあれば確実に1点は決めていく能力はありますが、それだと得点王に届かない可能性もあるので、シーズンの中でレッズの攻撃がより機能してくるかが鍵になりそうです。ただ、PKを蹴る機会が多くなりそうなので、昨年のJ2と同様、そこでオルンガを上回る可能性が高いと見ます。

対抗:オルンガ(柏レイソル)

個人応力はJリーグの規格を超えています。一昨シーズンはJ1を経験していますが、当時は”独り相撲”なところがあり、フリーで外してしまうシーンもしばしばでした。しかし、J2を戦いながら周りのアタッカー陣との関係が構築され、フィニッシュでの落ち着きも加わったことがレオナルドに次ぐ得点数につながったと思います。もちろん最終節の京都戦での8ゴールはありますが、札幌との開幕戦でいきなり良いパフォーマンスを見せられたことで、自信にもなったはずです。

当然マークは厳しくなりますが、柏レイソルはオルンガの他にもクリスティアーノ、江坂任、瀬川祐輔という強力なアタッカーが揃っており、ベンチメンバーも充実しているので、オルンガにばかりマークが行くと結局、他の選手の得点チャンスが増えるだけということが相手側のジレンマになりそうです。それでもチーム得点王になる可能性は極めて高いでしょう。

ネックはPKを蹴らないことで、おそらくそれは継続されると思います。PK無しで得点王に輝いたら、それこそ規格外ですが。

穴:宇佐美貴史(ガンバ大阪)

もともとシュート力は日本人でずば抜けたものがありましたが、やはり欧州挑戦や日本代表での定着を狙う過程で、ディフェンスや周りのサポートなど、色んなことをやろうとしたことで、肝心のフィニッシャーとしての輝が色あせてしまっていた部分がありました。昨年の加入当初もその傾向が見られましたが、宇佐美本人が一念発起してフィニッシュに集中するスタイルに切り替えたことで、終盤にゴールを量産。結果的にガンバの成績も引き上げることにつながりました。

まさしくエースとして臨む今シーズン、開幕戦は優勝候補の横浜F・マリノスを相手にガンバが特殊な戦い方を用いた中で、なかなかフィニッシャーとしての能力を出し切れませんでしたが、大阪ダービーを皮切りに本来のシュート力を発揮できる流れを作れれば、日本人選手の中では最も得点王に近い選手と言えます。

特注:レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)

昨年は明らかにチームにフィットできず、起用法も定まらない中で9得点しており、4ー3ー3という新システムをベースにオープンな攻撃が主体となる今シーズン、元ブラジル代表の決定力をより生かしやすいスタイルで、ゴール数を伸ばす可能性は高そうです。

もう1人のエース候補である小林悠が再開後、数試合を欠場することは川崎フロンターレにとって非常に痛いですが、その分もダミアンが中心になることは間違いなく、その期間に多くのゴール数を取れれば、鬼木達監督もコンディションに配慮はしつつ、ダミアンの起用時間も増えてくると予想できます。

特注:レアンドロ・ペレイラ(サンフレッチェ広島)

ブラジル時代の実績を考えれば当然、得点王争いの上位に顔を出してくる期待が持てる選手です。松本山雅では堅守速攻のスタイルで守備のタスクが多く、ポストプレー後のサポートもなかなか無い状況でゴール前の決定力を発揮しにくかったですが、広島は前からのディフェンスこそ求められるものの、高いポジションで攻め残りでき、さらにラストパスの供給源が多いので、相手がレアンドロ・ペレイラをマークしても的を絞り切れないということがあります。

ドウグラス・ヴィエイラやハイネルと言った外国人選手もチームプレーできる選手なので、そこも大きいです。レアンドロ・ペレイラ自身もフィニッシュの形が豊富で、左右の足、頭を遜色なく使え、シュートの射程距離も長く、角度も広いので、疲労度が高くなるほど対応が難しくなってくると思います。

有力:横浜F・マリノス勢

仲川輝人、オナイウ阿道、マルコス・ジュニオール、エジガル・ジュニオ、エリキ。競馬マイル路線の「ダノン軍団」じゃないですが、5人の得点王候補がいるというのはマリノスの最大の強みであると同時に、誰か1人が突出しにくい理由でもあります。アンジェ・ポステコグルー監督もエースを決めてそこにフィニッシュを集中させるよりは多彩な攻撃からチャンスを作っていくスタイルで、しかもベンチメンバーを含めた豊富な戦力を5枚の交代枠で活用してくると予想できます。

大事なのはチームとして昨年あげた68得点に並ぶか上回る得点数をあげることで、アタッカー陣で二桁得点者が4人、5人と出てくれば連覇の実現も見えてくるはずです。

有力:ディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)

Jリーグ屈指のストライカーであると同時に、優れた万能アタッカーでもあります。怪我さえ無ければ確実に得点数を二桁に乗せてくることが予想できますが、アダイウトンやレアンドロとの関係で3トップの中央だけでなくウィングも担ったり、タスクが多様になる分、永井謙佑と2トップを組んでいた昨シーズン以上にゴール前での仕事が難しくなりそうです。それでもコンディションはすこぶる良さそうなので、長谷川健太監督が優勝の指標として掲げる昨シーズンの46点にプラス10点というところをエースが加えられたら悲願のリーグ制覇も見えてきます。

有力:ドウグラス(ヴィッセル神戸)

資質としてはレオナルド、オルンガに肩を並べるぐらいの実力者であり、イニエスタなど良質なパサーからのアシストが見込めることもありますが、昨シーズンは病気から復帰したこともあり、過密日程の中であまり出場時間を無理させられないという事情はあるはずです。また古橋や小川、TJ、藤本など優れたアタッカーもいるので、ドウグラスひとりに集中するより、良い意味で分散した方がチームの成績は上がるのでは無いかと思います。その上でドウグラスが得点王になるようなことがあれば、神戸の優勝チャンスも出てくると思います。

その他の候補

本命にあげたレオナルドの”最強のパートナー”である興梠慎三(浦和レッズ)、日本代表での活躍も期待される鈴木武蔵(北海道コンサドーレ 札幌)、CSKAモスクワからJリーグに復帰した西村拓真(ベガルタ仙台)と川崎から大分トリニータに期限付き移籍している知念慶を「伏兵」としてあげます。また離脱中の小林悠(川崎フロンターレ)の復帰後のチャージにも期待したいところです。

今回の該当者をあげなかったのは湘南ベルマーレ、鹿島アントラーズ、清水エスパルス、セレッソ大阪、横浜FCですが、湘南の場合はやはり傑出した1人のストライカーより全体で得点を奪うスタイルであることが理由です。もちろんタリク、石原直樹などFW陣の得点が伸びれば成績アップにもつながりますが、浮嶋監督の攻撃スタイルにおいてはインサイドハーフの選手がシャドーストライカー的な役割を果たすのと、アウトサイドの選手もフィニッシャーになりうるので、全体で得点をあげていくことになるはずです。

鹿島はまだまだチーム作りの最中ということで、新外国人のエヴェラウドや伊藤翔、上田綺世、染野唯月と言った優れたストライカーはいるものの、チャンスメイクが完成途上の中で、特定の選手がゴールを量産する流れにはなりにくいと見ています。ただし、再開後の早い段階でビルドアップ、チャンスメイク、フィニッシュの形がうまくハマってくると、もともとポテンシャルは高いだけにザーゴ監督に重用されたFWから得点ランキングの上位に顔を出してくるかもしれません。

清水エスパルスも鹿島に似たところがありますが、ここまでの公式戦やトレーニングマッチを見る限り、清水の大きな課題はディフェンスで、攻撃面に関してはもう少し結果が出るのが早いかもしれません。その中でタイ代表FWのティーラシンがどのぐらいの出場時間を使われるか、評価が上昇中の新外国人のカルリーニョス・ジュニオもチームの攻撃にうまくハマれば、得点王争いの上位に顔を出してくる可能性があります。

セレッソ大阪は筆者が優勝予想にあげているクラブですが、基本的に相手のストロングを消して隙を突いていくスタイルで、ロースコアに持ち込んだ方が勝率が高く、得点王候補を生みにくいチームと言えます。起用法も前線は特にメンバーを固定せず、豊富なタレントを日替わりで起用していく可能性が高く、また先発してもリードすれば5人の交代枠をフル活用してくると思います。

ただし、ブルーノ・メンデス、都倉賢、豊川雄太など個人で言えばランキングの上位に顔を出してもおかしくないタレントはいるので、ケースバイケースなところもあるでしょう。

横浜FCは昇格シーズンで、どうしても相手に主導権を握られる展開が多くなるはずで、FW陣もロングカウンターやセットプレー、セカンドボールなどが主な得点源になって行きそうです。そうなると良くも悪くも特定選手の得点パターンが出来にくいので、個人で得点ランキングの上位に顔を出すのはなかなか難しいと思います。もっとも良質なサイドアタッカーが揃っているので、J1のテンポや強度に慣れてくれば、そうした選手のチャンスメイク力が生きる形でFW陣の得点量産が見込めるかもしれません。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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