4月10日は『交通事故死ゼロを目指す日』 娘の命を突然奪われた父の訴え
「本日4月10日は、『交通事故死ゼロを目指す日』です。平成20年より春の全国交通安全運動の中に設けられた国民運動ですが、最近はほとんど認知されていない状態です」
午前中に届いたそのメールを見て、はっとしました。
差出人は、東京の佐藤清志さん(54)。
今から15年前、6歳のご長女を亡くされた遺族です。
佐藤さんは訴えます。
「最近は交通事故死者数が減ってきたと報じられています。しかし、統計の記録が残る1968年(昭和43年)以降、日本で交通死亡事故が発生しなかった日は1日もありません。これは、日本のどこかで、毎日、誰かが亡くなっているということ。この現実を、ぜひ多くの方に改めて認識していただければと思うのです」
『交通事故死ゼロを目指す日』
言葉にすればごく当たり前の、完璧なスローガンです。しかし、この裏に、どれほどの苦しみが積み重ねられてきたことでしょうか。
佐藤さんからメッセージをいただくまでこの日のことを忘れていた私は、一人でも多くの方の心に留めていただきたいと思い、記事を書こうと思い立ちました。
突然断ち切られる家族の絆
佐藤さんの長女・菜緒ちゃんが被害に遭ったのは、2003年5月24日のことでした。この日、菜緒ちゃんは自転車に乗り、青信号で横断歩道を渡っていました。そのとき、左後方からダンプカーが停止せずに左折してきたのです。
「菜緒の身体は大きなダブルタイヤに自転車もろとも踏みつぶされ、ダンプはそのまま100メートル進んで、目撃者の制止によってようやく止まりました。警察から知らせを受け、私が駆け付けたときには、もう、菜緒の可愛い顔を見ることはできませんでした。唯一原形をとどめていたのは、小さな手のひらだけです。でも、その手を握った瞬間、すぐにわかりました。いつも手をつないで散歩した、あの菜緒の手だと……」
なぜ、青信号を守っていた子どもが、命を奪われるのか----。
佐藤さんはこうした理不尽な死をこれ以上生まないために、そして、交通事故のない社会をつくるために、今も学校での講演活動をおこなうなど、さまざまな啓蒙活動を続けておられるのです。
新学期は子どもを守る運転を
平成30年、春の交通安全運動期間は、4月6日(金)から15日(日)までの10日間です。
今回の運動の重点目標は、
(1) 子供と高齢者の安全な通行の確保と高齢運転者の交通事故防止
(2) 自転車の安全利用の推進
(3) 全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底
(4) 飲酒運転の根絶
となっています。
特に、入学や進級を迎える4月からの数か月間は、小学生の歩行中や自転車乗用中の交通事故が増加する傾向にあるので、ドライバーの方々は十分に注意をしてください。
また、高齢者の交通事故死者数が交通事故死者数全体の半数以上を占めており、高齢運転者による重大交通事故が多数発生していることも、今回、重点目標に組み込まれた理由となっています。
ちなみに、『交通事故死ゼロを目指す日』は、秋の全国交通安全運動期間中の9月30日にも設定されています。
統計的には、『2人に1人が一生のうちに一度は遭遇する』という交通事故。
WHOによれば、世界の交通事故死者数は年間約125万人に上っていると推計されています。
ここまでくるとあまりに大きな数字でイメージがわかないかもしれませんが、この数字は確実に、一人ひとりの生命の積み重ねです。
菜緒ちゃんのように、家族に愛され、小学校に通うことを楽しみにし、そして未来に向かってたくさんの夢があったはずです。
せめて1年に1日だけでも実現させる----、まずはこの目標に向かって、「交通事故死ゼロを目指す日」に思いを馳せていただければと思います。