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どうなる? 天皇杯の行方。「2部リーグ」でもACL本選出場を決めた韓国Kリーグの場合

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
FAカップを制した全南ドラゴンズ(写真提供=韓国サッカー協会)

サッカー天皇杯・準決勝が終わり、決勝の対戦カードが決まった。12月19日に国立競技場で決勝を戦うのは浦和レッズと大分トリニータ。

天皇杯優勝チームには来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権が与えられるが、来季J2降格が決まっている大分が勝利すれば、来季は2006年の東京ヴェルディ以来にJ2クラブがACLに挑むことになる。

それだけでもニュースになりそうだが、実は韓国ではすでに来季ACLにKリーグ2(2部リーグ)のクラブを送り出すことが決まっている。

その名は全南(チョンナム)ドラゴンズ。

全南は今季FAカップで“ジャイアントキリング”を連発。ベスト32で水原(スウォン)FC、準々決勝で浦項(ポハン)スティーラーズ、準決勝で蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)と、Kリーグ1のクラブを次々と撃破。

浦項や蔚山は今季ACLでJリーグ勢相手にも勝利したクラブだが、全南はそのKリーグ1の強豪たちを次々となぎ倒した。

今年終盤、Kリーグ2では日本人MF石田雅俊の「自分はサッカー人生の敗者」発言が大きな話題を呼んだが、全南のFAカップ決勝進出はそれと同等の話題となった。

(参考記事:【動画】韓国全土が“マサ”に衝撃!日本人Kリーガー、石田雅俊が決めた圧巻ハットトリックがコレだ)

決勝の相手は今季ACLでラウンド16まで駒を進め、Kリーグ1でも3位でシーズンを終えた大邱(テグ)FC。Kリーグ現役最高の外国人選手とされるブラジル人MFセシーシャや、日本人MF西翼などを擁するクラブだ。

案の定、FAカップ決勝の第1戦は大邱が1-0で勝利。だが、12月12日の第2戦はアウェーの全南が4-3で勝利した。2戦合計はスコアを4-4だが、全南がアウェーゴールで上回りFAカップを制し、来季のACL出場権を手にした。

韓国FAカップの歴史で2部クラブが優勝したのは今回が初めてだ。

FAカップではこれまで、2005年にセミプロの蔚山現代・尾浦(ミポ)造船FC(現在は解散)、2017年にはKリーク2の釜山(プサン)アイパーク、2019年にセミプロの大田(テジョン)コレイル(現・大田韓国鉄道)がFAカップ決勝に進出したが、いずれも準優勝に終わっていた。

さらには、Kリーグで2013年に昇降格制度が設けられて以降、2部クラブがACL出場権を獲得したのも今回の全南が初めてだ。

それだけにFAカップ史上最大の番狂わせとも言えなくもないが、1994年12月に創設された全南はもともとPOSCO(旧浦項製鉄)を親会社とする企業クラブ。POSCOは浦項スティーラーズの親企業も務めていて、両チームの対戦は「製鉄家ダービー」と呼ばれている。

ただ、5度のリーグ優勝、3度のアジア制覇(ACLと前身のアジア・クラブ選手権を含む)を誇る浦項とは異なり、全南は1995年のリーグ参入から1部中位~下位を行き来するクラブだった。

2018年にKリーグ1最下位で2部降格以降は、10チームで戦う2部でも中位。今季は4位でリーグ戦を終えていた。

もっとも、全南は伝統的にFAカップに強いクラブでもある。これまで1997年、2006年、2007年にFAカップを制覇しており、今大会を含めた優勝回数4回は浦項や常勝軍団・全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースと並んで2位タイにある(1位は水原三星ブルーウィングスの5回)。

そのFAカップ王者として出場した2度のACLでは、2007年に川崎フロンターレ、2008年にガンバ大阪とグループステージで対戦。ただ、直接対決では川崎に2敗(ホームで1-3、アウェーで0-3)、G大阪に1分1敗(ホームで3-4、アウェーで1-1)と一度も勝てず、いずれもグループステージで敗退しているだけに、来季ACLでも苦戦が強いられそうだが、全南を率いるチョン・ギョンジュン監督は「来季ACL出場は選手たちの大きなモチベーションになる」と、今から期待タップリだ。

ちなみに、現在の全南には元V・ファーレン長崎のFWイ・ジョンホ、元愛媛FC、レノファ山口、カマタマーレ讃岐のDFパク・チャニョン、元湘南ベルマーレ、福島ユナイテッド、鹿児島ユナイテッド、栃木SCのブラジル人FWアレックスといった、元Jリーガーも在籍している。

いずれにしても、来季ACLに挑む韓国勢は全北現代(Kリーグ王者)、蔚山現代(Kリーグ2位)、大邱FC(Kリーグ3位)、そして全南(FAカップ王者)が出場することが決定。全北現代と全南はグループステージから、蔚山現代と大邱FCはプレーオフからの参戦となる。

日本からもJ2クラブが来季ACLに出場することになれば、それはそれで日韓両国で話題になりそうだが…。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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