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幼保無償化で自治体が独自制度にのりだすのは国の制度が中途半端すぎるからだ

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 10月1日から幼児教育・保育の無償化が国の制度としてスタートするが、問題をかかえている。自治体が独自の制度にのりだすのは、国の問題を放っておけないからなのだろう。

 共同通信社が県庁所在地など計103の自治体に行った独自調査で、国の基準では無償化にならない世帯に対して独自財源で経済的支援の実施を決めるか検討している自治体が、9月13日時点で62市区と調査対象の約6割にものぼった。

 これほど多くの自治体が独自の制度をつくらなければならないのは、それだけ国の制度が「不十分」なものでしかないからだ。

 国の制度では認可保育所や認定こども園などにかよう3~5歳児の保育料は無料となるが、認可外保育所などを利用している場合は国の補助には上限があり、全額が無料とはならない。同じ3~5歳児でも、無料の子と一部しか無料にならない子がでてくるわけで、公平性を欠いている。

 そして認可保育所に預けたくても定員の問題で無認可保育所に預けている保護者も少なからずいるわけで、にもかかわらず、認可なら無料で、無認可であるために負担分があるとすれば、不満は募るばかりとなる。認可保育所に預けたくても預けられなかった保護者の感情を逆なでしているようなものだ。

 これを放っておいては、批判の矛先は自治体に向けられる。保育所などを管轄しているのは、各自治体だからだ。待機児童問題で批判があるにもかかわらず、無償化での不平等が表面化すれば、ますます自治体は窮地に立たされることになりかねない。

 それを回避するためには、自らの財源を使った独自の制度で対応しないわけにはいかないのだ。国の中途半端な制度のために、自治体が負担を強いられることになる。

 独自の制度でカバーできる自治体はいいが、それができない自治体では、無償化制度がスタートすれば「不平等」への不満が爆発することにもなりかねない。無償化という耳障りのいい言葉だが、中途半端な制度でスタートさせることで、実は大きな問題を生みだすのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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