なぜ、繰り返し豪雨に?原因はシルクロードテレコネクション
繰り返される豪雨、なぜ、梅雨前線は日本列島に停滞し続けたのか?原因のひとつに蛇行するジェット気流があった。「シルクロードテレコネクション」は夏の異常気象を引き起こす。
台風19号の2倍の雨量
梅雨の大雨はときに想像を超える激しさで降ります。
この一週間に、全国で降った雨の量(降水量の総和)を見積もったところ、約17万5千ミリとなり、これは2019年10月の台風19号(令和元年東日本台風)による降水量の総和(約8万ミリ)の2倍に相当します。今回の大雨は昨秋の東日本や東北の大雨を上回る規模であることがわかります。
動かない梅雨前線
こちらは10日(金)午前9時の地上天気図です。梅雨前線に多少の動きはあったものの、この一週間、ほとんど日本列島に沿うように停滞しました。
梅雨前線の南側には夏の高気圧(太平洋高気圧)があり、非常に湿った空気により、雨雲が繰り返し発生する場所です。豪雨が続いた原因のひとつに、梅雨前線が停滞し続けたことがあります。
原因は亜熱帯ジェット気流の蛇行
梅雨前線が北にも南にも動けない状況、つまり日本周辺の気圧配置(天気図)が変化しにくい状況が作られました。
梅雨前線を専門的にいうと、地球を取り巻く大きな流れ=ジェット気流(上空の強い西風)と密接に関係しています。この亜熱帯ジェット気流が今回、蛇行したことで、梅雨前線の停滞を引き起こし、次々と湿った空気を日本列島に引き寄せる原因となったのです。
亜熱帯ジェット気流が実際にどのように流れていたのか、それを示した図がこちらです。
ちょっと見にくいのですが、緑の矢印で示した所に日本列島があります。この図は7月4日から8日までの5日間を平均したもので、暖色が高気圧性の渦、寒色が低気圧性の渦を示しています。高気圧性循環と低気圧性循環が交互に並び、線に沿って、ジェット気流が西から東に蛇行しながら流れている様子を表しています。
「シルクロードテレコネクション」が夏の異常気象を引き起こす
日本のはるか西、中東のあたりから日本にかけて、赤・青・赤(黄)・青と交互に並んでいます。このような亜熱帯ジェット気流の流れを専門的な言葉で「シルクロードテレコネクション」といいます。
東洋と西洋を結んだ歴史的な交通路シルクロードにちなんだ名前です。そして、テレコネクション(teleconnection)とはある場所での大気や海洋の変化が遠く離れた場所に、長期間にわたり影響を及ぼすことをいいます。テレコネクションが起こると、同じような天気が長く続くため、長雨や少雨、寒波や熱波などの異常気象が発生しやすくなります。
この夏、異常気象が頻発する?
このシルクロードテレコネクションは徐々に解消に向かうものの、西日本では来週の火曜日(14日)頃まで大雨になりやすいでしょう。そして、18日(土)頃からは夏の高気圧(太平洋高気圧)が強まり始める見通しです。長雨のあとは猛暑になるかもしれず、極端な天候の変化に振り回される夏になるかもしれません。
【参考資料】
気象庁:令和元年台風第 19 号とそれに伴う大雨などの特徴・要因について(速報)、2019年10月24日
木本昌秀、2017:3.5テレコネクションパターン、持続する偏差パターン、気象学の新潮流5「異常気象」の考え方、朝倉書店、81-102
気象庁:気象・地震等の情報を扱う事業者等を対象とした講習会、平成30年7月豪雨及び今夏の高温の要因について、2018年9月11日開催