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大谷がWBC辞退へ。二刀流は1本が折れてもあと1本残る……わけではないことが改めて浮き彫りに

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平/Shohei Otani NOVEMBER 15, 2014(写真:アフロスポーツ)

北海道日本ハムファイターズの大谷翔平は、WBCに出場しないだろう。投手としてだけでなく、野手としてもだ。昨夏の投球中に右手中指のマメを潰した際は、DHとしてプレーし続けたが、右足首の故障ではそうもいくまい。

投手と野手ではないが、過去には二刀流プレーヤーのこんな故障があった。ベースボールとアメフトをプレーしていたボー・ジャクソンは、1991年1月にNFLのプレーオフで腰を負傷し、この年のMLB出場は9月以降の23試合にとどまった。ボーのNFLにおけるキャリアはそのまま終わり、MLBも1992年は全休した(1993年に復帰し、1994年までプレーした)。

ボーは怪我を負って人工股関節を装着する前に、MLBのオールスター・ゲームとNFLのプロ・ボウルに出場した。両方のオールスター・ゲームに出た選手は、ボーの他にはいない。二刀のそれぞれが一流という点は、大谷もボーに似ている。大谷は昨シーズン、投手とDHの両部門でベストナインに選ばれた。こちらも史上初のことだ。

一つの故障によって二刀のいずれもが使えなくなる可能性があり、しかも、二刀流であることで故障のリスクは高まる。最近ではシカゴ・カブスが、大学時代にアメフトでも活躍したジェフ・サマージャ(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)とマット・シーザーとの契約に、ベースボールに専念すればボーナスをプラスするという条項を付帯させた。大谷の二刀流は同じベースボールなので、こういった条項は発生しないだろう。だが、MLBの球団は大谷との契約に際し、サマージャらと同じように二刀流をやめること――野手をあきらめて投手に専念すること――を求めるのではないだろうか。

なお、こちらも二刀流の故障ながら、両投げ投手のパット・ベンディティー(現シアトル・マリナーズ)の場合は事情が違った。2015年6月にオークランド・アスレティックスからメジャーデビューした直後に、ベンディティーは右肩を痛めて離脱した。どうやら、左腕としては投げられないわけではなかったらしい。ただ、彼のセールスポイントは、右打者に右腕、左打者に左腕と使い分けられることだ。両腕を駆使しても、ベンディティーはメジャーリーグに定着できていない。昨シーズンもメジャーリーグとマイナーリーグを行き来した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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