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【伊勢崎家族3人死亡事故】遺族が街頭で署名 東名飲酒事故遺族、宇都宮160km追突遺族らも支援

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
パパのほっぺにキスをする湊斗くん。毎晩の恒例だったという(遺族提供)

 今年5月6日、群馬県伊勢崎市の国道17号でトラックが中央分離帯を突破し、対向車に乗っていた塚越湊斗くん(当時2)、父親の寛人さん(同26)、祖父の正宏さん(同53)の家族3人が死亡した事故。

 トラックを運転していた鈴木吾郎被告(70)は、業務前のアルコール検査の後に酒を飲み、事故を起こした際には血中から基準値を超えるアルコールが検出されていたと報じられています。

 また、事故発生の2分前にはあおり運転を行い、衝突時には法定速度を30キロオーバーする時速90キロで走行していたことも明らかになっています。

 しかし、前橋地検は9月10日、「危険運転致死傷罪」ではなく、より法定刑の軽い「過失運転致死傷」で被告を起訴。遺族には「より罪の重い危険運転致死罪も視野に捜査を継続中」と説明しながらも、事故から5か月が経過した今(10月10日現在)もまだ訴因変更は行われていません。

*追記速報(2024/10/11 17:05)

 本日(10月11日)、前橋地検は、訴因変更の請求を行うことを明らかにしました。10月12~13日の厳罰化を求める前橋での署名活動は予定通り実施されます。

【速報】トラック運転手(70)の起訴内容を危険運転致死傷の罪に訴因変更へ 群馬県伊勢崎市で2歳の男の子ら3人死亡事故で前橋地検 | TBS NEWS DIG

■危険運転致死罪への訴因変更を求めて署名活動を展開

 これまで遺族らは危険運転致死傷の適用を求めて署名活動を行ってきました。

 以下、署名用紙から、本件の事故態様、明らかになっている運転手の行為について抜粋します。

1)会社で運転を開始する前に受けたアルコールチェックではアルコールが検出されなかった。

2)事故後に採取された血液からは基準値を超える濃度のアルコールが検出された。

3)時速60キロの一般道路を、時速90キロで走行していた。

4)事故2分半前にはあおり運転をしていた。

5)中央分離帯を乗り越えて反対車線に突っ込み被害車両2台を巻き込んで3人を死亡させた。

6)事故後、トラックの車内から焼酎の空き瓶(220ml)が2本見つかった。

 署名用紙にはさらにこう綴られています。

『このように、職業運転手がトラックを運転する前にわざわざ酒を飲み、速度超過で走行の上、センターラインを超えて惹き起こした事故には、危険運転致死傷罪が適用され、トラック運転手に厳罰が下されるべきです。どうか加害者を法の許す限り最も重い刑罰に処してください。2024年10月』

*詳細については文末をご参照ください。

事故で亡くなった塚越正宏さん。孫の湊斗くんは目に入れても痛くない可愛い存在だった(遺族提供)
事故で亡くなった塚越正宏さん。孫の湊斗くんは目に入れても痛くない可愛い存在だった(遺族提供)

■10月12~13日には前橋市にて街頭署名

 実は、10月11日、前橋地検は急遽、裁判所に「危険運転致死罪」での訴因変更を請求することを明らかにしました。

 10月12(土)~13日(日)には、群馬県前橋市で開催される「前橋まつり」の会場で「厳罰を求める街頭署名活動」もおこなわれる予定です。

 現地には、1999年に東名高速道路で起こった飲酒トラックによる追突事故で幼い2人の姉妹を亡くした井上保孝さん、郁美さん夫妻をはじめ、2023年、宇都宮市で時速162キロの乗用車に追突され夫を亡くした佐々木多恵子さん(「高速暴走・危険運転被害者の会」共同代表)などの支援者も参加し、呼びかけを行うとのことです。

 ちなみに、佐々木多恵子さんも本件事故の遺族と同様、危険運転致死罪の適用を求め、昨年から署名活動を展開してきた遺族のひとりです。10月10日には、その要望がようやく届き、宇都宮地検は訴因変更をおこなうことを決定したところです(以下の記事参照)。

リヤショックがちぎれ、ホイールも砕けたあの160km追突死亡事故、ついに訴因変更へ #専門家のまとめ(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 事故後、2人目の赤ちゃんを出産した湊斗くんのお母さんは、一昨日、筆者にこう語っていました。

「検察官からは『危険運転に切り替えられるようにしていきたい』というお話をいただいているので、それを信じたいのですが、ここまで時間がかかるとやはり心配になってきたりもします。そんな中、たよりがいのある井上さんご夫妻や佐々木さんなど、多くのご遺族、支援者にご協力いただきとてもありがたく思っています。逆に私たちの活動が、同じような思いをされている被害者や遺族の方々のために少しでもお役に立てれば嬉しいです。夫は下の子の誕生を心待ちにしていました。育休を取るんだと、とても張り切っていたんです……。どんな刑罰が下されても納得できるものではありませんが、万が一、この事故がこのまま過失で処理されるようなことになったら、私は一生後悔すると思うので、亡くなった家族のためにもやれることはやっておきたいと思っています」

 そしてその2日後、遺族の思いは届き、本件は危険運転致死罪で裁かれることになりました。

 湊斗くんのお母さんからは、早速以下のメッセージが届きました。

「ありがとうございます。ひとまず安心しました。12~13日の前橋での署名活動は予定通り行います。厳罰に向けての署名になります。みなさま、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします」

【前橋での街頭署名概要】

<伊勢崎市で起きた飲酒トラック親子3人死亡事故について 危険運転致死傷罪を適用した厳罰を求めます!>

●日時:10月12日(土)~13日(日)午前10時から午後3時まで

●場所:前橋祭りの「イベントステージ広場」横、千代田通り側(群馬県前橋市千代田町4丁目11

*以下の「前橋祭り会場交通規制図」を参照ください。

https://maebashi-festival.jp/wp-content/themes/maebashi-festival/pdf/2024koutsu.pdf

●参加者:伊勢崎飲酒トラック親子3人死亡事故の被害者遺族「塚越家族会」より4~5名、「高速暴走・危険運転被害者の会」共同代表 佐々木多恵子、同・井上保孝、井上郁美、ほかボランティア

<デジタル署名も受け付けています>

●署名用紙は以下からダウンロード頂けます。

https://search.app/JRvUEcUKjUtbruws5

●デジタル署名(Change.Org)のリンク:

https://chng.it/J4LMTFvtQP

*なお、寄付はされなくても構いません。ご遺族に寄付が届くのではなく、Change.Orgに届きます。ご留意ください。

●署名用紙送付期日:初回10月31日、以後も判決が下されるまで募集。

●郵送先:〒370-0043 群馬県高崎市高関町433-2 つじきむら法律事務所 宛て

父、祖父とともに飲酒事故で命を奪われた湊斗くん。まもなく迎える3歳の誕生日を楽しみにしていたという(遺族提供)
父、祖父とともに飲酒事故で命を奪われた湊斗くん。まもなく迎える3歳の誕生日を楽しみにしていたという(遺族提供)

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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