なぜリヴァプールは好調なのか?マクアリスター、ソボスライ、遠藤…新戦力の躍動と中盤の支配。
アンストッパブルなチームに、なっている。
今季のプレミアリーグは、優勝争いが白熱している。リヴァプール、アーセナル、マンチェスター・シティが、タイトルを懸けてデッドヒートを繰り広げている。
■クロップの退任
なかでも、注目はリヴァプールだ。
リヴァプールは、今季限りでユルゲン・クロップ監督が退任する。指揮官の勇退を前に、チームが団結している印象だ。
クロップ監督は、2015−16シーズン途中に、リヴァプールの指揮官に就任した。「ゲーゲンプレッシング」と称される守備を少しずつチームに叩き込み、常勝への道を探った。
クロップ・リヴァプールの象徴になったのが、サディオ・マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノだ。「MSF」と呼ばれた3トップは、前線からのプレス、ハードワーク、破壊的な攻撃力で国内外において恐れられる存在になった。
■主力の退団を経て
ただ、現在のリヴァプールは、その頃とは異なる。
2022年夏にマネ、2023年夏にフィルミーノが、クラブを去った。2022年夏に移籍金8500万ユーロ(約138億円)でダルウィン・ヌニェスを獲得したが、「MSF」ほどの決定力は備わっていない。
また、リヴァプールは今夏、ファビーニョ、ジョーダン・ヘンダーソンが移籍を決断した。チームに、何かしらの変化が求められていた。
リヴァプールにとって、重要だったのが補強である。
この夏、ドミニク・ソボスライ(移籍金7000万ユーロ/約114億円/前所属ライプツィヒ)、アレクシス・マクアリスター(移籍金4200万ユーロ/ブライトン)、ライアン・グラーベンベルフ(移籍金4000万ユーロ/約64億円/バイエルン・ミュンヘン)、遠藤航(移籍金2000万ユーロ/約32億円/シュトゥットガルト)が到着した。クロップ監督が望んだ補強だった。
■中盤の強化 梃入れ
中盤を強化するという狙いは明らかだった。
クロップ監督はファビーニョのワンアンカーシステムを好んでいた。
だがファビーニョの退団があり、2023−24シーズン、梃入れの必要が生じた。ビルドアップの際、「3−2」型をつくる。中盤では、「遠藤+マクアリスター」あるいは「遠藤+ソボスライ」という形が採られる。もしくはトレント・アレクサンダー・アーノルドが偽サイドバック化して、「アーノルド+遠藤」といった形まで用意された。
■マクアリスターのインパクト
またクロップ監督をして、「限界がない。我々の超重要選手。さらに、素晴らしい青年だ。だから私は彼の獲得を熱望していた」と言わしめているのが、マクアリスターである。
マクアリスターは今季、公式戦36試合で6得点7アシスト。ブライトンに支払った4200万ユーロ(約68億円)の移籍金が安く感じられるようなパフォーマンスを見せている。
先のシェフィールド戦で得点を挙げ、マクアリスターは6試合連続でゴール/アシストを記録した。これは2013年のスティーブン・ジェラード以来の記録だ。
余談であるが、マクアリスターのシェフィールド戦のスーパーゴールは、かつて、ジェラードが決めたものと酷似していた。2004−05シーズン、チャンピオンズリーグのオリンピアコス戦でジェラードが沈めた一発だ。
ジェラードはリヴァプールの主将で、心臓だった。ただ、ジェラードとマクアリスターが似ている点は、スーパーミドルに限らない。ボックス・トゥ・ボックスの選手である、という部分が両者の共通点としてある。
マクアリスターはピッチ内を広範囲でカバーする。シュートブロック数(55回)はプレミアリーグ2位の数字で、タックル数(72回/プレミアリーグ9位)、ファール数(40回/プレミアリーグ10位)と泥臭い仕事までこなす(プレミアリーグ第30節消化時点)。
■最後のシーズンで
リヴァプールは好調を維持している。その要因のひとつには、クロップ監督の退任の影響がある。
「(クロップの退任を)受け入れるのは難しい。僕にとって、クラブにとって、プレミアリーグにとって、大きな意味を持つ存在だからね」とはキャプテンを務めるフィルヒル・ファン・ダイクの弁だ。
「今シーズン、僕たちの目標はまだ残されている。もちろん、できるだけ素晴らしい成績を残して、それを監督と一緒に祝いたい」
「フットボール界にとって、大きなニュースだった。それがプラスアルファになったかも知れない。最後の時間を、一緒に過ごすために。もしくは、それを楽しむためにね。リヴァプールに最高の時代をもたらしてくれた監督の最後の時間だから」
リヴァプールが最後にプレミアリーグを制したのは、2019−20シーズンだ。
1989−90シーズン以来、およそ30年ぶりのプレミア制覇だった。だがコロナ禍の影響で、通常モードの祝杯ムードにはならなかった。
今シーズン、クロップ監督の最後にーー。有終の美を飾るべく、リヴァプールの人々の想いはまとまっている。