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学校にICTを普及させる「1人1台」が経済対策にもりこまれたが、「支出ありき」の懸念も

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 政府は5日、財政措置額を13.2兆円、金融機関や民間からの支出も加えると事業規模は26兆円になる新たな経済対策を閣議決定した。そこには、全国の小中学校のすべての児童・生徒がパソコンやタブレット型端末を使える環境、「1人1台」を2023年度までに実現する政策ももりこまれている。総事業費は5000億円程度になるようだ。

 景気落ち込みに備えるための経済対策といわれているが、財政をさらに悪化させるとの懸念もある。支出ありきで、練り上げた策とはいえないことから、その効果についても疑問視する声がある。

「1人1台」については、11月13日に開かれた経済財政諮問会議で「パソコンが1人あたり1台となることが当然だということを、やはり国家意思として明確に示すことが重要」と発言するなど、安倍晋三首相も前向きな姿勢を示していた。そして萩生田光一文科相も、「私が文科相在任中に1人1台の端末、きちんと画像が動くような高速ネットインフラを整備したい」と語るなど、積極的だった。

 そんな安倍首相や萩生田文科相の姿勢が、今回の経済対策にストレートに反映されたことになるわけだ。

 ただし、「1人1台」を教育現場でどのように活かしていくのか、深い思慮が安倍首相や萩生田文科相にはあるのだろうか。文科省あたりでも、その活用の仕方をじゅうぶんに検討しているのだろうか。

「後は学校現場任せ」では、困ってしまう教員も少なからずいるのではないだろうか。改正給特法も4日に成立したことだし、1年単位の変形労働時間制で残業も正当化できるレールも敷いたのだから教員ががんばるだろう、なんて認識では困ったことになる。

「1人1台」は使い方によっては、授業の改善につながる可能性は大きい。そのためには、「1人1台」の活かし方を教員一人ひとりが、じゅうぶんに研究できる環境づくりも整えることが不可欠だ。

 学校現場の声に真摯に耳を傾けたうえでの「1人1台」でなければ、ただの「支出ありき」になってしまう。それでは、効果にも期待できない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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