小泉進次郎氏による「解雇規制」の緩和論、何が問題なのか? #専門家のまとめ
今月6日、小泉進次郎氏による自民党総裁選への出馬会見の中で解雇規制緩和への意欲が示され大きな波紋を呼んでいる。出馬会見では、労働法上求められている解雇規制の見直しを図ると同時に、企業によるリスキリングと転職支援を義務付けることで、成長分野への移動を促進する制度を作ることが表明された。
その後、世論の反発を受けて同氏の発言はトーンダウンしている一方で、経済界の有力者が解雇規制緩和政策への支持を表明するなど、論争が広がっている。
そこでこのまとめでは、議論の流れを追いながら、解雇規制緩和の何が問題なのかの論点整理を行いたい。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
楽天の三木谷氏が述べるように日本の経済界に活力が乏しく、改革が必要であることは間違いない。GALLAP社の調査(State of the Global Workplace 2021)によると、日本企業の社員でエンゲージメント(士気・熱意)がある者の割合は5%と、国際的に最低水準(世界平均20%、東アジア14%、西ヨーロッパ11%…)にあるとされる。
だが、解雇規制を緩和しても問題は解決しないだろう。佐々木亮弁護士が指摘するように、解雇規制を緩和しても転職をしたい人が増えるわけではないし、高いスキルを持った労働者が増えるわけでもない。そもそも日本の人材投資は国による公共職業訓練も、企業による人材投資も先進国で最低の水準にあり、そこを変えずに解雇規制を緩和しても失業者があふれるだけだ。つまり、順番が間違っている。
また、解雇規制を緩和をしても、働く人にインセンティブをもたらす「ルール」が形成されなければ活力にはつながらない。スキルや努力、貢献に見合った評価制度、昇給制度の不備こそが、労働者の活力を奪っていると考えられるのだ。むしろ、解雇規制緩和で「頑張っても梯子(はしご)が外されるかもしれない」というムードが広がれば、かえってやる気を失う社員が増える可能性もある。