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ほったらかし積立投資の勝率は99% 簡単で確実に勝てる秘訣は何か

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
投資で確実に勝つ方法はほったらかし×積立投資(写真:ロイター/アフロ)

99%の確率で投資で成功するとっても簡単な方法がある

投資の本を読んで必勝法を探すのは誰でもやることですが、実質的にはギャンブルに近い本から、堅実に誰でも実行可能なものまで様々です。

最近では「お金は寝かせて増やしなさい」(水瀬ケンイチ)が6万部突破のベストセラーになっていますが、iDeCoやつみたてNISAの普及もあいまって、「コツコツ投資」「ほったらかし投資」が注目されています。

実はこの「コツコツ」「ほったらかし」の投資方法は、かなり勝率の高い方法です。実は99%の確率で運用をプラスに終わらせることができるからです。しかも実行するために必要な技術はほとんど不要です。

「ほったらかしで勝率99%? そういうトークそのものがあやしいでしょ!」と思う人もいるでしょう。その疑ってみる感覚はとても大切です(カモにされる恐れを減らせるので)。しかしこの話はウソではありません。そこで今回は「99%勝てる方法とその理由」を解説してみましょう。

大学の先生の研究データでほったらかし投資の勝率が99%になることが裏付けられた

投資の勝率99%というデータの出所はちゃんとしています。試算をされたのは、国の年金運用を担当するGPIFの運用委員も務め、今は名古屋市立大学で教鞭を取られている臼杵政治先生です。レポートが提出されたのは、2017年に行われた厚生労働省のとある委員会です(社会保障審議会企業年金部会下におかれた確定拠出年金の運用に関する専門委員会。実は私も委員でした)。

元ファイルはこちらから。該当ページはP4

これは3カ月に一度、20年にわたって定期的な積立投資を行った場合のシミュレーションで、1980年1月スタートから、1997年4月スタートの208パターンで試算が行われています。株価が上がった一時期だけを都合よく取り上げるのではなく、バブルが弾ける前も、バブル崩壊も、リーマンショックもここには含まれていることになります。

シミュレーションでは、「定期預金だけもっていた」「日本の株だけ投資した」「日本と世界にまんべんなく株式投資した」といったパターンをいくつか設定しています。

やることはシンプルで、ただ定期的に積立投資を行いインデックスベースで購入したものとします。株価が高いか低いか判断はしません。途中での売買もとくに行いません。株価が上がっているときも下がっているときも余計なことは何もせずただ買い続けていきます。たったそれだけです。

20年間208パターンで積立投資をした成績は以下のとおりです。

「定期預金だけもっていた」

  名目値  208回中0回マイナス

  実質値  208回中36回マイナス

「日本の株だけ投資した」

  名目値  208回中110回マイナス

  実質値  208回中113回マイナス

「日本と世界にまんべんなく株式投資した」

  名目値  208回中1回マイナス

  実質値  208回中2回マイナス

という結果になっています。運用成績はずいぶん明暗が分かれていますが、簡単にポイントをコメントすれば

「定期預金だけもっていた」……確かに一度も元本割れしていないが、インフレに実質的に負けた「実質目減り」が17.3%も生じていることに注目。

「日本の株だけ投資した」……54%もの確率でマイナスになって終わっている。20年という期間をもってしても、日本というエリアだけを投資対象とした場合、うまくいかないリスクがある。

「日本と世界にまんべんなく株式投資した」……試算に使われた指数はMSCI Worldつまり日本も含めた世界株式(円建て)ですが、額面上も実質的にもプラスの運用で終わる可能性が極めて高い。

ちなみに国内外の株式投資100%のリターンですが、80回の積立に対して平均162.3のスコアですから、ほぼ倍増ということになります(名目)。ただ機械的に積立をするだけの運用成果としてはかなりの成績です。

同じような試算結果は金融庁のつみたてNISAでも紹介されています。(例えば金融庁のつみたてNISAパンフレットのリンクはこちら

20年間ほったらかしの積立投資が勝率99%の理由とは

さて、なぜ20年のあいだ単純な積立投資をしただけで、勝率が99%にもなるのでしょうか。いくつかの理由があります。

・長期的に考えると経済は「実質」的に成長する……経済には上下動の波があるものの長い目でみると成長します。また特定の地域に限らないことで長い目で見て成長する確率も高まります。

・株価が下落している局面に「新規購入」を続けることが長期的には「安値買い」そのものである……長い目でみて経済が成長するのであれば、一時的に値下がりしている時期は新規購入をするチャンスです。相対的に安値で購入することが可能だからです。

・中断しないことが効率的投資になる(タイミングをねらうことはタイミングを逃すことになりかねない)……一般的に投資はタイミングを狙うものというイメージがありますが、年金運用ではポートフォリオを意識して中長期スタンスで臨みます。タイミングを見て手動で買おうとすると結局怖くて買えなかったということになりがちです。ただ機械的に買い続けることは実は悪くない投資方法のひとつなのです。

・投資を継続すると「配当」が運用収益に加わる……最近指摘されるようになりましたが、株式への配当の大きさも中長期的には大きな力があります。日本の株式であれば1.6%相当のインパクトがあるほどです。預貯金を上回ることも少なくない配当利回りが加算されることでリスク運用の成果がより高まることになります。

株価は毎日見ない、投資のタイミングは何も考えない

「ほったらかし投資」は、会社員にとってとても優れた投資方法です。なにせ「株価を毎日見なくてもいい」「投資のタイミングを考えなくてもいい」「銘柄選びをしなくてもいい」というように、投資の負担が少なくてすむからです。

しかもインデックス運用をベースに置けば低コスト運用にもなり省エネ投資にもなります。売買のつど課税される必要もないので、ほったらかして積み立てを継続し、最後の最後に一度だけ税金を払えばいいのです。

しかもiDeCoやつみたてNISAであればその収益課税すら免れるわけですから、ほったらかし投資のために国が制度を用意してくれているようなものです。

知らなくて制度を利用していない人はこれほどもったいないことはありません。しかし「ちょっとは投資を知っていて」しかもほったらかしの積立投資をしていないならこれもさらにもったいないことといえます。

実は100%確実にプラスになった方法もあった!

さて、ここまで「99%勝つ方法」を知りたいと記事を読んでいただいた読者に、ボーナスとして「100%」勝つ方法を紹介してコラムを終えたいと思います。これはここまで読んでくれた人へのサービスです。

先ほどの臼杵先生の試算で、実質的にも名目的にも100%勝っているポートフォリオがあります。それは

「グローバル株40%、国内債券30%、定期預金30%」

「グローバル株40%、国内債券30%、為替ヘッジ付き債券30%」

「グローバル株50%、国内債券50%」

の3パターンです。話が複雑になるので(それに見出しで「100%勝つ方法」と書くと信じてもらえそうにないので)このパターンを割愛していましたが、これくらいのポートフォリオでも勝率はかなり高くなります。

もちろん、債券や定期預金のウエートを増やしていますので、最終的なリターンの平均値は下がります。しかし、イメージするほどは下がりません。

例えば「グローバル株50%、国内債券50%」のようなポジションの場合、80の積み立てに対し平均スコアは142.7となっています。100%グローバル株投資の平均スコア162.3には及ばないもののこれも悪くない増え方です。また最悪ケースでは98.2のスコアとなっており、こちらは100%グローバル株の投資(79.9)よりいい成績で終わっていたりします(いずれも名目値)。

もし100%世界中に株式投資はちょっと、というなら、「グローバル株50%、国内債券50%」のようなポジションもいいかもしれません。国内債券は個人向け国債で保有しておけば、同額を世界中に株式投資する投資信託を買うだけでよく、それをNISAやつみたてNISAで購入するだけ同等のポートフォリオが簡単に組成できます。

長い目で見てインデックス積み立てをしてみることは、簡単に、そして確実に、世界の経済成長を自分の財産成長に取り入れる方法なのです。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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