UKジャズの最前線から放たれたポピュラー音楽界への刺客[聴く]気になる…memo
ジョーダン・ラカイのニュー・シングル〈フラワーズ〉が届いた。
彼が“現代ジャズを代表する存在”として知られるようになったのは、2015年にオーストラリアからロンドンへ拠点を移してからだが、シンガーソングライターにしてマルチに楽器を操り、そのプロデュース力をいかんなく発揮できる環境が整ったからに過きず、UKジャズが彼を育てたというより、彼が加わることによってロンドンのシーンが活性化したとするほうが正しいだろう。
2020年にはイギリスのデッカ・レコードとアメリカのブルーノートがタッグを組んだアルバム『ブルーノート・リイマジンド』に名を連ね、一挙に日本での知名度も爆上げすることになった。
ネオソウルを基調としながらレゲエやアフロの要素も取り入れるという彼の手法は、UKジャズでは突出したものではなく、むしろオーソドックスと言うべきだろうが、オーソドックスゆえにその配合の妙に才能が宿っているわけで、サム・スミスやロバート・グラスパーといった英米のキーパーソンたちから熱い眼差しを向けられているのその抜群のセンスゆえ、ということになる。
さて、公開された〈フラワーズ〉のミュージック・ヴィデオを鑑賞してみると、例によってジョーダン・ラカイ節が炸裂するソウルフルな仕上がりなんだけれど、リフレインされるフレーズで紡がれる、人生の転機を象徴する“花”への想いを綴った詞が重くリスナーにのしかかってくることはなく、むしろ軽みを感じる仕上がりになっている。
要するに、かなりポップな印象を受けるというわけなんだけれど、もしかしたらジョーダン・ラカイが本格的にネオソウルの次のステージ、ポピュラーな音楽観を意識したフェーズに移ってきたことを示す作品になっているのかもしれない。
そういう意味でもチェックしておきたいなぁと思ったわけなのです。
♬ information
ジョーダン・ラカイ 〈フラワーズ〉
2023年10月26日配信リリース