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2023/09/26のJAZZ掲示板 #専門家のまとめ

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
タイトル画像:筆者作成

ジャズ関連の情報を拾ってコメントをつけて貼っておきます。

▼映画「白鍵と黒鍵の間に」公開迫る

10月6日から公開される映画「白鍵と黒鍵の間に」を紹介する記事。

ジャズピアニスト、南博の修行時代を綴った回想記『白鍵と黒鍵の間に-ジャズピアニスト・エレジー銀座編-』を、『素敵なダイナマイトスキャンダル』の冨永昌敬監督が、池松壮亮を主演に大胆にアレンジ。

劇中のセッション演奏は吹き替えのようですが(プロによる演奏)、重要なシーンとなる〈ゴッドファーザー 愛のテーマ〉は池松壮亮さんが弾いていて、記事にも貼ってある予告編トレーラー動画で確かめることができます。

池松壮亮さんは映画「シン・仮面ライダー」でも満身創痍でアクションに臨むなど、役どころを超えたキャラクターに挑むタイプの俳優さんだと思っているので、公開が楽しみです。

▼京都府立工業高校の吹奏楽部「マンボウ・ジャズ・バンド」がJSJFで教育長賞

8月18日から20日にかけて兵庫・神戸市の神戸文化ホール大ホールで開催された「第38回ジャパンスチューデントジャズフェスティバル2023」で、京都府立工業高校の吹奏楽部「マンボウ・ジャズ・バンド」が神戸市教育長賞を受賞したことを伝えるニュース。副部長の東優梨さん(3年)も個人賞「ナイスプレイヤー賞」に輝いています。

「ジャパンスチューデントジャズフェスティバル」は中高生ビッグバンドによるジャズの祭典として回を重ね、憧れのイヴェントとして知られている大会。

今年は神戸ジャズ100周年事業もあるなかでの開催で、全国から参加した38団体が“憧れの大舞台”での演奏を果たしました。

こうした結果を伝える記事を地元メディアがきちんと発信することも大切だと思います。

それはそうと、数年前に学生のビッグバンド活動についてイヴェントがらみで調べたことがあるのですが、実力校は年間スケジュールがとてもハードで、有料コンサートも開催するなど、あまり表面には出てこない話題なのですが、かなりの盛り上がりを感じました。

日本の楽器演奏者人口は100万人と言われていますが、さらに裾野を広げて音楽文化を発展させるためにも、こうした“結果”をきちんと取り上げて、音楽をより身近なものにしていく地道な努力も必要だと感じた次第。

▼『村上春樹 presents 山下洋輔トリオ再乱入ライブ』アナログ盤で発売

2022年7月12日に東京の早稲田大学大隈講堂で開催された「村上春樹 presents 山下洋輔トリオ再乱入ライブ」の音源が、アナログ盤でリリースされます。

このイヴェントは、山下洋輔トリオが1969年7月に早稲田大学4号館でゲリラ的に挙行したライヴを再現したもの。もちろん、オリジナルメンバーでの再現でした。

私は1969年当時は小学生だったので、このゲリラライヴの話は後で知ったのですが、昨年のステージは取材できました。

アナログ盤でのリリースというのも、村上春樹さんがプロデュースしたイヴェントらしく、MURAKAMI Radio Labelっぽいと思いますね。

▼レコード番長が手がける伝説のTMB音源コンピ発売

“レコード番長”ことDJの須永辰緒さんはさまざまなテーマでアルバムというパッケージの作品をリリースしています。

今回は、伝説の和ジャズレーベル、TBM(スリー・ブラインド・マイス)に残された音源が対象です。

TBMとは、「日本の新進気鋭の演奏者たちを世に出すことを目指して1970年6月に設立された日本のジャズ専門レーベル」。

個人的に独特のオーラを放っているレーベルだと位置づけていて、のちに続く日本のインディペンデントなレーベルの指標になっていると思います。

この記事では、須永辰緒さんがTBMを“コンパイルしている”と表現しています。

コンパイルとは元々、人間が書いたソースコードをバイナリに変換することを意味するコンピュータ用語。

TBMの精神を現代のリスナーが鑑賞するのに適した状態に“変換する”という、ある意味でDJという経験で鍛えた感覚ならではの処置が施された作品を表現するのに(わかりづらさはあるけど)とても迫っているなあと思った次第。

▼100年の歴史を現代につなぐ「ZUKA IN JAZZ」上演

9月22日から24日まで東京の日本青年館ホールで開催された「ZUKA IN JAZZ/SONG & DANCE with NAOKO TERAI Quartet『ALL THAT ZZJA/ALL THAT ZZKA』」公演のもようを伝える記事。

この公演は、ジャズ・ヴァイオリニストとして世界を舞台に活躍を続ける寺井尚子さんが企画と原案を担当し、そこに元宝塚歌劇団のトップの面々が出演するという、豪華なステージ。

100年前に宝塚歌劇団のオーケストラにいた井田一郎が神戸でジャズバンド“ラッフィング・スターズ”を結成(これが日本初のプロのジャズバンドで、神戸が日本のジャズ発祥であることの根拠でもある)したことにちなんだ企画でもあります。

ヒップホップには「DJ、ブレイクダンス、グラフィティ」という三大要素があるように、100年前のジャズには「音楽、踊り、舞台装置」があったということ。ミュージカルしかり、レビューしかり。

そういう意味でも、この企画は清く正しく(楽しく)100年前のジャズをリスペクトしていると言えるんじゃないでしょうか。

なお、本公演は9月29日から10月1日まで大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでも上演されます。

公式HP:https://www.takarazuka-live-next.co.jp/stage/2023/zzjazzka/

本日は以上。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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