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U-23アジア杯から凱旋!Jリーグでさらに輝く”パリ五輪の星”のヒーロー5

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

カタールで行われていたU-23アジア杯でパリ五輪の出場権を獲得し、ファイナルでウズベキスタンに勝利してアジア王者に輝いたメンバーが帰国しました。
さっそく週末のJリーグに出場する選手もいるかもしれませんが、ここからJリーグでさらに輝きを放ち、パリ五輪の本大会につなげる期待がかかる5人のヒーローを紹介します。

山田楓喜(東京ヴェルディ)

インパクトという基準で見れば、大会MVPに輝いたキャプテンの藤田譲瑠チマにも勝るとも劣らない輝きを放ったのが山田でした。

「こういう大舞台で決めるために、今まで苦しいときも、腐らず常に準備しながらやってきた」と振り返るウズベキスタン戦の決勝ゴールは言わずもがな。中国戦で松木のゴールをアシストしたクロス、カタール戦で相手からボールを奪っての左足のゴールなど、幾つもの印象的なプレーを見せてチームを勝利に導きました。

大会直前の柏レイソル戦で決めたドリブルからのゴールなど、今シーズンのJリーグでも3得点を叩き出している山田が、復帰後にどこまで存在感あるプレーで、ヴェルディを躍進に導けるか。左足のキッカーとしても優秀であるだけに、久保建英や鈴木唯人などU-23アジア杯は不参加だった実力者の揃う二列目でも18人に食い込める資格は十分にあるでしょう。

関根大輝(柏レイソル)

大学生ながら柏の右サイドバックでスタメンに定着し、迫力ある攻め上がりや局面で見せる”シズガク”仕込みのテクニックなど、右サイドバックにタレントの多いパリ五輪世代でも、特に目を引くパフォーマンスで、本人も「自分のプレーも出せた、本当にいい大会になった」と振り返るように、そのままU-23アジア杯の活躍にも繋げました。

その一方で、逆側のクロスで相手FWをフリーにしてしまったり、決勝のウズベキスタン戦ではハンドで与えたPKをGK小久保のビッグセーブに救われるなど、守備面で多くの課題が見つかったことも事実。大会で得た経験をいかに、柏に還元して本大会に良い流れをもたらせるか。ここから対戦する相手は要警戒でしょう。

高井幸大(川崎フロンターレ)

チーム最年少で参加しながらセンターバックのスタメンに定着して、攻守に強度と質の高いパフォーマンスを見せました。オフザピッチではおとなしい印象も受けますが、試合では表情を一変させて、獅子奮迅の働きを見せて相手FWを封じ込めました。

またウズベキスタン戦では鮮やかなインターセプトで、山田の決勝ゴールにつなげるなど、攻撃的なディフェンスと正確なパスだしでもインパクトをもたらした高井。本人も「そこが自分の課題だと思っています」という安定感を川崎で示していけば、パリ五輪のメンバー入りも近そうです。

松木玖生(FC東京)

パリ五輪世代では若い2003年生まれですが、ピッチ内外の振る舞いはそうした年齢が関係なく、強いメンタリティがプレーに表れていました。「プロでこうやって優勝できたの初めてですし、すごく思い出に残る大会になりました」と大会を振り返ります。

持ち前のフィジカル的な強さはアジアの強豪が相手でもいかんなく発揮して、中盤から前向きな仕掛けやゴール前に入っていく動きもチームの推進力にただ、誰よりも自分に厳しい松木の基準からすると、山田のクロスにうまく飛び出した中国戦のゴール以外、目に見える結果を出せなかったことは悔しい部分でしょう。そこは引き続き、復帰後のJリーグでも追い求めていくべきテーマになりそうです。

大畑歩夢(浦和レッズ)

UAEとの第二戦でアシストを記録。大会途中から決勝トーナメントの3試合でスタメン起用されて、イラク戦では粘り強い突破から藤田につなぎ、荒木遼太郎のゴールを演出するなど、攻撃面で積極的なプレーを見せたかと思えば、守備では対面するウイングを封じる働き。

「ウイングを潰せば勝利に貢献できるという相手だと、自然と力も出るし、本当にそういった部分が大きかった」と振り返ります。浦和では左サイドバックで渡邊凌磨の二番手でしたが、大会での活躍はヘグモ監督にも届いたはずで、ここからの起用法が注目されます。

そのほか2、3月のJリーグMVPに輝きいた平河悠(FC町田ゼルビア)は現在首位のクラブで、さらなる躍進が期待されます。同じ町田の藤尾翔太も、エリキというスーパーエースが復帰した首位のクラブで、いかにインパクトのあるプレーを見せて、ゴールという結果を積み重ねることができるか注目です。

また怪我から復帰して早々、アジアカップのメンバーに招集された木村誠二(サガン鳥栖)も、決勝トーナメントの3試合でスタメン起用されて、高井と共に日本の優勝を支えました。現在、下位で苦しむ鳥栖を最終ラインから引き上げて、本大会のメンバー入りにつなげるのかどうか。

その木村と同じセンターバックで、ラスト3試合はサブとしてパリ五輪の出場決定、そして優勝の瞬間をベンチから見ることになった鈴木海音(ジュビロ磐田)、中国戦での一発退場、複数試合の出場停止というサッカー人生の中でも大きな挫折を味わった西尾龍矢(セレッソ大阪)も、Jリーグで高井や木村を上回る活躍を見せることが、本大会メンバー入りの条件になるでしょう。

中盤でキャプテンの藤田譲瑠チマや松木の影に隠れてしまった川﨑颯太(京都サンガ)田中聡(湘南ベルマーレ)は個人として活躍するだけでなく、強烈なリーダーシップで自チームを上昇させることが期待されます。 また今回はメンバー外だった候補の選手たち、そして大岩監督も認めるように、未招集の実力者たちも残された時間で評価を一変させることは不可能ではありません。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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