【震度6弱】鳥取中部地震 高齢化率30%地域の被害実態
■JR倉吉駅前では飲食店も通常通り営業 落ち着いた雰囲気
今月21日、震度6弱の地震に見舞われた鳥取県倉吉市。発生から36時間経った現場を訪ねた。
JR倉吉駅前は比較的落ち着いていた。
通常通り営業する飲食店が目立ったが、一方で宝石店や薬局など後片付けに追われる商店もあった。
インターネットカフェの店主、植松禎(うえまつただし)さんによると2万2千冊のうちおよそ半数の本が棚から落ちた。激しい横揺れを感じたという。営業時間中だったため、店内には客もいたが、幸いにして怪我もなく全員無事店外に避難することができた。
植松さんは、従業員と2人で書棚へ本を戻す作業を続けている。営業再開までは1週間程度かかると見込んでいる。その間、営業ができない分損益が生じるが、それでも建物自体への被害が少なく、熊本や東日本大震災に比べると軽い被害で済んだ方だと語っていた。
■過疎や高齢化が進む地域 県重要文化財も倒壊した寺の「悩み」
車でさらに西に40分程移動し、倉吉市岩倉という地区を取材した。
古い日本家屋が多く、建物被害が目立つ地域で、ところどころ地割れも見られた。
倉吉市の高齢化率は平成27年度で30%を超えており、ボランティアによる後片付けや生活支援などが不可欠な地域だ。
岩倉にある、「永昌寺(えいしょうじ)」という曹洞宗の寺を訪ねた。
住職は、大林厳道(おおばやしげんどう)さん。73歳。江戸時代から続く寺の18代目だ。
鳥取県重要文化財で、鎌倉から室町にかけて造られた13重の仏塔などを管理してきたが今回の地震で塔は下の7段を残して倒壊。貴重な文化財が砕けた。その他、市の重要文化財をはじめとした灯ろうを始め、本堂の中も深刻な被害を被った。
「長い時間をかけてでも寺を再建したい」と語る住職だが、その他にも地震による被害は深刻で、過疎高齢化の地域では檀家も少なく自力再建がなかなか難しいと唇をかんだ。
自宅も被災しており、70歳を超えた住職ご夫婦にとって散乱した食器や倒れた家具を元に戻すのは非常にしんどい作業。支援があれば助かるというが、今回のような大きな地震は初めての経験で、手伝いはどこに頼めばよいのかもわからないという。倉吉市の社会福祉協議会が設置したボランティアセンターを紹介した。ボランティア受け入れは週明け24日からだ。
大林さん夫妻は、「熊本のようにまた大きな地震が来るかもしれない」と警戒を強める。住職は「船の船長と同じで、私はこの寺を放って避難することはできない」と語り、避難所などには行かずに寺を守る覚悟だ。再建にかかる費用を集めるため、寄付を募りたいという思いもある。
■支援のニーズの掘り起こしが必要
鳥取県災害対策本部によると22日午後4時までに234棟の家屋が損壊、16人が重軽傷。倉吉市など1市4町で1324人が避難をしている。地元の日本海新聞などによると、22日午後8時までに震度1以上の地震が166回発生。
住民の中には、車中泊をする人もいる。収穫時期を迎えた梨農家など農業への被害が心配だ。
一方で地元からは電気や水道など生活インフラが概ね守られており一安心という声も聞かれた。
過疎や高齢化が進む地域で支援のニーズを掘り起こし、復旧に向けた取り組みが迅速に進むことを願う。